ChatGPTのカスタム指示が5,000字に|EC事業者が入れる7項目

投稿日: カテゴリー ChatGPT

カスタム指示とは、全ての会話に自動で効く常設の設定文のことです。

毎回同じ前提を打ち直している時間は、そのまま無駄です。OpenAI は2026年7月15日、ChatGPT のカスタム指示の文字数上限を1,500字から5,000字へ引き上げました。対象はPlus、Pro、Enterprise、Business、Educationの各プランです。3倍を超える拡張で、書ける内容が「一言の要望」から「業務の前提を渡す指示書」に変わりました。EC事業者にとっては、自社の商材・禁止表現・出力形式を一度書いておけば、全ての会話に効く状態を作れます。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)の現場知見にもとづき、何を書くべきかを7項目に整理します。

上限拡張で何が現実的になったのか

結論を先に書きます。1,500字では書けなかった「禁止事項の列挙」と「出力形式の指定」が、5,000字なら両方入ります。これが実務上の最大の変化です。

OpenAI の告知では、上限拡張の目的は「応答スタイルと振る舞いをカスタマイズする余地を広げること」と説明されています(ChatGPT リリースノート)。カスタム指示は単発のプロンプトと違い、常設の設定として全ての新規会話に自動で適用されます。1回書けば、以降は毎回の入力から前提説明を省けます。

1,500字がどれくらいの分量かというと、詳しめのメール1通程度です。「ECの店舗運営者です。ですます調で答えてください」といった基本方針を書くと、それだけで半分近くが埋まります。商材の説明、禁止表現、出力形式まで書こうとすると入りません。結果として、毎回の会話で前提を打ち直すことになります。

5,000字あれば、業務の指示書に近いものが入ります。扱っている商材のカテゴリ、出店しているモール、社内で使っている用語、使ってはいけない表現、望ましい出力の形。これらを一度書いておけば、担当者が誰であっても同じ前提でAIが動きます。属人性を減らす、という観点で意味が大きい変化です。

背景として、カスタム指示は2025年11月の更新で、単一の会話ではなく全ての会話に適用される形に拡張されています。今回の変更はその延長線上にあります。プロンプトの書き方そのものについては、うるチカラのOpenAI公式プロンプトガイドの読み解きも参考になります。

ここで、カスタム指示と混同されやすいものを整理しておきます。1つは毎回の会話で打つプロンプトで、これはその会話にしか効きません。もう1つはプロジェクト機能やカスタムGPTのような、特定の用途に紐づく設定です。カスタム指示は、それらの外側で全体に効く土台という位置づけになります。3層あると考えると設計しやすくなります。土台に自社共通のルール、中間に業務別の設定、その上に個別の依頼。この3層を意識せずに全部をカスタム指示へ書き込むと、案件ごとに変わるべき内容まで固定されてしまいます。

現場で繰り返し見るのは、この切り分けができていない設定です。特定の商品カテゴリの細かい訴求方針をカスタム指示に書いてしまい、別カテゴリの商品を扱うときに邪魔になる。書くべきは、どのカテゴリでも変わらない前提だけです。

EC事業者が入れるべき7項目

ここからが本題です。5,000字の枠に何を入れるか。優先順位の高い順に7項目を挙げます。合計で3,000字から4,000字程度に収め、残りを個別調整の余地として空けておくのが実務的です。

第1項目は、事業の前提です。扱っている商材のカテゴリ、価格帯、主な顧客層、出店しているモール。この4点があるだけで、回答の具体度が変わります。「食品ギフト、3,000円から8,000円、40代から60代の贈答用途、楽天市場とYahoo!ショッピングに出店」と書くのと、書かないのとでは、提案されるキャッチコピーの方向が明確に違います。

第2項目は、使ってはいけない表現の列挙です。ECで最も事故が起きやすい領域なので、ここは具体的に書きます。薬機法に触れる効能表現、景品表示法に触れる最上級表現、モールの規約で禁止されている表現。「治る」「効く」「改善する」「日本一」「業界最安」といった語を名指しで禁止します。曖昧に「法令を守って」と書いても守られません。

第3項目は、出力形式の指定です。文字数、構成、箇条書きの可否、表の可否。商品説明文を書かせるなら「全角300字以内、3段落、箇条書きなし」のように数値で指定します。毎回同じ形式で出てくれば、コピー&ペーストの手戻りが減ります。

第4項目は、モール別の文字数制限です。楽天市場の商品名は半角255文字(全角換算127文字)、Yahoo!ショッピングの商品名は75文字、Amazon の商品名は半角200文字以内が目安です(2026年5月時点の確認値、最新は各モールのマニュアルで確認してください)。これをカスタム指示に書いておけば、生成のたびに上限を超えた文案が出てくる事態を防げます。

第5項目は、社内用語と表記ルールです。自社で「商品コード」と呼んでいるものを、AIが「SKU」と書いてくると、そのまま社内資料に使えません。全角半角の統一、単位の表記、日付の書式。細かいようですが、修正作業の時間はここで消えます。

第6項目は、確認を求める条件です。事実が不確かなとき、前提が足りないとき、指示が曖昧なときにどう振る舞うか。「推測で埋めず、不明点は質問として返す」と書いておくと、それらしい嘘が混ざる頻度が下がります。EC業務では、成分表示や送料条件を推測で書かれると実害が出ます。

第7項目は、参照してほしい判断基準です。たとえば「商品名は検索キーワードを前半30字以内に置く」「レビュー返信は謝罪から始めず事実確認から始める」といった、自社で決めているルール。これを書いておくと、担当者ごとの出力のばらつきが縮みます。

7項目の順序にも意味があります。上に書いた指示のほうが守られやすい傾向があるため、事故のコストが高い順に並べています。第2項目の禁止表現を第6項目あたりに置くと、長い指示の中に埋もれます。逆に、第5項目の表記ルールは守られなくても手直しで済むため、下に置いても実害は小さい。優先順位は「守られなかったときの損失」で決めてください。

この7項目を、そのまま貼れる形にしたのが次のテンプレートです。

テンプレート1:EC事業者向けカスタム指示の基本形

【事業の前提】
商材カテゴリ:{ジャンル}
価格帯:{下限}円〜{上限}円
主な顧客層:{年代・性別・購入動機}
出店モール:{楽天市場/Amazon/Yahoo!ショッピング/自社EC}
月商規模:{金額帯}

【禁止表現】
以下の語およびその類義語は使用しない:
治る、治療、改善する、効く、効果がある、痩せる、
日本一、世界一、No.1、業界最安、最高、絶対、必ず、100%
根拠のない受賞歴・ランキング表現も使用しない。

【出力形式】
- 特に指定がない限り、ですます調の日本語で出力する
- 表は使わず、文章と最小限の箇条書きで構成する
- 絵文字とアスタリスクによる強調は使わない
- 文字数の指定があるときは全角換算で厳守する

【モール別の文字数上限(全角換算)】
楽天市場 商品名:127文字
Yahoo!ショッピング 商品名:75文字
Amazon 商品名:100文字(カテゴリにより変動、要確認)

【社内用語】
{自社独自の呼称と、対応する一般用語を列挙}

【不明点の扱い】
事実が確認できない項目は推測で埋めず、「要確認」と明記して質問を返す。
成分、原材料、送料条件、在庫、価格については特に厳格に扱う。

【判断基準】
{自社で決めているルールを3〜5行で列挙}

このテンプレートは骨組みです。実際に使うときは、自社の情報で埋めたうえで、文字数を確認してください。5,000字の枠内に収まっているかは、設定画面で入力時に表示されます。

書き方を詰めるためのプロンプト4本

カスタム指示そのものを、AIに作らせる手もあります。既存の会話履歴や社内資料から、繰り返し指示している内容を抽出させる方法です。

プロンプト1:過去の会話から常設化すべき指示を抽出

あなたはAI活用の運用設計を担当するコンサルタントです。
以下の過去のプロンプト履歴を読み、毎回繰り返し書いている指示を抽出してください。

抽出の観点:
1. 3回以上繰り返し登場している前提説明
2. 毎回同じ形で指定している出力形式
3. 毎回同じ語で禁止している表現
4. 毎回貼り付けている参照情報

出力:
- 常設化すべき指示の一覧(重要度順)
- 各指示について、カスタム指示に書く場合の文案
- 常設化すべきでない指示(案件ごとに変わるもの)とその理由
- 全体の想定文字数(全角換算)

プロンプト履歴:
{ここに貼る}
プロンプト2:禁止表現リストの作成

あなたは日本のEC事業の法務・品質管理を担当する立場です。
以下の商材について、商品説明文やメールで使用を避けるべき表現を列挙してください。

商材:{ジャンル}
販売チャネル:{モール名}

観点:
1. 医薬品医療機器等法(薬機法)に抵触しうる効能表現
2. 景品表示法に抵触しうる優良誤認・有利誤認表現
3. 各モールの出店規約で制限されている表現
4. 業界の自主基準で避けられている表現

出力:
- 禁止語の一覧(カテゴリ別)
- 各語について、代替として使える表現
- 判断が分かれる表現と、その理由
- 参照すべき一次情報の名称(条文・ガイドライン名)

注記:最終的な判断は自社の法務確認が必要である旨を明記すること。
プロンプト3:カスタム指示の文字数最適化

あなたは文章の圧縮を担当する編集者です。
以下のカスタム指示の草案を、意味を落とさずに5,000字(全角換算)以内へ収めてください。

圧縮の方針:
1. 重複している指示を統合する
2. 例示が多すぎる箇所を代表例に絞る
3. 「〜してください」を「〜する」の断定形に変える
4. 前置きと修飾を削る

出力:
- 圧縮後の全文
- 圧縮前後の文字数
- 削った内容の一覧と、削って問題ない理由
- 削るべきでないと判断した箇所

草案:
{ここに貼る}
プロンプト4:カスタム指示の効き目テスト

あなたはAI設定の検証担当です。
以下のカスタム指示が正しく機能しているか確認するためのテスト質問を作成してください。

テストの観点:
1. 禁止表現が本当に避けられるか(あえて禁止語を誘発する質問)
2. 出力形式が守られるか(形式指定のない曖昧な依頼)
3. 文字数上限が守られるか(上限ぎりぎりを要求する依頼)
4. 不明点で質問を返すか(情報が足りない依頼)

出力:
- テスト質問を各観点2問ずつ、計8問
- 各質問について、合格とみなせる回答の条件
- 不合格だった場合に修正すべきカスタム指示の該当箇所

カスタム指示:
{ここに貼る}

4本目のテスト用プロンプトは、設定した直後に必ず回してください。書いたつもりでも守られていない項目が、実際にはよく出ます。特に文字数の上限と禁止表現は、指示の書き方が曖昧だと素通りします。

テストで不合格が出たときの直し方も書いておきます。多いのは、指示が条件付きになっている場合です。「基本的に禁止語は使わない」と書くと、AIは例外を探します。「使わない」と言い切る。もう1つ多いのが、禁止語のリストが概念で書かれている場合です。「誇大な表現を避ける」ではなく、「最高」「日本一」「絶対」と実際の語を並べる。抽象度が上がるほど、判断がAI側に委ねられます。

文字数の指定も同様です。「簡潔に」では効きません。「全角300字以内」と数値で書き、さらに「超えた場合は削って再出力する」と手順まで指定すると精度が上がります。EC業務では文字数上限の超過が直接の作業ロスになるため、ここは厳密に書く価値があります。

現場で起きる3つの失敗

直近の支援案件で観測したのは、カスタム指示を長く書きすぎて、肝心の指示が埋もれるパターンです。5,000字の枠が空いていると、つい書き足したくなります。ところが指示が増えるほど、個々の指示の優先順位が曖昧になり、守られる確率が下がります。重要な項目を上に置き、全体で4,000字を超えないところで止めるのが実務的です。

2つ目は、担当者ごとに別のカスタム指示を設定してしまうパターンです。カスタム指示はアカウント単位の設定なので、複数人でそれぞれ設定すると出力がばらつきます。社内で共通の文面を決め、全員が同じものを貼る運用にしてください。楽天とAmazonの両方を回している店舗で観測されたのは、共通文面を用意しただけで、商品説明文の差し戻しが目に見えて減ったという結果でした。

この共通文面の管理には、もう1つ利点があります。新しく入った担当者が、その文面を読むだけで社内のルールを把握できることです。禁止表現、出力形式、モール別の制限。これまで先輩の手直しを通じて覚えていた暗黙の基準が、1つのテキストに集約されます。教育の初期コストが下がる、という副次的な効果があります。

3つ目は、更新を忘れるパターンです。商材が増えた、モールを追加した、規約が変わった。こうした変化をカスタム指示に反映しないと、古い前提のまま出力が続きます。四半期に1回、見直しの予定をカレンダーに入れておくのが確実です。特にモールの文字数制限や規約は変更されるため、記載した数値の再確認が要ります。

効果の測り方と費用の目安

費用は、ChatGPT Plus が2026年8月時点で月20米ドルです(改定と為替は要確認)。カスタム指示の機能自体に追加費用はかかりません。無料プランでは今回の拡張の対象に含まれていない点に注意してください。

工数の目安は、初回の作成に3時間から5時間です。内訳は、禁止表現リストの作成に1時間から2時間、事業前提と社内用語の整理に1時間、テストと調整に1時間から2時間というところです。四半期ごとの見直しは30分から1時間で回ります。

効果を測るなら、指標は4つ置きます。第1に、AIの出力をそのまま使える割合(手直しなしで採用できた比率)。第2に、1件あたりの手直し時間。第3に、禁止表現が混入した件数。第4に、担当者間の出力のばらつき(同じ依頼で出力形式が揃うか)です。

第1と第2は導入前後で比較しやすい指標です。ある食品ジャンルの中規模店舗の事例では、商品説明文の下書きについて、手直しなしで使える割合が3割から6割へ変わりました。単純な倍増ですが、母数が小さい期間の観測なので、自社での再検証をおすすめします。第3は件数がゼロであることを確認する指標で、1件でも出たら指示の書き方を見直す合図です。

APIでの大量処理と組み合わせる場合、カスタム指示はChatGPTの画面での設定であり、API呼び出しには適用されません。API側では、同じ内容をシステムメッセージとして毎回渡すことになります。この場合、繰り返し渡す前提部分がキャッシュの対象になるため、コスト面での設計が変わります。詳細は、うるチカラのGPT-5.6のプロンプトキャッシュでAPI費を削る設計にまとめました。

設定文が社内資産になるという見方

カスタム指示を整えることの本当の価値は、出力の安定より、社内ルールの言語化にあると考えています。「うちは何を禁止しているのか」「望ましい出力はどんな形か」を書き出す作業は、AI設定の作業であると同時に、業務標準を文書化する作業です。

この文書は、AIモデルが替わっても使えます。GPT-5.6系からその次の世代へ、あるいは ClaudeGemini へ乗り換えても、書いた内容の大半はそのまま持ち越せます。モデルの性能は数か月で変わりますが、自社のルールは変わりません。乗り換えコストを下げるという意味でも、書いておく価値があります。

日本市場の文脈で1つ補足します。日本のEC事業者は、薬機法・景品表示法・特定商取引法に加えて、各モールの規約という4層の制約の中で表現を作っています。この複雑さは海外の事業者にはありません。だからこそ、制約を明文化してAIに渡す作業の効果が大きい。海外の解説記事が「トーンの調整」を主題にしているのに対し、日本では「禁止事項の徹底」が主題になります。ここが実務上の違いです。

今後、他のAIサービスでも同様の常設設定の拡張が進む可能性はあります。ただし2026年8月時点で、各社の上限値がどう変わるかは公表されていません(要確認)。当面は、サービスごとに同じ内容を貼り直す運用になります。共通の原稿を1つ持ち、それぞれの上限に合わせて削る、という管理の仕方が現実的でしょう。日常業務の自動化まで踏み込む場合は、うるチカラのClaude Maxで日次業務を任せる自動化ワークフロー設計も参考にしてください。

よくある質問

カスタム指示は無料プランでも5,000字使えますか

いいえ、今回の拡張の対象はPlus、Pro、Enterprise、Business、Educationの各プランです。無料プランは対象に含まれていません。上限が変更される可能性はあるため、最新の情報は公式のリリースノートで確認してください。

カスタム指示は毎回の会話に自動で適用されますか

はい、適用されます。カスタム指示は単発のプロンプトと異なり、常設の設定として新規の会話すべてに反映されます。会話ごとに貼り直す必要はありません。

5,000字を全部埋めたほうがいいですか

いいえ、埋める必要はありません。指示が増えるほど個々の優先度が下がり、守られにくくなります。実務では3,000字から4,000字に収め、重要な項目を上部に置く構成が扱いやすいです。

API経由の処理にもカスタム指示は効きますか

いいえ、効きません。カスタム指示はChatGPTの画面上の設定であり、APIの呼び出しには適用されません。API側では同等の内容をシステムメッセージとして渡す必要があります。

禁止表現の指示は本当に守られますか

指示の書き方によります。「法令を守って」のような抽象的な書き方では守られにくく、禁止語を名指しで列挙したほうが効きます。設定後は、あえて禁止語を誘発する質問でテストして確認してください。

複数人で使う場合はどうすればいいですか

社内で共通の文面を作成し、全員が同じものを設定する運用にしてください。カスタム指示はアカウント単位の設定なので、各自が別々に書くと出力がばらつきます。共通文面は文書として管理し、更新時に全員へ配布します。

どれくらいの頻度で見直すべきですか

四半期に1回が目安です。商材の追加、モールの追加、規約の変更があったときは、そのタイミングでも更新します。特にモールの文字数制限は変わることがあるため、記載した数値の再確認を忘れないでください。


著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)


参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

お問い合わせ