Amazon中心から実店舗2600店へ|モール依存を抜ける3段階

Amazonで2〜3億ドル規模に育ったブランドが、Walmartの実店舗2,600店超へ進出しました。Amazon Canada、Walmartマーケットプレイスと踏んだ順番から、日本のEC事業者がモール依存を抜ける3段階を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

Amazonを主戦場に売上2〜3億ドル規模まで育った米国の日用品ブランドが、2026年7月にWalmartの実店舗2,600店超へ商品を並べました。注目すべきは結果よりも順番です。いきなり実店舗に持ち込んだのではなく、Amazon Canada、Walmartのマーケットプレイスと、2つの踏み台を挟んでいます。モール1本足の構造からどう抜けるかは日本のEC事業者にとっても共通の課題で、この経路設計はそのまま検討材料になります。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

Amazon中心のブランドが、Walmart店舗2,600店へ広がりました。

Walmartの実店舗で販売が始まったGorilla Gripの滑り止めバスマット

マーケットプレイスでの2年が、実店舗の入場券になった

Modern Retailが2026年8月5日に報じたところによると、米コネチカット州ノーウォークに本社を置くGorilla Commerceは、主力ブランドGorilla Gripの滑り止めバスマットを2026年7月にWalmartの実店舗2,600店超で発売しました。同社は2014年にこのバスマット1製品で創業した会社で、現在の売上規模はCEOのCJ Bilanginoによると2〜3億ドル規模です。バスマット自体は10年以上の主力商品で、300個超の吸盤を使う特許取得済みの設計、累計200万個超を販売してきたとBusiness Wire配信のプレスリリースは説明しています。

実店舗に並ぶまでの段取りが具体的です。同社はまずAmazon Canadaへ出しました。包装要件も物流も顧客層も違う市場で、ブランドが新しいマーケットプレイスに耐えられるかを確かめる検証の場という位置づけです。その6か月後にWalmartのマーケットプレイスへ参入し、2024年の参加以降に40超のベストセラー入りを達成、2025年にはWalmartから「Outstanding Home Seller of the Year」に選ばれました。バスマットはWalmart.comで1,000件超のレビューと4.6の評価を集めています。

店舗導入の商談は、Walmartのマーケットプレイス側チームとの定例ミーティングから始まりました。売れている商品について直取引側の担当者が同席して質問することがあり、出品者向けの年次サミットではカテゴリ担当のバイヤーと直接会う機会もあったといいます。Bilanginoは「マーケットプレイスで戦えることは分かっていたが、新しい顧客に別の形で届く機会がほしかった」と同誌に語っています。

新しいモールの期待値は「Amazon売上の10〜20%」から置く

結論から言えば、日本のEC事業者が持ち帰るべきは「実店舗に出た」という結果ではなく、その手前に置かれていた期待値の設計です。マーケットプレイス運用支援を手がけるBellaVixの共同創業者兼CEOであるWill Haireは、AmazonまたはDTCの売上に対してWalmartのマーケットプレイスで見込めるのは通常10〜20%、うまくいったブランドで約30%だと述べています。需要が互角ではない前提で数字を置く、という話です。

この水準は米国での実感値であり、日本にそのまま当てはまるとは限りません。ただ考え方は共通します。Amazon.co.jpで年商1億円の商品をYahoo!ショッピングやQoo10へ横展開したとき、初年度から同額を期待して在庫と広告を積めば資金繰りが先に壊れます。1,000万円から2,000万円の上積みを取りにいく計画に落とし、その代わりに「別モールでも売れる」という次の交渉材料を手に入れる、という順序で考えるほうが現実的です。

日本の場合、次の一手は米国のWalmartとは形が変わります。モールから実店舗への直通ルートが薄いぶん、バラエティショップやホームセンターのバイヤー、あるいは卸への提案が現実的な出口になります。そこで武器になるのは、モールでのレビュー件数と評価、カテゴリランキングでの順位、そして途切れていない販売実績です。Gorilla Commerceが2年かけてWalmart側に見せたものと、性質は変わりません。

今週から着手できる3段階

第1段階は、横展開先を1つだけ選び、商品データを整えることです。モールごとに商品名の文字数制限も画像規定も属性項目も違うため、実務のボトルネックは商品情報のマッピングに集中します。うるチカラではモール間の商品CSVを項目マッピングするスキルを公開しており、手作業の突き合わせを機械側へ寄せる手順をまとめています。

第2段階は、レビューを読む工程を仕組みにすることです。Gorilla Commerceは商品開発から広告までを内製しており、新商品が消費者に刺さっているかは投入から2週間ほどで判断できるとしています。月に数百件のレビューと問い合わせが集まる規模の店舗なら、生成AIで内容を分類し、不満の根本原因ごとにまとめる運用が現実的です。具体的な手順はクレームの根本原因をクラスタリングする記事に整理しました。同じ発想は、Amazonでの露出がAI経由の検索でどう変わるかを追いかけるうえでも土台になります。

第3段階は、実店舗と卸を見据えた作り直しです。Gorilla Gripはロゴを刷新し、ゴリラの腕と脚が家の輪郭を作る形に変えました。棚に並んだときに何のブランドかを一目で伝えるためです。日本でも、JANコード(GTIN)の整備、ケース入数と卸価格の設定、品目によって加わる表示義務など、モールだけで完結していた運用には無い項目が増えます。着手が早いほど交渉は進みます。

まとめ

Gorilla Commerceの事例が示すのは、モール依存から抜ける道が一足飛びではないということです。別のマーケットプレイスで実績を積み、レビューという形で需要の証拠を残し、それを持って次の交渉に行く。2,600店という結果よりも、Amazon Canadaから数えて2年半ほどかけた順番のほうに再現性があります。楽天市場やAmazon.co.jpに売上が集中している店舗ほど、次の1段をどこに置くかを早めに決めておく価値があります。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

お問い合わせ