ChatGPT Workで社内ツールを内製する|EC事業者のSites活用・権限設計とプロンプト6本

投稿日: カテゴリー ChatGPT

ChatGPT Workとは、OpenAIの業務代行AIエージェントのことです。

毎朝、楽天RMSから落とした受注CSVとAmazonセラーセントラルの注文レポートを、Excelのvlookupで突き合わせる。1回15分、月に換算すると5時間ほど溶けている作業です。ところが解消しようと見積もりを取ると外注で数十万円、SaaSなら月額数万円になり、決裁が通らないまま2年放置される。2026年7月9日に公開されたChatGPT Workが変えたのは、この「決裁を通すほどではないが毎日溶けている」層の業務を、社内の非エンジニアが自分の手で潰せるようになった点です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)の現場知見をもとに、EC事業者が実際に内製できる社内ツールの具体例と、作る前に決めておくべき権限設計を整理します。

Codexアプリの統合で、内製の敷居はどこまで下がったか

2026年7月9日、OpenAIはChatGPT Workの公開と同時に、Codexアプリを新しいChatGPTデスクトップアプリへ統合しました。公式発表によれば、デスクトップ版ではChat・Work・Codexの3つが無料プランを含む全プランで使えます。Web版とモバイル版はPro・Enterprise・Eduから順次展開され、PlusとBusinessは数日遅れという段階的なロールアウトでした。

内製の敷居という観点で効いているのは、この統合そのものよりも「作る人の裾野」の変化です。OpenAIは同じ発表のなかで、Codexの週間利用者が500万人を超え、そのうち100万人以上がソフトウェア開発以外の業務で使っていると述べています。もともと開発者向けだったツールが、開発者以外の業務に流れ込んでいる。EC事業者の社内で起きていることも、構造としては同じです。

もう1つの変化点がSitesです。パブリックベータとして提供されているこの機能は、プロンプトに「website」という語を含めるか @Sites と打つことで起動し、生成したWebアプリをそのままホスティングまで面倒を見ます。公開URLは {名前}.openai.chatgpt.site の形式で払い出され、データを保存したい場合はD1(リレーショナルデータベース)、画像やファイルを置きたい場合はR2(オブジェクトストレージ)を指定できます。サーバーを借りる、デプロイ用のパイプラインを組む、といった工程が丸ごと消えました。

従来のChatGPTでも、コードを出力させること自体はできました。違うのは出力したあとの扱いです。以前は生成されたHTMLをローカルに保存し、社内のどこかに置き、URLを配り、修正のたびに同じ往復を繰り返す必要がありました。Sitesはこの往復を引き受けます。作れるかどうかではなく、配れるかどうかが変わった、と理解するのが正確です。

EC事業者にとって都合がいいのは、現場で欲しい社内ツールの大半が「表を読み込んで、フィルタして、集計して、色を付ける」だけで成立することです。受注も在庫もレビューも返品理由も、突き詰めれば行と列です。この領域はSitesがもっとも得意とするところで、逆にいえば凝った基幹連携を望まない限り、外注に出す理由が薄くなっています。

現場で繰り返し見るのは、店長やCS責任者が「これくらいエンジニアに頼むほどでもない」と判断して手作業を続けるパターンです。1日15分の突合作業は年間で60時間前後、時給2,000円換算で12万円ほどの人件費になります。目安の数字ですが、この規模の業務が社内に5本も6本もあるのが中小EC事業者の実情でした。

なお、対話だけでLPやWebページを公開する流れについてはChatGPT SitesでLPを対話だけで公開する手順で扱っています。本記事はそこから一歩進めて、社外向けの公開物ではなく社内で回すツールに焦点を絞ります。

EC事業者が内製できる社内ツール6種と、手を出してはいけない3領域

内製の候補として現実的なのは、次の6種です。いずれも読み取り中心で、壊れても業務が止まらない領域に限っています。

1つ目が受注CSVの整形・突合ビュー。楽天RMSの注文情報、Amazonのレポート、自社ECの出力をアップロードし、注文番号や購入者IDで突き合わせて重複と欠損を洗い出します。2つ目が在庫アラート一覧で、SKUごとのしきい値と入荷リードタイムを持たせ、発注が間に合わない品番だけを赤く出す。3つ目がレビュー分類ダッシュボードです。星の数だけでなく、本文を「配送」「梱包」「品質」「使い方が分からない」に自動で振り分け、月次で件数の推移を見ます。

4つ目が送料・同梱ルールの社内FAQ。CS担当と倉庫の間で解釈がずれる典型で、条件分岐を1画面にまとめておくと問い合わせが減ります。5つ目が広告レポートの日次要約で、楽天RPPやAmazonスポンサープロダクトのCSVから、前日比で悪化したキャンペーンだけを抜き出す。6つ目が返品理由の集計ビューです。返品理由をフリーテキストで受けている店舗ほど効果が出ます。

どれから着手するか迷ったら、発生頻度と手戻りの大きさの2軸で並べてください。毎日発生して、間違えると謝罪が要る業務が先頭に来ます。この基準だと受注CSVの突合と在庫アラートが上位に立ち、レビュー分類や返品理由の集計は後ろへ下がる。逆にレビュー分類から入ると、作った直後は面白いのに月次でしか開かないので定着しません。1本目は「明日の朝も開くもの」から選ぶのが定石です。

一方で、手を出してはいけない領域が3つあります。これは好みの問題ではなく、Sitesの公式ドキュメントが明文で制限しているものを含みます。

1つ目が決済とカード情報です。公式ドキュメントは、Sitesを使ってPHI(保護対象保健情報)やペイメントカードデータを処理すること、金融取引を可能にすることを認めていません。「社内用の簡易レジ」「返金処理画面」といった発想は、この時点で除外されます。

2つ目が個人情報の保管です。同ドキュメントは、Sitesがローンチ時点でデータレジデンシー(データ所在地の指定)に対応していないと明記しており、これはデプロイされたサイト本体だけでなくD1・R2のデータ、生成物、ログにも及びます。氏名・住所・電話番号を載せた受注データをそのまま流し込む運用は、この一文だけで見送りが妥当と判断します。突合ツールを作るなら、注文番号とSKUと数量だけを残し、個人情報の列は事前に落としてからアップロードする設計にします。

3つ目が基幹システムへの書き込みです。読み取って表示するところまでに留め、RMSやセラーセントラルへ在庫数や価格を書き戻す処理は入れない。書き込みの事故は取り消せず、価格の桁を1つ間違えれば数時間で実損が出ます。直近の支援案件で観測したのは、読み取り専用に割り切ったチームのほうが結果的にツール本数を増やせている、という順序でした。

楽天まわりでもう1点。内製した社内ツールはあくまで社内向けであり、楽天市場の商品ページや楽天R-Mailから、こうしたツールのURLへ誘導する使い方はできません。楽天市場の店舗運営規約では、商品ページやメルマガから楽天市場外のURLへリンクすることが認められていないためです。社内ツールは社内の人間だけが開くもの、という前提を崩さないでください。

Sitesで社内ツールを立ち上げる手順とプロンプト6本

公式ドキュメントが示す流れは4段階です。まず作りたいものを記述し、生成された内容と挙動をレビューし、直したい点を伝えて改良し、最後に共有範囲を選んでリンクを配る。ここで押さえておきたいのが、Sitesの公開が「バージョンの保存」と「デプロイ」の2段階に分かれている点です。デプロイされたURLはすべて本番扱いになるため、公開前に中身を確認したい場合は「デプロイせずにバージョンを保存して」と明示的に指示します。

社内で複数人が同じツールを触るなら、共通ルールをテキストで置いておくと再現性が上がります。書き方はAGENTS.mdの書き方入門にまとめました。以下、実際に使えるプロンプトを6本並べます。変数は中括弧で置いてあるので、自社の値に置き換えて使ってください。

要件が固まらないまま作らせると、7割の出来のものが延々と直らなくなります。最初の1本は「作らせる」ためではなく「仕様を詰めさせる」ために使うのが定石。

プロンプト1:内製ツールの要件を詰める(着手前の壁打ち)

あなたはEC事業者の業務改善に詳しい業務コンサルタントです。
以下の業務を社内ツール化したいので、実装に入る前に要件を詰めてください。

業務の説明:{毎朝、楽天RMSの受注CSVとAmazonの注文レポートを突き合わせ、二重受注と欠品を目視で探している}
現在の所要時間:{1日15分/担当1名}
使っているファイル:{楽天RMS受注CSV、Amazon注文レポートCSV}
触ってはいけないもの:{基幹システムへの書き込み、個人情報の列}

出力してほしいもの:
1. このツールが解くべき課題を1文で
2. 画面に必要な要素(入力・表示・操作)を箇条書きで
3. 判定ロジック(何をもって二重受注・欠品とみなすか)を条件式の形で
4. 個人情報を扱わずに成立させるための列の絞り込み案
5. 仕様が曖昧なまま残っている点を、質問形式で最大5つ

推測で埋めず、分からない点は質問として返してください。

要件が固まったら本体を作らせます。SitesはWebアプリとして動くので、ファイルのアップロードと画面上での再計算を前提に書くと、実務で使える形に寄ります。

プロンプト2:受注CSVの突合ツールをSitesで作る

website を作ってください。社内の受注確認用ツールです。

想定利用者:{EC運営チーム3名}。全員がエンジニアではありません。
やりたいこと:
- 楽天RMSの受注CSVとAmazonの注文レポートCSVを画面からアップロードできる
- 注文番号と{SKU}をキーに突き合わせ、以下の3つに分類して一覧表示する
  (a) 両方に存在し数量が一致
  (b) 片方にしか存在しない
  (c) 両方に存在するが数量が不一致
- (b)(c) を上に、行の背景色を変えて表示する
- 分類ごとの件数を画面上部にカウンターで出す
- 結果をCSVでダウンロードできる

制約:
- 個人情報(氏名・住所・電話番号・メールアドレス)の列は読み込まず、含まれていた場合は画面に出さないこと
- アップロードしたファイルの中身をサーバーに永続保存しないこと
- 文字コードはShift_JISとUTF-8の両方を受け付けること

まずは仕様の確認事項があれば質問してから、実装してください。

在庫の欠品は、気づいた時点でたいてい手遅れ。しきい値を固定値で持つのではなく、入荷リードタイムから逆算させるのがコツです。

プロンプト3:在庫アラート一覧を作る(発注漏れの検知)

website を作ってください。在庫の発注漏れを検知する社内ツールです。

入力:SKU・現在庫数・直近30日の販売数・入荷リードタイム(日数)を含むCSVをアップロード
計算:
- 1日あたり平均販売数 = 直近30日の販売数 ÷ 30
- 在庫が尽きるまでの日数 = 現在庫数 ÷ 1日あたり平均販売数
- 「在庫が尽きるまでの日数 < 入荷リードタイム + {安全days:7}」に該当するSKUを警告対象とする

表示:
- 警告対象のSKUだけを、残日数の少ない順に一覧表示
- 各行に「あと何日で欠品するか」「発注推奨日」を表示
- 平均販売数が0のSKUは計算対象から外し、別枠で「動きなし」として表示

商品ジャンルは{食品ギフト}で、季節変動が大きい前提です。
判断が必要な箇所は、勝手に決めずに質問してください。

レビュー分類は、分類軸を先に固定しないと月ごとに集計がぶれます。軸をプロンプト側で与えてしまうのが実務的です。

プロンプト4:レビュー分類ダッシュボードを作る

website を作ってください。商品レビューを分類して傾向を見る社内ツールです。

入力:日付・星の数・レビュー本文・{SKU} を含むCSVをアップロード
分類軸(この5つに固定し、勝手に増やさないこと):
1. 配送(速度・遅延・追跡)
2. 梱包(破損・過剰包装・簡易包装)
3. 品質(味・素材・耐久性)
4. 説明不足(使い方が分からない、想像と違った)
5. 価格(高い・安い・コスパ)

表示:
- 月次で「分類 × 星の数」の件数推移を折れ線グラフで
- 星1〜2のレビューだけを抽出したリストを別タブで
- {SKU}で絞り込むフィルタ

注意:
- 1件のレビューが複数の分類に該当する場合は、複数カウントを許容する
- レビュー投稿者名は取り込まないこと
- 分類の根拠になった語句を各行に併記し、分類が正しいか人間が検証できるようにすること

CSと倉庫で解釈が割れる送料・同梱ルールは、ドキュメントではなく「条件を入れたら答えが出る画面」にすると問い合わせが止まります。

プロンプト5:送料・同梱ルールの社内FAQツールを作る

website を作ってください。CS担当と倉庫スタッフが送料と同梱可否を確認する社内ツールです。

利用シーン:受注ごとに「この組み合わせは同梱できるか」「送料はいくらか」を数秒で確認したい

入力欄:
- 配送先エリア({北海道/本州/四国/九州/沖縄・離島})
- 商品カテゴリ(複数選択:{常温/冷蔵/冷凍/大型})
- 合計金額

出力:
- 同梱可否(温度帯が異なる場合は不可、など)と、その判断理由の1文
- 適用される送料と、送料無料ラインまでの不足額
- 例外条件があれば注意書きとして表示

ルールは以下の通りです。ここに書かれていない条件を推測で補わず、「ルール未定義」と表示してください。
{自社の送料・同梱ルールをここに貼り付ける}

最後の1本は、作ったツールを開きにいく手間そのものを消す使い方です。Scheduled Tasksは一度だけの実行、定期実行、変化の監視を指定でき、公式ドキュメントによればデスクトップ版でローカルのファイルを使う場合はPCの電源を入れたままアプリを起動しておく必要があります。

プロンプト6:広告レポートの日次要約をScheduled Tasksで回す

以下の内容で定期実行タスクを作ってください。

実行タイミング:毎営業日の朝8時
やること:
1. 指定フォルダにある前日分の広告レポートCSV({楽天RPP/Amazonスポンサープロダクト})を読み込む
2. キャンペーン単位で、前日比・前週同曜日比のCPC・CTR・CVR・ROASを算出
3. 以下に該当するキャンペーンだけを抽出する
   - ROASが前週同曜日比で20%以上悪化
   - CPCが前週同曜日比で30%以上上昇
   - 消化金額が日予算の95%以上
4. 抽出結果を、悪化幅の大きい順に最大10件まで要約する

出力の形式:
- 1行目に「本日の要確認キャンペーン:N件」
- 各件について「キャンペーン名/何がどれだけ悪化したか/確認すべき箇所」を各1行
- 該当なしの場合は「異常なし」とだけ出す

数値の改善提案は書かないでください。事実の抽出だけをしてください。

対話でコードを書かせて業務を回す進め方そのものは、バイブコーディングでEC業務を自動化する方法で基礎を扱っています。

誰のアカウントで動かすか|EC現場の権限設計5点

ツールが動くかどうかより先に決めるべきなのが、ここです。競合記事が機能一覧で終わってしまうのは、この論点に踏み込むと自社の運用を書かざるを得ないからだと見ています。

1点目、実行アカウントの主体です。個人契約のChatGPTアカウントで社内ツールを作らせるのは避けてください。退職と同時にツールが消えます。法人のワークスペースを契約し、そのなかの誰かが所有者になる形にします。所有者は作った人と同じである必要はなく、業務の責任者に寄せておくほうが引き継ぎで揉めません。

2点目、権限モードの初期値です。公式の権限ドキュメントは、ワークスペース内のファイル読み書きと通常のローカルコマンド実行を許可し、インターネット利用や作業領域の外に出る操作の前に確認を求める「Ask for approval」から始めることを推奨しています。サンドボックスは workspace-write、承認ポリシーは on-request、レビュー担当は利用者本人という組み合わせです。「Full access」はコンピュータ上のあらゆるファイルを編集でき、ネットワーク付きのコマンドを承認なしで実行できるため、公式も情報漏えいやデータ消失のリスクが大きく高まると注記しています。EC事業者の社内ツール作りで、ここを最初から開ける理由はありません。

3点目、共有範囲です。Sitesで作ったサイトは、初期状態では所有者とワークスペース管理者だけがアクセスできます。そこから「選択したユーザーやグループ」「ワークスペース全員」「インターネット全体」へ段階的に広げる設計になっており、Enterpriseワークスペースでは一般公開が既定で無効、管理者が明示的に有効化しない限り開けません。社内ツールなら「ワークスペース全員」で止めるのが妥当で、インターネット全体へ広げる判断は、受注データを1行も持たないツールに限る。

4点目、外注先やBPOに触らせる範囲です。ここは公式仕様が味方をしてくれます。共有はあくまで「訪問できる」だけで「編集できる」権利は付きません。倉庫の委託先や運用代行会社に在庫アラート画面を見せたい場合、閲覧権限だけを渡せば、勝手にロジックを書き換えられる事故は起きない構造です。ただし画面に表示される中身は見えるので、外部に見せる想定のツールには仕入原価や粗利率の列を最初から入れないでください。

倉庫の委託先へ在庫アラート画面を渡す場面を具体的に置いてみます。渡すのは閲覧リンクだけにして、アクセス権は先方の担当者個人ではなく、委託契約に紐づいたグループへ割り当てる。先方の担当者が交代したとき、グループのメンバーを差し替えるだけで済むからです。契約が終了したらグループごと外せばよく、個別に配ったリンクを1本ずつ追いかける必要がなくなります。

5点目、退職時の権限剥奪です。公式ドキュメントは、APIキーなどの秘密情報をSitesの設定画面で環境変数として管理し、.openai/hosting.json には書かないこと、ローカルの .env に秘密値をコミットしないことを求めています。この作法を守っておくと、担当者が抜けたときの棚卸しが「ワークスペースのメンバーから外す」「そのメンバーが所有者になっているSitesを別の人へ移す」「環境変数のうち本人が発行したキーを再発行する」の3点で済みます。5,000社支援の中で何度も再現したパターンとして、退職時に一番揉めるのは権限そのものではなく「どのツールが誰の所有か分からない」状態でした。四半期に1度、所有者の一覧を出すだけで防げます。

内製・SaaS購入・外注をどう選び分けるか(費用と工数の目安)

費用の実額から確認します。公式の料金ページによれば、個人向けはFreeが0米ドル、Goが月8米ドル、Plusが月20米ドル、Proが月100米ドルから。法人向けのBusinessは2名以上・年払いで1ユーザーあたり月20米ドル、月払いだと25米ドルです。ChatGPT Workの使用量はCodexと同じ料金・クレジット・利用上限の体系を共有すると明記されています。中小EC事業者が3名でBusinessを使う場合、年払いで月60米ドル前後、日本円で1万円弱という水準になります。

判断軸は3つで足ります。1つ目、仕様が月1回以上変わるか。変わるなら内製が有利です。外注は変更のたびに見積もりが挟まり、SaaSは他社の都合で機能が決まります。2つ目、止まったときに誰が困るか。困るのが社内の3人までなら内製、社外の顧客が困るならSaaSか外注に寄せる。3つ目、保守を誰が引き取るか。ここに名前が挙がらないなら、そのツールは作らないほうがましです。

内製が崩れるのは、たいてい3つ目の軸を曖昧にしたときでした。「チーム全員で見ます」と決めた保守担当は、実質的に誰も見ていません。アパレル系の単一店舗で試したケースでは、ツール1本ごとに1人の名前を紐づけ、その担当者の業務時間に月30分の点検枠を確保しただけで、半年後に生き残っている本数が大きく変わりました。作る工数より、この30分を確保できるかどうかのほうが効きます。

工数の目安として、本記事のプロンプト2〜5の規模であれば、要件を詰めるところから使える状態まで半日から1日というのが現時点の感触です。ただし初回は権限設定と共有範囲の確認に時間を取られるため、1本目だけは2日見ておくのが安全側の見積もりになります。

よくある失敗と回避策

1つ目、保存とデプロイの混同です。Sitesはデプロイされたすべてのバージョンが本番として公開URLに乗る仕様なので、「とりあえず出して確認する」が通用しません。回避策は単純で、確認したい段階では「デプロイせずにバージョンを保存して」と伝え、内容を見てから改めてデプロイを依頼する。この一手間を省いた結果、原価が入ったままの画面をワークスペース全員に配ってしまう事故が起こり得ます。

2つ目、権限モードを最初から開けてしまうことです。動かないときに「Full access」へ切り替えると大抵動くので、そこで固定されてしまう。動かない原因の多くは権限ではなく指示の曖昧さなので、まず何を承認しようとして止まっているかを読み、必要な範囲だけを許可する順序に戻してください。

3つ目、属人化です。作った1人しか直せないツールは、その人が繁忙期に入った瞬間に止まります。手順そのものを再利用可能な形で残す考え方はAgent Skillsの作り方で整理しました。ツールと一緒に「このツールが何を判定しているか」を平文で残しておくだけでも、引き継ぎのコストは目に見えて下がります。具体的には、判定ロジックを1枚のテキストに落とし、ツールと同じ場所へ置いておく。「在庫が尽きるまでの日数が入荷リードタイム+7日を下回ったら警告する」と書いてあれば、作った本人が不在でも、しきい値の数字を変えるだけで運用が続きます。

2026年後半、社内ツールの内製はどこへ向かうか

Sitesには公開後のアクセス解析が組み込まれており、解析用のSDKを入れなくてもユニークビジター数とページビュー数を期間指定で確認できます。ただし公式ドキュメントによれば、Enterpriseワークスペースが所有するサイトはこの解析の対象外です。社内ツールの利用実態を測りたい場合、契約プランによって見え方が変わる点は事前に確認しておく価値があります。

競合の動きも見ておきます。Anthropicは2026年7月24日にClaude Opus 5を、Googleは同年7月21日にGemini 3.6 Flashを公開しており、業務代行エージェントの領域は3社が同時に押している状態です。OpenAI自身も2026年8月6日にGPT-5.6 Solの改善と、無料ユーザー向けのデフォルトをGPT-5.6 Lunaにする方針を発表しました。どのモデルを選ぶかより、社内で作ったものを誰が保守するかのほうが、半年後に効いてくる差になると見ています。

もう1つ、現場の実感として書いておきたいのが、内製の民主化とガバナンスの時間差です。作れる人が増える速度に、権限の棚卸しが追いつかない。半年後に「誰が作ったか分からない社内ツールが12本ある」状態になっている店舗が出てくるはずで、これは2010年代にExcelマクロで一度通った道でもあります。本記事で権限設計を先に置いたのは、この既視感があるからです。ツールを1本作るごとに、所有者・共有範囲・保守担当の3つを1行で記録する。それだけで、あとから効いてきます。

よくある質問

ChatGPT Workは無料プランでも使えますか

デスクトップアプリであれば、無料プランを含む全プランでChat・Work・Codexが利用できるとOpenAIが公式に発表しています。ただしWeb版とモバイル版は有料プランから順次展開されたため、環境によって見え方が異なります。Sitesはパブリックベータで、利用可能かどうかがプラン・地域・ワークスペース設定に左右される点も公式に注記されています。

内製したツールに顧客の個人情報を入れても大丈夫ですか

推奨できません。Sitesの公式ドキュメントは、ローンチ時点でデータレジデンシー(データ所在地の指定)に対応しておらず、これがサイト本体・保存データ・ファイル・生成物・ログのすべてに及ぶと明記しています。氏名・住所・電話番号の列はアップロード前に落とし、注文番号やSKUだけで成立する設計にしてください。

Sitesで作ったツールは社外の人に見せられますか

見せられますが、共有設定の段階を1つずつ確認してください。初期状態は所有者とワークスペース管理者のみで、選択したユーザーやグループ、ワークスペース全員、インターネット全体へと広げていく構造です。共有は閲覧を許すだけで編集権限は付かないため、倉庫の委託先などへ画面を見せる用途には向いています。

エンジニアがいない会社でも内製できますか

可能です。本記事のプロンプト2〜5は、コードを書かずに日本語の指示だけで組み立てる想定で書いています。ただし「何を判定させたいか」を条件式の形で言語化する作業は人間の仕事として残るため、業務を一番よく知っている担当者が主導するのが早道です。

ChatGPT Work・Claude・Geminiのどれで内製すべきですか

ホスティングまで一気通貫でやりたいならChatGPT WorkのSitesが現時点では扱いやすい選択肢です。Anthropicは2026年7月24日にClaude Opus 5、Googleは同年7月21日にGemini 3.6 Flashを公開しており、生成能力そのものの優劣は短期で入れ替わります。決め手は生成品質より、社内で使っているアカウント基盤とデータの置き場所をどちらに寄せるかです。

内製したツールの保守は誰がやるのですか

作る前に名前を決めておいてください。保守担当が決まらないツールは、作った人が繁忙期に入った時点で止まります。所有者・共有範囲・保守担当の3つを1行で記録し、四半期に1度は一覧を出して棚卸しする運用を、1本目を作る前から始めるのが現実的です。

参考文献


著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)


※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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