米司法省がAI学習はフェアユースと表明、EC事業者が押さえる3論点

米司法省が2026年9月、AI学習はフェアユースだと連邦裁に表明しました。日本の著作権法30条の4との違い、生成物の類似性リスク、EC事業者が今週着手すべき3つの初動を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米司法省が2026年9月、AI学習はフェアユースだと連邦裁に表明しました。

生成AIの学習データをめぐる法廷闘争に、アメリカ政府がはじめて公式に立場を示しました。ニューヨーク・タイムズがOpenAIとマイクロソフトを訴えた2023年の著作権訴訟で、米司法省が「著作物でLLMを学習させる行為はフェアユースにあたる」とする意見書を連邦地裁に提出したのです。商品説明文や広告コピーを生成AIで書いているEC事業者にとって、この動きは他人事ではありません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本の法制度との違いを踏まえて解説します。

米司法省が提出した意見書の中身

結論から言えば、米司法省は「LLMの学習は極めて変容的(extraordinarily transformative)であり、フェアユースとして許される」と主張しました。gHacksによると、意見書は2026年9月1日夜にニューヨーク州南部地区連邦地裁のシドニー・スタイン判事あてに提出され、連邦政府がAI企業の著作権訴訟で正式に見解を示したのはこれが初めてです。

提出された文書は「statement of interest(利害関係の表明)」という形式で、訴訟の当事者にならないまま政府の立場を裁判所に伝えるものです。したがって法的拘束力はなく、判断するのはあくまでスタイン判事です。司法省側は、LLMは学習した文章をそのまま複製しているのではなく、一般的な推論能力と言語能力を獲得しているのだと説明したうえで、「合衆国は、著作物でLLMを学習させることが著作権法違反にあたるという主張を、当法廷が退けることに強い関心を持つ」と述べています。

ニューヨーク・タイムズの報道によれば、司法省はAI開発が国家安全保障に不可欠であり、その便益は「あらゆる競争上の害を大きく上回る」とも主張しました。司法次官のスタンリー・ウッドワード・ジュニアはこれを「歴史的な意見表明」と表現しています。対するタイムズ側の広報担当グレアム・ジェームズは、政府が一握りの「1兆ドル規模のAI企業」の側に立ったと批判し、対価も許諾もなくコンテンツを使うことを認めれば、人間が作るコンテンツの持続可能性が損なわれると反論しました。なおスタイン判事は、双方に金曜日までのサマリージャッジメント申立て提出を命じており、審理は次の段階に入ります。

日本のEC事業者に効いてくる3つの論点

日本のEC事業者にとって重要なのは、日本の著作権法がもともと米国より学習に寛容だという事実です。日本では2018年改正(2019年1月施行)で導入された著作権法30条の4により、著作物を情報解析、つまり機械学習の用途で利用する行為は原則として権利者の許諾なく行えます。米国のフェアユースが裁判ごとに4要素で判断されるのに対し、日本は条文で明示されている点が構造的に違います。

ただし無条件ではありません。文化庁が2024年3月15日に公表した「AIと著作権に関する考え方について」は、表現の享受を目的とする意図が併存する場合には30条の4が適用されないこと、情報解析用に有償提供されているデータベースを無断で複製する行為は権利者の利益を不当に害しうることを整理しています。ここが第一の論点です。学習は原則自由でも、「特定の作家の絵柄をそのまま再現させる」といった享受目的が混ざれば話は変わります。

第二の論点は、学習の適法性と生成物の適法性がまったく別問題だということです。米司法省の意見書も、学習が変容的であると述べているだけで、出力が既存の著作物を再現してしまうケースまで免責するものではありません。日本でも侵害の判断は生成物の類似性と依拠性で行われます。商品ページのメインビジュアルをAIで作ったところ、既存のキャラクターや写真に酷似していた場合、学習が合法かどうかとは無関係に侵害を問われます。

第三の論点は、社内の運用証跡です。Data Studiosは今回の意見書について、争点が「学習してよいか」から「データの出所を証明できるか、出力を制御できるか」へ移っていくと整理しています。EC事業者に置き換えれば、どの生成AIでどのプロンプトから作った画像・文章なのかを商品単位で残せているか、という運用の話です。

AI学習と生成物の法的論点を整理した図解

今後の展望と、いま取るべき初動

今回の意見書で訴訟が終わるわけではありません。2025年には類似の争点で連邦裁判官の判断が割れており、控訴審レベルでの決着もまだ出ていません。訴訟の波も収まっていません。楽曲生成AIのSunoは今週ミュージシャンから提訴され、2026年5月にはAnthropicが著者・出版社に15億ドルを支払う和解に合意しています。うるチカラでもAnthropicとSony Music・Warnerの提訴ドイツ裁判所によるSuno判決を取り上げてきましたが、司法判断は国と事案でばらついているのが実情です。

そのうえでEC事業者が今週やっておくべきことは、大きく3つです。まず、商品説明文・LP・広告コピーのうちAI生成のものがどれかを棚卸しし、生成日とツール名を記録するルールを決めること。次に、AI生成画像を商品ページのメインカットに使う場合は、公開前に類似画像検索で既存作品との近さを確認する工程を1つ挟むこと。そして、外注ライターや制作会社との契約書に、AI利用の可否と、第三者の権利を侵害しない旨の表明保証を入れておくことです。いずれも数時間で着手できます。

法制度が固まるのを待つ必要はありません。むしろ、AI学習と著作権をめぐる論点は当面グレーのまま動き続けるので、グレーでも回る運用を先に作った事業者が有利になります。

まとめ

米司法省がAI学習をフェアユースと表明したことは、AI開発企業にとって強力な後ろ盾になりますが、法的拘束力はなく訴訟の結論でもありません。日本のEC事業者にとって実務上重要なのは、日本には著作権法30条の4があり学習は原則自由である一方、生成物の類似性リスクは別に残るという構造です。学習の合法性に安心するのではなく、生成物の確認工程と出所の記録を今のうちに仕組み化しておくのが現実的な打ち手です。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: gHacks


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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