InstagramのDMを商品開発の一次情報として使うブランドが増えています。
Modern Retailが2026年9月8日に報じたところによると、調理器具のMade In、サプリメントのPlainspeak、アダプティブインナーのSpringroseなど複数のブランドが、InstagramのDMを顧客インサイトの収集源として使っています。調査会社に依頼すれば費用も時間もかかりますが、DMなら今日届いた声を今日読めます。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者向けに論点を整理します。
1日20〜30件のDMを経営層が自分で読む運用
結論から言うと、記事に登場したブランドに共通するのは「意思決定をする人が自分でDMを読んでいる」ことです。外注の集計レポートを待つ体制ではありません。
Made Inのマーケティング責任者、Lindsay Jacksonは朝のコーヒーより先にInstagramを開き、その日届いた20〜30件のDMに目を通します。内容は商品の寸法からソシエ鍋の手入れ方法まで様々です。Jacksonは、消費者が「24時間365日、フィルターのない反応をくれる」場所だと述べています。
今夏ローンチしたPlainspeakは、米国内でDMを送った人に無料サンプルを送る施策を実施し、これまでに数千包のスティックを配布しました。共同創業者のSara Brooksによれば、価値があったのは配布数ではなく往復のやりとりのほうで、成分・使い方・その処方にした理由・サブスクの条件・1回あたりの量まで質問が届いたといいます。サブスク限定だった主力商品に単品購入の要望が集まったこと、18回分という容量への疑問が繰り返し届いたことが、次の商品設計の材料になっています。

2020年創業のSpringroseは週10〜20件のDMを創業者が全件読み、試作品を顧客に送ってDMで感想を集めています。その結果、スポーツブラの生地、マグネットの向き、グリップ部品の位置を変更しました。メールよりDMのほうが長文が返ってくる、という現場感覚も語られています。
同様の例は複数あります。シャワーヘッドのSproosはDMとコメントで集まった色の要望からオレンジとライラックを商品化し、2016年開始のレンタルサブスクFashion Passは「小さめ」「XLが足りない」といった反復するDMをサイズ展開と再入荷の判断に使っています。創業20年のPink Chickenは1日十数件のDMを創業者が読み、柄の追加要望を2026年春の新作に反映しました。2013年創業のEvelyn & Bobbieは2022年から届き続けたサイズ要望が、今年発売した新型ブラの発想源になっています。
日本のEC事業者が押さえるべき3つの論点
第一に、動く閾値を先に決めることです。Sproosは「20人がピンクと言えばピンクにする」という単純な基準を持ち、Evelyn & BobbieはDMとアンケートで同じ要望が同時に立ち上がったときを本物の需要と判断していました。1件の熱心な声で在庫を積むのか、5件か、20件か。この線引きを決めずにDMを読み始めると、声の大きい少数に振り回されます。
第二に、モールの規約です。楽天市場では商品ページやR-Mailから店舗のInstagramなど楽天外へ誘導することはできません。DMでの声集めは自社ECとSNS側で完結させ、楽天やAmazonではレビュー、商品Q&A、店舗への問い合わせを同じ分類軸で扱うのが現実的です。窓口が分かれても、集計する軸を揃えれば同じ商品開発データになります。なお各モールのAI関連の表示ルールは改定が続いているため、実装前の最新確認が必要です(要確認)。
第三に、AIの使いどころです。1日30件のDMは1年で1万件を超えます。人が読む価値があるのは個々の文章ですが、傾向を出す作業は生成AIのほうが速く、要望・不満・使い方の質問・在庫の問い合わせといった分類と、月次の要約は自動化できます。その際、氏名や住所を外部のAIサービスへそのまま送らない運用と、顧客の文章に紛れた指示文をAIが実行してしまうプロンプトインジェクションへの対策が前提になります。Meta公式の受信箱の自動化機能は定型返信やよくある質問への応答が中心で、要約や分類の仕組みは自社で組む必要があります。
明日から着手できる初動
まず、DM・コメント・レビュー・問い合わせメールの直近1か月分を1つのテキストにまとめ、生成AIに「要望」「不満」「使い方の質問」「在庫・納期」の4分類で仕分けさせてください。ここで出た上位項目が、次の商品改良とFAQの作成の材料になります。
次に、週1回30分の枠を経営者か商品担当が確保し、AIの要約ではなく生のDMを20件だけ読む時間を作ります。要約は傾向を教えてくれますが、言い回しや温度は原文にしかありません。
三つ目に、返信そのものは人が書くと決めておきます。下書きの生成はAIに任せてよいのですが、InstagramのDM自動化を無条件に全面適用すると、記事の各社が価値だと語っていた往復の会話そのものが失われます。
最後に、集めた声が実際に商品へ反映されたら、その事実をSNSで公開してください。Made Inは「フライパンに卵がくっつく」という声に対し、社内チームが解決法の動画を制作して公開しています。声が反映される店だと分かると、次の声が集まります。
まとめ
DMは費用ゼロで手に入る一次情報ですが、読むだけでは在庫も商品も変わりません。動く件数の閾値を決め、モールの規約の中で窓口を設計し、分類と要約だけをAIに任せる。この3点を先に決めた店舗が、顧客の声を商品開発の速度に変えられます。なお、日本のEC事業者がDM経由の声をどの程度商品開発に使っているかの公的な統計は確認できていません(要確認)。
参考文献
- Modern Retail: Brands Briefing: Instagram DMs are proving to be a gold mine for product development
- Modern Retail: How new wellness brand Plainspeak is using mail-in samples to acquire customers
- Modern Retail: How brands are investing in adaptive fashion
- Modern Retail: Why DTC furniture brand Sabai uses Instagram stories for product development
- Meta ビジネスヘルプセンター: 受信箱の自動化を設定する
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。