AI支出トップ1%が10%減|トークン単価41%下落とEC3論点

AI支出上位1%企業の1人あたり支出が8月に約10%減。トークン単価も3月比41%下落。RampのAI Index最新データから、日本のEC事業者が今すぐ見直すべきモデル選定と外注単価の3論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

AI支出の上位1%企業で、従業員1人あたりの支出が8月に約10%減りました。

法人カードと支出管理を手がけるRampが約7万社の決済データから作成するAI Indexの最新版で、AI支出が最も多い上位1%の企業の従業員1人あたりAI支出が、8月に約10%下がって7,205ドルになったことがわかりました。TechCrunchが2026年9月9日に報じています。同時に、企業が支払うトークンの平均単価も3月のピークから4割ほど下がっています。AI支出を積み増すこと自体が競争優位だった局面が、静かに終わりつつあるのかもしれません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

RampのデータをもとにTechCrunchが掲載した、企業のAI支出に関するグラフ

何が起きたか:AI支出の伸びが鈍り、トークン単価が41%下がった

結論から言うと、AIを使う企業は増え続けている一方で、1社あたりが払う金額は減り始めています。

Rampの集計では、8月にAI関連の製品へ支払ったのは同社顧客の56%で、前月からの伸びは0.4%にとどまりました。裾野は広がっているものの、勢いは明らかに鈍っています。そして支出額の面ではもっとはっきりした変化が出ました。AI支出の上位1%に入る企業の従業員1人あたり支出は約10%減って7,205ドルとなり、これまで市場の成長を牽引すると見られていた層が、初めて足を止めた形です。

背景にあるのがトークン単価の下落です。TechCrunchによると、企業が支払う平均的なトークン単価は9月初旬時点で100万トークンあたり0.68ドルで、2026年のピークだった3月の1.15ドルから下がりました。単純計算で約41%の下落です。OpenAIとAnthropicが競って価格を下げた結果、同じ処理量をこなしても請求額は減る構造になりました。つまり支出減の一部は「使わなくなった」のではなく「安くなった」ことによるものです。

もうひとつ効いているのが、企業がフラッグシップモデルを避ける動きです。Rampの8月版レポートでは、7月にAnthropicのFable 5がAnthropicから購入されたトークンのわずか6%、金額ベースでも11.4%にとどまったことが示されました。100万トークンあたり約10ドルという価格が、性能の高さに対して割に合わないと判断されたわけです。TechCrunchも、多くの企業が最新の最上位モデルではなく、ChatGPT 5.6-TerraやAnthropicのSonnetといった一世代前の安いモデルを選んでいると伝えています。

なお、8月は欧米企業の休暇シーズンにあたるため、季節要因を含む可能性はRampのリードエコノミストであるAra Kharazian自身も認めています。またRampの7月時点の上位1%の中央値は月あたり7,400ドルと公表されており、今回の「約10%減」が示す前月値とは幅があります。集計基準や改定の違いによるものと考えられますが、正確な内訳は要確認です。

日本のEC事業者にとっての3つの論点

日本のEC事業者がこのデータから読み取るべき論点は、大きく3つあります。

第一に、AI予算の大きさが活用度の指標にならなくなったことです。トークン単価が半年で4割下がった以上、「去年より支出が減った」ことは後退を意味しません。逆に「支出は横ばい」なら、実質的な処理量は1.7倍近くに増えているはずで、そうなっていないなら使い切れていない可能性があります。楽天市場やAmazon、Shopifyで店舗を運営していると、AI関連費用はChatGPTやClaudeの月額、AI機能付きの受注管理ツール、外注先のAI活用分と細かく散らばりがちです。見るべき指標は総額ではなく、商品説明文1本あたり、問い合わせ返信1件あたり、レビュー要約1商品あたりの単価に切り替える必要があります。単価の考え方はAIエージェントのトークン消費が14倍に増えた件の解説でも触れています。

第二に、モデル選定の常識が変わったことです。最上位モデルを使うほど成果が出るという前提は、上位1%の企業ですら手放しつつあります。商品説明文の一次案づくり、レビューの分類、メルマガ件名の候補出し、FAQの下書きといった定型タスクは、中位モデルで十分に実務水準に届きます。一方で、複雑な在庫判断のロジック整理や、複数モールの規約を突き合わせた確認作業のように、間違えたときの損失が大きい業務は上位モデルに任せる価値があります。タスクごとにモデルを振り分ける設計についてはマルチモデルルーティングの設計解説が参考になります。

第三に、外注費とSaaS料金の見直し時期に入ったことです。半年で単価が4割下がったということは、2025年末や2026年前半に決めた見積りが、今の原価水準から見ると割高になっている可能性があるということです。AIを使った商品ページ制作や広告文の代行を発注している場合、単価下落は再交渉の客観的な材料になります。逆に自社で内製している場合は、値下げ分をそのまま利益として取り込めます。実際に大手AI事業者の値下げがどの程度の規模で起きているかはClaudeのコスト削減事例でも扱いました。

ただし注意点として、Rampのデータは米国企業が中心で、顧客層もテック企業寄りだとTechCrunch自身が指摘しています。米国国勢調査局の企業動向調査では、8月23日更新時点でAIを使っていると答えた企業は22%にとどまります。日本のEC事業者の実態がこの数字のどちらに近いかを示す月次統計は、現時点で公開されていないため要確認です。

初動アクション:今週できる4つのこと

まず、直近3か月のAI関連支出を1枚に洗い出してください。生成AIのサブスク、API利用料、AI機能を含むSaaSの差額、外注先へのAI関連費用を分けて並べるだけで、無駄が見えます。

次に、その支出を「金額」ではなく「処理件数あたりの単価」に置き換えます。月2万円で商品説明文を200本作っているなら1本100円で、外注に1本800円払っているなら差額が交渉余地です。

三つめに、定型タスクを1つ選んで中位モデルに切り替え、出力を20件だけ人の目で比較してください。品質が落ちなければそのまま移行し、落ちるようなら元に戻すだけで済みます。

最後に、使っていないシートやプランを解約します。上位1%の企業が支出を絞り始めた局面で、使途不明のライセンスを持ち続ける理由はありません。モデル選定と支出配分の全体像はAI単価とモデル選定の解説記事もあわせてご覧ください。

まとめ

AI支出の上位1%企業が8月に約10%支出を減らし、トークン単価も3月比で41%下がりました。これはAI活用の後退ではなく、同じ成果をより安く出せるようになった結果です。日本のEC事業者が取るべきスタンスは、予算額を守ることではなく、処理件数あたりの単価を毎月見て、定型業務は安いモデルへ、判断業務は上位モデルへと配分を組み替えることです。Kharazianも「自社がAIを使う側なら、これは良いことです」と述べています。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: TechCrunch


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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