Instacart、ネット上乗せ価格撤廃で成長10pt差|EC価格戦略3つの論点

Instacartはネット価格の上乗せを撤廃した小売が約10ポイント速く成長していると公表。モール・自社EC・店頭の価格差が顧客定着に与える影響と、日本のEC事業者が取るべき3つの論点と初動を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米Instacartは2026年9月、ネット価格の上乗せをやめた小売が約10ポイント速く伸びていると明かしました。

米国のネットスーパー基盤を担うInstacartのCEO、クリス・ロジャースが、ラスベガスで開かれた小売カンファレンス「Groceryshop」で成長戦略を語りました。柱は「店頭より高いネット価格(マークアップ)をなくすこと」です。Modern Retailによると、ネットで上乗せをしない小売パートナーは、上乗せする小売より平均で約10ポイント速く成長し、獲得した顧客も長く定着しているといいます。

本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。ネット価格の上乗せは、モール手数料や送料を理由に日本のEC事業者も日常的に行っている判断です。今回のInstacartの数字は、その判断を見直すきっかけになる材料だと考えます。

Instacartのネットスーパー注文画面と食料品のイメージ

Instacartが価格上乗せ撤廃を最優先にした理由と数字

結論から言うと、Instacartは「ネットは店頭より高い」という印象こそが利用拡大の最大の壁だと判断し、価格の手頃さを最優先課題に据えました。ロジャースは2025年8月にCEOに就任して以来、価格のアクセスしやすさを最重要テーマにしてきたと述べています。

マークアップとは、同じ商品をネットで売るときに店頭価格より高く設定することです。配送やピッキングのコストを吸収するため、米国のネットスーパーでは長く一般的な慣行でした。ロジャースは、これが顧客獲得の最大の障害の一つだとし、小売側とは「非常に難しい会話」をしながら解決策を探してきたと語っています。そのうえで、大手デジタル事業者に売上を少しずつ奪われていくコストは、今マークアップを外すコストより大きいかもしれない、という趣旨の見方を示しました。

数字面では、新規顧客の増加ペースが2022年以来で最も速いこと、同社のストアフロント技術が380の食料品ECサイトを支えていること、米国とカナダ以外へ初めて国際展開したことが語られています。価格施策としては、有料会員「Instacart+」で10ドルからの配送料0ドル、店舗受け取りや急がない配送といった低価格の選択肢も用意しています。

同社は2026年7月に公式の価格原則も公表しました。同じ店舗・同じ時間なら全員に同じ価格を表示すること、個人情報で価格を決めないこと、需給に応じた動的な商品価格を使わないこと、決済前に手数料を明示することの4点です。北米で上乗せなしの小売を最も多く抱えるサードパーティ型マーケットプレイスだとも説明しており(2026年7月時点、同社発表)、2026年初めにはHy-VeeやRaley’sが上乗せなしに移行したと明かしています。

日本のEC事業者にとっての論点

日本のEC事業者にとっての論点は、「チャネルごとの価格差が、顧客の定着率を下げていないか」を数字で確かめることです。Instacartの約10ポイント差は、価格差を解消した側が伸びたという観察値であり、日本の自社EC・モール運営にもそのまま当てはまる問いになります。

1つ目は、モール価格と自社EC価格の差です。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングでは出店料や販売手数料、ポイント原資がかかるため、モール価格を自社ECより高めに置く事業者は少なくありません。ただし顧客は価格比較サイトや生成AIの買い物アシスタントで横並びに比べます。価格差が「ネット(モール)で買うと損」という印象につながれば、リピートの取りこぼしが起きます。自社ECで同一価格を約束し、モール側はポイント施策で実質価格を調整する、といった設計も選択肢になります。

2つ目は、実店舗を持つ事業者のネットスーパー・EC価格です。日本でも店頭と同一価格をうたうネットスーパーと、配送費を価格や手数料に上乗せするネットスーパーが混在しています(各社の最新の価格方針は要確認)。Instacartの例は、上乗せを商品価格に溶かし込むより、配送料や会員制度で分けて見せたほうが、顧客に分かりやすく継続利用につながりやすいことを示唆しています。

3つ目は、価格の透明性と信頼です。Instacartは過去に一部小売が実施したランダムな価格テストが批判を受け、2025年12月にテストを終了しました。日本でもAIで価格を最適化するダイナミックプライシングの導入が進みつつありますが、顧客ごとに価格が違う状態は炎上リスクと隣り合わせです。景品表示法の有利誤認や二重価格表示にも注意が必要で、AIに価格を任せる場合も「同じ条件なら同じ価格」という原則を先に決めておくことが大切です。

今後の展望と初動アクション

今後は、ネット価格と店頭価格の差を縮めた事業者と、上乗せを続ける事業者の間で、定着率の差がさらに開くと見ています。生成AIによる買い物代行や比較が広がるほど、価格差は瞬時に見抜かれるからです。

初動としては、まず主要商品上位50SKUについて、自社EC・各モール・実店舗の販売価格を一覧で並べ、チャネル間の価格差を把握することをおすすめします。次に、価格差がある商品のリピート率や解約率をチャネル別に比べ、差が大きい商品ほど定着率が低くないかを確認します。

そのうえで、上乗せ分を商品価格ではなく送料や会員特典で調整する案を試算します。Instacartが10ドルからの配送料無料を会員制度で提供しているように、商品価格は揃え、送料や会員制度で採算を取る考え方です。最後に、AIで価格を調整する場合の社内ルールとして、個人属性で価格を変えないこと、価格の変更履歴を残すことを明文化しておくと、将来の信頼毀損を防げます。

まとめ

Instacartは、ネット価格の上乗せをやめた小売が約10ポイント速く成長しているという数字を示し、価格の手頃さと透明性を成長の中心に据えました。日本のEC事業者も、モール・自社EC・店頭の価格差が顧客の定着を妨げていないかを数字で点検し、商品価格は揃えて送料や会員制度で採算を取る設計を検討する価値があります。

参考文献

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https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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