米国では2026年7月下旬の燃料コストが前年比で約31%上がりました。
年末商戦向けの仕入れが動き出す時期ですが、今シーズンは商品そのものの値段より、商品が自社の倉庫に届くまでのコストが読みにくくなっています。米国の小売専門メディアModern Retailが2026年8月3日に報じたところによると、輸送費の急上昇が関税以上に輸入計画を揺らし始めているといいます。日本でも同じ流れが進んでおり、2026年8月の飲食料品値上げ2,311品目のうち65.8%が物流費を要因に挙げています。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援を2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者の調達判断に翻訳して解説します。

燃料31%高・バン運賃29%高で、年末商戦の輸入計画が揺らいでいる
今シーズンの輸入は、関税と輸送費という二重の読みにくさに直面しています。輸送コストを週次で追うDAT Freight & Analyticsの集計によると、2026年7月下旬の燃料コストは前年同期比で約31%、バンと呼ばれる箱型トラックの運賃は約29%、平台トレーラーであるフラットベッドは34.7%上がりました。
上昇の背景には、中東での戦闘が続いていることによる燃料費の高止まりに加えて、米国内のトラック輸送能力の不足があります。サプライチェーン企業Infiosのチーフサプライチェーンストラテジストであるスティーブ・ブラフは、輸送能力そのものが足りていないと指摘します。背景にはトラック業界のドライバー不足があり、そこへ米政権が実施したドライバー向けの英語要件の厳格化が重なっています。
夏は本来、年末商戦の在庫を整える輸入のピークです。今年はそこに、7月末に発効した10〜12.5%の新たな関税を避けるための前倒し出荷が重なりました。Modern Retailは7月時点で港湾の取扱量がこれまでで最も多い水準に向かうと報じており、荷動きが集中したところに燃料費の上昇が乗った形です。結果として、工場から棚に並ぶまでの総費用であるランデッドコストの見通しが立てにくくなっています。
ブラフは、調達の基準が変わりつつあると語ります。「数年前はいちばん安い輸送が勝っていましたが、いまは輸送だけの話ではなく、貨物が税関で止まらないようにして通し切るところまでを含めた話になっています」(Modern Retail、趣旨訳)。安さではなく確実性で選ぶ企業が増え、着荷の速さやトレーサビリティを含めて比較する動きが出ているといいます。
日本のEC事業者にとっての論点は、値上げ要因の65.8%が物流費であること
日本でも同じ構造が数字に表れています。帝国データバンクが2026年7月31日に公表した「食品主要195社」価格改定動向調査によると、2026年8月の飲食料品値上げは2,311品目で、前年同月の1,262品目から8割増えました。値上げ1回あたりの平均値上げ率は月平均15%です。
注目すべきは値上げ要因の内訳です。原材料高が90.9%と最も多いものの、物流費が65.8%、包装・資材が64.0%を占め、中東発の国際情勢の混乱を要因に挙げたものが27.8%ありました。同社は、中東情勢の悪化による原油・ナフサ高がトレーやフィルムの資材価格、原材料高、物流コストへ波及したと分析しています。原油が上がると、海上運賃と航空便の燃料サーチャージ、そして樹脂由来の梱包資材が同時に上がるため、輸送方法を切り替えるだけでは逃げ切れないという点は、STOCKCREWも越境EC事業者向けの解説で指摘しています。
海上輸送の側でも動きは出ています。日本郵船・商船三井・川崎汽船のコンテナ船事業統合会社であるONEは、中東情勢の混乱を受けて緊急燃料サーチャージを導入し、2026年3月24日から1TEUあたり80〜160ドルを適用しました(物流業界入門)。国内の燃料も高い水準にあり、資源エネルギー庁の委託調査による2026年7月21日時点の軽油の全国平均は159.4円でした。なお、日本国内のトラック運賃や海上運賃が米国と同じ上昇率になっているかは、公開情報からは確認できません(要確認)。

年末商戦に向けて、EC調達を変える3つの判断軸
第一に、いくらで買うかより、いつ着くかから決めることです。販売開始日から逆算した最終発注日を、主力SKUごとに一枚の表に置いてください。楽天スーパーSALEやブラックフライデーの開催週から、通関・国内輸送・検品・商品ページ準備の所要日数を差し引けば、発注のデッドラインが出ます。Modern Retailは、関税の変更や燃料価格の変動で在庫が輸送途中に足止めされるのを避けるため、費用は高くても速い航空便を検討するブランドがあると伝えています。切り替えの追加費用をあらかじめ原価に織り込んでおけば、判断が遅れずに済みます。
第二に、ランデッドコストを費目に分解して、上がっている行だけを潰すことです。帝国データバンクの要因内訳、つまり原材料・物流費・包装資材・為替は、そのまま自社の原価表の行に対応します。関税と輸入消費税は税関の実行関税率表で品目ごとに確認できますし、燃料サーチャージは原油価格に数か月遅れて反映されるため、いまの見積もりが底ではない前提で粗利を再計算しておくのが安全です。総額だけを見ていると、どの費目を交渉すべきかが見えません。
第三に、価格と送料の改定を商戦が始まる前に済ませることです。帝国データバンクの集計では、9月に4,531品目、10月に2,720品目の値上げが控えており、原価が上がる時期と販売の山が重なります。送料込み価格や送料無料ラインの見直しは、在庫計画と広告設定に波及するため、商戦直前では間に合いません。なお楽天市場で告知する場合、楽天R-Mailや商品ページに自社サイトやLINE公式などの楽天外URLを置くことは店舗運営規約に反します。改定の告知は楽天市場内のページで完結させ、自社ECやShopifyではメールとサイト内バナーを併用するというように、媒体ごとに設計を分けてください。
米国では関税の還付も動き始めており、Amazonは直近の決算説明会で約6億ドルの還付を受けたことを明らかにしました。制度が動く局面では、支払った税額の記録がそのまま資産になります。
まとめ
年末商戦の仕入れで問われているのは、いちばん安い調達先を探す力ではなく、着荷日を約束できる調達を組む力です。燃料と資材が同時に上がる局面では、輸送手段の切り替えだけではコストを吸収しきれません。発注デッドラインの明文化、ランデッドコストの費目分解、そして価格と送料の先行改定という3点を、8月のうちに社内で決めておくことをおすすめします。
参考文献
- Modern Retail「Fuel, freight and tariff costs are complicating holiday importing」(2026年8月3日)
- 帝国データバンク「『食品主要195社』価格改定動向調査 ― 2026年8月」(2026年7月31日)
- DAT Freight & Analytics「Trendlines」
- 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」
- 税関「実行関税率表」
- 物流業界入門「ONEが緊急燃料サーチャージ導入」(2026年3月13日)
関連する内容として、AIによるサプライチェーン予測の現在地、越境EC物流の選び方、Shopifyの越境・関税まわりの機能更新、商戦期に起きるサプライチェーンの負荷もあわせてご覧ください。
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。