Waymo が自社設計のAIチップをロボタクシーに搭載しました。
Alphabet 傘下の Waymo は2026年8月20日、ロボタクシー向けに自社開発した専用チップを最新世代の車両で量産に入れたと明らかにしました。用途を絞って設計するASIC(特定用途向け集積回路)で、単体で毎秒1,000兆回超の演算、いわゆる1,000 TOPS をセンサー処理と機械学習の推論に振り向ける構成です。注目したいのは、これが Nvidia や AMD を置き換えるための内製ではなく、外部調達と併用する前提で設計されている点でした。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

1,000 TOPSのASICで何が変わったのか
今回のチップの役割は、走行判断そのものではなく、その手前の「大量のセンサー入力をさばく」工程です。CBT News によると、カメラ・レーダー・LiDAR から流れ込むデータをこのASICが前処理し、機械学習モデルにかけたうえで走行ソフトへ渡す構成になっています。最新システムは高解像度カメラ13台ぶんの映像をリアルタイムで同時処理できるとされ、Waymo はこれをチップ・センサー・アルゴリズムを個別調達せず一体で設計した成果だと説明しています。
数字で見ると、Waymo の演算能力はこの8年で20倍に拡大しました。設計の下敷きになったのは2億マイルを超える完全自動走行の実績データです。設計上の優先順位は3つあり、センサー入力から走行判断までをミリ秒で返す応答性、振動や衝撃・高温低温に耐える堅牢性、そして2系統の演算エンジンを並列で走らせて片方が落ちても即座に引き継ぐ冗長性が挙げられています。車両の液冷システムに直結させて熱を逃がす設計も、この堅牢性の一部です。
製造は TSMC の5ナノメートルプロセスが担っています。TSMC にとって5nmはすでに最先端ではありませんが、量産の安定性と歩留まりの面で現在も多くの大手が採用している世代です。最先端ノードを取り合うのではなく、成熟した工程で確実に量産する判断だったと読めます。
なぜ重要か:推論コストを自前で握るという流れ
このニュースの本質は自動運転そのものではなく、AIを事業で使う企業が推論用のハードウェアを内製し始めたという構図にあります。The Star が伝えた Bloomberg の記事は、今回の動きが Alphabet 全体で進む独自チップ開発と、膨れ上がるAIインフラ費用を抑え込む取り組みに重なると指摘しています。汎用GPUは幅広い処理をこなせる代わりに単価が高く、供給も逼迫しがちです。処理の中身が固定されている工程だけを切り出して専用チップに載せれば、単位あたりのコストと消費電力を落とせます。
同時に押さえておきたいのは、Waymo が外部調達をやめていないことです。同社は AMD、Micron、Nvidia、Samsung、Sandisk、Socionext、TSMC との協業を継続し、自社シリコンに外部のCPU・GPU・アクセラレータを組み合わせて計算基盤を構成していると説明しています。内製か外注かの二択ではなく、頻度が高く仕様が固まった処理だけを内製に寄せ、変化の早い部分は外部の最新世代に任せるという切り分けです。
この構図は、Nvidiaによるpoolsideのモデル工場買収 や MetaがMicrosoft Azure経由でAIモデルに年数億ドルを投じている話 とも地続きです。AIの競争軸が「良いモデルを作れるか」から「推論を安く速く回し続けられるか」へ寄ってきている、という点で共通しています。
今後の動き
Waymo は来週、スタンフォード大学メモリアル・オーディトリアムで開かれる Hot Chips カンファレンスで、計算基盤の詳細をさらに公開する予定です。Hot Chips はチップメーカーが新型プロセッサの技術仕様を、実際の出荷より数か月早く明かす場として知られており、ここで消費電力あたりの性能や2系統冗長の具体的な実装が出てくれば、他社が同じ設計思想を追える材料になります。
車両側の展開も見どころです。Waymo のフリートはこれまで Jaguar 車に自動運転技術を後付けする形が中心でしたが、中国の Geely 傘下 Zeekr と組んで投入したロボタクシーに新チップの搭載が進んでいます。後付け改造から専用設計車両への移行が進めば、車両単価と車内空間の両方に効いてくる見込みです。米国では Waymo がサンフランシスコ、フェニックス、アトランタなどで Tesla や Amazon 傘下 Zoox を上回る乗車回数を提供しており、この物量差がそのまま学習データの差になる構造も続きます。
日本のEC事業者にとって直接の影響は薄いニュースですが、示唆が一つあります。生成AIを商品説明や問い合わせ対応に組み込むとき、当初は使い勝手の良い汎用モデルで始めるのが合理的でも、処理量が増えて仕様が固まった工程は、より安いモデルや軽量な仕組みへ寄せたほうがコストが下がる、という発想は同じです。Waymo がやっているのは、規模がまったく違うだけで構造としては同じ判断でした。
まとめ
Waymo は5nmプロセス製の自社ASICを最新世代ロボタクシーに載せ、1,000 TOPS超をセンサー処理と推論に割り当てました。8年で20倍という演算拡大を支えつつ、Nvidia や AMD との協業は維持しています。固まった処理は内製、変化する部分は外部調達という切り分けが、AIインフラ運用の一つの型として見えてきています。
参考文献
- CBT News – Waymo details custom chip built to speed up robotaxi reaction time
- The Star(Bloomberg配信) – Alphabet’s Waymo has built a custom chip for its robotaxis
- Waymo 公式サイト
- Alphabet 公式サイト
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引用元: CBT News
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。