Instagram は2026年8月31日、AI生成の人物を出しながら表示しないアカウントの露出を制限すると発表しました。
これまで任意のバッジでしかなかった「AI creator」ラベルが「AI-generated profile(AI生成プロフィール)」に改称され、同時に、表示しないアカウントはリールと発見タブでフォロワー以外への推奨対象から外れます。ラベルを付けたアカウントは、AI生成の人物を主役にしていること自体を理由に不利益を受けません。表示すれば守られ、隠せば露出が落ちるという、開示と到達の交換条件が明確に価格化された格好です。バーチャルモデルやAIキャラクターをSNS集客に使うEC事業者にとって、運用の前提が変わる発表と言えます。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
Instagram のAI生成プロフィール表示、変更点は3つ
今回の変更点は、ラベルの改称、未表示への露出制限、そして対象範囲の線引きの3つに整理できます。TechCrunch によると、Instagram は米国時間8月31日に クリエイター向け公式ブログ で発表し、「プロフィールに登場する人物がAIで生成されたものだと分かるようにする」ことが目的だと説明しています。
ラベルはクリエイター自身がプロフィール編集画面でオンにする自己申告制です。オンにすると、プロフィールと投稿の脇にラベルが表示されます。表示せずに運用しているとInstagram側が検知して通知を送り、アカウントステータス画面で推奨対象から外れているかどうかを確認できる仕組みになっています。そこからの復帰手段は、ラベルを付けるか、異議申し立てをするかの2通りです。
重要なのは対象範囲の線引きです。AIで写真をレタッチする、キャプションを整える、グラフィックを作るといった制作上の使い方は、このラベルの対象外とされています。あくまで「プロフィールで前面に出ている人物そのものがAI生成か」が判定軸であり、商品画像の生成AI補正まで一律に開示が求められるわけではありません。ここを取り違えると、必要のない開示で自ら露出を落とす判断につながります。

なぜ今なのか、背景にあるAIインフルエンサーへの不信
背景にあるのは、AI生成の人物が実在の人間として受け取られることへの利用者側の不信の蓄積です。Instagram 自身が「人間に見えるプロフィールが後からAI生成だと分かるのを人々は好まない、という声を聞いてきた」と述べています。
実例も出ています。Wired は今年、マッチングアプリ「Goose」をAI生成とみられる男性インフルエンサー群がInstagram上で宣伝していた件を調査し、20を超えるアカウントがAIインフルエンサーとみられると報じました。健康分野はさらに深刻で、The New York Times は7月、サプリメントの宣伝や健康上の主張を行うAI生成の医師・施術者風アカウントを数百件確認したと伝えています。
日本のEC事業者が押さえるべき3つの論点
第1に、自社アカウントの棚卸しです。バーチャルモデルやAIキャラクターを「中の人」として運用しているブランドアカウントは、プロフィールの人物がAI生成かどうかを基準に、ラベルの要否を早期に判断すべき段階に来ています。判断を保留したまま運用を続けると、検知された時点でリールと発見タブからの新規リーチが落ち、施策の効果検証そのものが濁ります。
第2に、日本のステルスマーケティング規制との切り分けです。日本では2023年10月1日から、景品表示法5条3号の指定告示によって、事業者の表示であることを一般消費者が判別しづらい表示が不当表示として規制されています(松田綜合法律事務所の解説)。ただしこれは「広告であることの開示」を求めるもので、今回Instagram が求める「登場人物がAI生成であることの開示」とは目的が異なります。両方を別々に満たす必要がある、と整理するのが安全です。AI生成モデルを使ったPR投稿であれば、PR表記とAI生成プロフィールラベルの双方が論点になります。
第3に、外部のインフルエンサー起用時の確認項目の追加です。起用候補のアカウントが未表示のAI生成プロフィールだった場合、施策開始後に露出制限がかかればリーチ想定は崩れます。契約前の確認事項に「登場人物がAI生成か」「ラベルを設定済みか」を1行加えるだけで、この事故は避けられます。インフルエンサー起用の失敗要因については、ブランド撤退が相次ぐ構造の記事もあわせてご覧ください。
今後の動きと初動アクション
今回の措置は米国発ですが、ラベルの実装はグローバルなプロダクト仕様であり、日本のアカウントにも順次適用されると見るのが自然です(適用時期の詳細は要確認)。TikTok や YouTube でも生成AIコンテンツの開示要求は強まっており、Instagram の「未開示は推奨しない」という運用が横並びで広がる可能性は高いと考えています。AI生成であることの表示が評価にどう影響するかは、AI表示によって評価が下がった研究のように単純ではなく、開示による短期の反応低下と、隠した場合の露出制限や炎上リスクを天秤にかける判断が求められます。
初動としては、自社および起用中インフルエンサーのアカウント一覧を作り、プロフィールの人物がAI生成かどうかで仕分けること、AI生成に該当するアカウントはラベル設定を済ませること、そしてラベル設定前後のリーチとエンゲージメントを2週間単位で比較して自社の実データを取ることの3つを推奨します。他社の一般論ではなく、自社アカウントで開示コストを実測しておくことが、来年以降の判断材料になります。
まとめ
Instagram は未表示のAI生成人物アカウントの露出を制限し、開示を実質的な必須要件に変えました。日本のEC事業者は、自社アカウントの仕分け、ステマ規制との切り分け、インフルエンサー起用時の確認項目追加の3点を先に済ませておくのが現実的な対応です。開示は制約ではなく、露出を守るための手続きになったと捉えるのが実務的だと考えています。
参考文献
- Instagram puts new limits on undisclosed AI profiles|TechCrunch
- Bringing More Transparency to AI-Generated Profiles on Instagram|Instagram Creators Blog
- Goose, a New Gay Dating App, Appears to Be a Psyop|Wired
- AI Influencers Are Selling Health Supplements With Fake Ads|The New York Times
- ステルスマーケティングに対する新たな規制|松田綜合法律事務所
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引用元: TechCrunch
meta: Instagramが未表示のAI生成人物アカウントの露出を制限。リールと発見タブから外れる新ルールと、日本のEC事業者が押さえるべきステマ規制との切り分けなど3つの論点を解説します。
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。