ウォルマートがApple Pay解禁 12年抵抗の終わりとEC決済3論点

ウォルマートが2026年8月24日からApple PayとGoogle Payを解禁。12年の抵抗が終わった背景と、日本のEC事業者が決済設計で押さえるべき3つの論点、今週からの初動アクションを解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

ウォルマートは2026年8月24日から、店舗でApple PayとGoogle Payの受け入れを開始します。

米小売最大手のウォルマートが、長年拒み続けてきた非接触決済をついに解禁します。2026年8月24日に一部のウォルマート店舗とサムズクラブで開始し、年末までに全米の店舗へ、2027年半ばまでに給油所へ広げる計画です。Apple Payの登場は2014年ですから、実に12年越しの方針転換ということになります。自社決済で顧客を囲い込むのか、顧客が使いたい手段をそのまま受け入れるのか。EC決済の設計を考えるうえで、この判断は日本のEC事業者にとっても他人事ではありません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

ウォルマートが12年ぶりに方針転換、8月24日から段階導入

結論から言えば、今回の変更は「決済手段の追加」ではなく「囲い込み戦略の一部撤回」です。Modern Retailによると、ウォルマートは対応するタッチ決済カード、スマートフォン、スマートウォッチによる支払いを受け入れると発表しました。同社の公式発表では「お客様とメンバーに、支払い方法の選択肢を持ってほしい」と説明しています。Google側も自社ブログでGoogle Pay対応を確認し、決済担当のStavan Parikhが「GoogleとWalmartの継続的なパートナーシップの延長線上にある」とコメントしました。

背景を押さえておくと、この12年の抵抗はかなり徹底したものでした。ウォルマートは自社アプリで決済するWalmart Payと、共同で立ち上げた金融アプリOnePayのウォレットを推し、外部ウォレットを店頭から締め出してきました。さらに遡ると、他の小売各社と共同でCurrentCという独自のモバイル決済網を作ろうとしましたが、こちらは2016年に閉鎖されています。一方でApple Payは米国の小売店の85%以上で使えるまで広がりました。つまり「使えない側」に残り続けるコストが、囲い込みのメリットを上回ったという判断です。

なお今回の解禁後も、Walmart Payとサムズクラブの Scan & Go は継続されます。自社決済をやめたわけではなく、外部ウォレットと並走させる形になります。

日本のEC事業者にとっての論点は「決済の選択肢」と「囲い込み」の綱引き

日本のEC事業者がここから引き出すべき論点は3つあります。

第一に、決済手段は「自社が使ってほしいもの」ではなく「顧客が使い慣れているもの」を並べるほうが強い、という原則の再確認です。ウォルマートほどの規模と交渉力を持つ企業ですら、12年かけて折れました。自社ECでApple PayやGoogle Payを未対応のまま運用している店舗は、スマートフォン経由の購入で住所とカード番号の手入力を求めている状態です。カゴ落ちの理由として入力の手間が上位に来ることは、EC運営の現場では珍しくありません。決済ボタンを1つ増やすだけの工数と、そこで落ちている売上を並べて比較する価値はあります。

第二に、自社ウォレット・自社ポイントによる囲い込みは、決済の入口ではなく購入後の体験で効かせるほうが持続するという点です。ウォルマートはWalmart PayとOnePayを捨てていません。入口を広げつつ、アプリ内のクーポン、Scan & Go、配送メニューといった「そこでしか得られない体験」で自社アプリへ引き戻す設計に移行したと読めます。日本でも楽天市場は楽天ポイント、Amazonはプライム、Yahoo!ショッピングはPayPayという形で経済圏を作っていますが、自社ECを持つ事業者が真似すべきなのは「決済手段を絞る」部分ではなく「購入後に戻ってくる理由を作る」部分です。

第三に、決済がAIエージェント経由の購買と地続きになりつつある点です。ウォルマートとGoogleは、AIショッピング関連の取り組みでも協業してきました。エージェントが商品を選んで決済まで代行する流れが現実味を帯びるほど、標準的な決済手段に乗っていない店舗は候補から外れやすくなります。うるチカラでもAI決済への備えウォルマートの一次データ活用を扱ってきましたが、決済の標準対応は、その先のエージェント対応の前提条件になります。

今週からできる初動アクション

まず、自社ECのスマートフォン決済画面を実機で通してみてください。Apple PayとGoogle Payのボタンが出るか、出ない場合はカート設定で有効化できるかを確認します。Shopifyやカラーミーショップなど主要カートは対応機能を備えていますが、有効化していない店舗は少なくありません。

次に、決済手段別のコンバージョン率を出します。スマートフォンとPCで分け、決済手段ごとの完了率と平均注文額を並べると、どの手段が売上を運んでいるかが見えます。数字が取れていないなら、まず計測を入れるところからです。

そして、自社ポイントや会員特典の設計を「決済の縛り」から「購入後の理由」に寄せ直せないかを検討します。決済手段を限定して会員を増やす発想は、ウォルマートが12年かけて修正した道です。同じ回り道をする必要はありません。

最後に、モール側の動きも定点観測しておくことをおすすめします。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングはいずれも自前の決済と経済圏を持っていますが、外部ウォレットやエージェント経由の決済をどこまで受け入れるかは今後の論点です。現時点で各モールの方針変更は確認できていないため、この点は要確認としておきます。

まとめ

ウォルマートのApple Pay・Google Pay解禁は、囲い込みよりも顧客の利便性を優先したほうが最終的に勝つという判断の表明です。日本のEC事業者がとるべきスタンスは明快で、決済の入口はできる限り広げ、囲い込みは購入後の体験で作ることです。まずは自社ECのスマートフォン決済画面を実機で確認するところから始めてください。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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