Best Buy CTV始動、小売がテレビ広告を売る時代|EC事業者3つの論点

米Best Buyがコネクテッドテレビ広告の新部門「Best Buy CTV」を発表。購買データ×テレビ広告枠で小売の広告事業はどう変わるのか。AmazonのPrime Video広告など日本の動きと、EC事業者が今取るべき3つの初動を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米家電量販大手Best Buyは2026年9月、コネクテッドTV広告の新部門「Best Buy CTV」を発表しました。

本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。Modern Retailによると、Best Buyは9月23日(米国時間)の年次広告ショーケースで、購買データとテレビ画面の広告枠を組み合わせたBest Buy CTVを打ち出し、あわせて10月下旬のTikTok Shop出店と、クリエイタープログラムの拡張も発表しました。リテールメディアとは、小売事業者が自社の購買データや売り場を広告媒体として販売するビジネスのことです。これまで検索結果や商品ページといった「買う直前」の枠が中心だったリテールメディアが、テレビという「認知」の枠まで広がりつつあります。日本でもAmazonがPrime Video広告を2025年に始めており、EC事業者の広告設計に関わる動きとして整理します。

Best Buy CTVで何が起きたか:購買データ×テレビ広告枠

結論から言うと、Best Buyは「家電を売った実績」そのものを広告商品に変えました。Best Buy CTVは、Best Buyの自社会員データ、どの家電を持っているかという所有データ、購買意向のシグナルを、LG・Roku・Amazonといったパートナーのコネクテッドテレビ(ネット接続されたテレビ、以下CTV)広告枠と組み合わせる商品です。

具体的な中身は3つあります。1つ目は、Best Buyのプライベートブランドのテレビ「Insignia」の新旧全機種に広告を出せるようになることです。InsigniaはOSにAmazonのFire TVを採用しており、Best Buy Adsは2027年2月からAmazon Adsのプログラマティック(自動入札型の広告取引)技術を使い始める予定です。Best Buyの広告責任者Lisa Valentinoは、過去8年でInsigniaテレビを購入した家庭は「数千万世帯」にのぼると説明しています。

2つ目はLGとの提携で、LGテレビのホーム画面の広告枠がリテールメディア経由で販売されるのは初めてとされています。3つ目は、自社のクリエイタープログラムを広告主向けに開放し、TikTok ShopやCTV向けのコンテンツ制作にクリエイターや店舗スタッフ(通称ブルーシャツ)を起用できるようにすることです。TikTok Shopには、OuraやBose、Dyson、Microsoftなどのブランドを含む約1万点の商品を並べる計画です。

Best Buyはリテールメディア事業の規模を公表していませんが、今年は2桁成長を見込むとしています。業界アナリストのAndrew Lipsmanは、広告枠は増やそうと思えばいくらでも増やせる一方で、不足しているのは質の高い広告枠だと指摘し、購買データと組み合わせたCTVはその条件を満たすと評価しました。Walmartが2024年に23億ドルでテレビメーカーVizioを買収した動きと同じ流れにあるという見方です。

日本のEC事業者にとっての論点:リテールメディアは「下流」から「上流」へ

日本のEC事業者が押さえるべき結論は、モールの広告が「検索結果の上位を買うもの」から「認知から購入までを一気通貫で測るもの」へ変わりつつあるという点です。Best Buyの事例は米国の話ですが、日本でも同じ構造の変化がすでに始まっています。

もっとも近いのはAmazonです。Amazon AdsはPrime Video広告を2025年4月に日本で提供開始し、MarkeZineなどの報道によると、2026年9月の「Amazon Japan Upfront 2026」でポーズ広告など3つの新フォーマットを2026年第4四半期以降に提供すると発表しています。Amazonで販売する事業者にとって、スポンサープロダクト広告の外側に「動画で認知を取り、Amazon上の購入で効果を測る」選択肢が現実に増えていることになります。

楽天市場でも、楽天グループの広告事業は会員データを軸にモール外の媒体へ広告を配信する方向を強めてきました(具体的なCTV枠の提供状況は要確認)。一方で、中小の店舗がいきなりテレビ広告を買う必要はありません。重要なのは、モール側が「上流の広告で認知した人が、自社モール内でどれだけ買ったか」を測れる仕組みを整えつつあり、大手ブランドの予算がそちらへ流れると、検索連動型広告の入札環境や売り場での露出の取り合いが変わるという点です。

もう1つの論点は、Best BuyがTikTok Shop出店とクリエイター起用を広告商品として束ねたことです。日本ではTikTok Shopが2025年6月に始まったばかりですが、ライブコマースやクリエイター経由の販売を「広告主向けメニュー」として組み込む発想は、今後モールや大手小売の広告商品にも波及する可能性があります。

今後の展望と初動アクション

今後の焦点は、購買データを持つ小売・モールが、テレビや動画といった認知面の広告枠をどこまで囲い込むかです。Best BuyがAmazonの広告技術を採用したように、自前で枠を持たない小売も大手プラットフォームと組んで参入してくるはずです。日本のEC事業者が今のうちに取れる初動は次の3つです。

1つ目は、広告効果の測り方を見直すことです。検索連動型広告のROAS(広告費用対効果)だけで判断していると、動画や認知広告がもたらす指名検索の増加を見落とします。Amazonであればブランド名の検索数、楽天市場であれば店舗名や商品名での流入の推移を、広告出稿の前後で追う習慣をつけておくと、上流の広告を検討するときの判断材料になります。

2つ目は、自社商品の「動画素材」を整えておくことです。Prime Video広告のような動画枠を将来使うかどうかにかかわらず、商品ページの動画、SNS用の縦型動画、ライブコマース用の構成はそのまま流用できます。生成AIを使えば、台本づくりやバリエーション作成の工数は大きく下げられます。

3つ目は、クリエイター連携の窓口を持っておくことです。Best Buyは店舗スタッフまでクリエイターとして起用しました。日本の中小店舗でも、店長やスタッフが商品を語る短尺動画は、外部インフルエンサーより低コストで始められる施策です。

まとめ

Best Buy CTVは、小売が購買データを武器にテレビ広告まで売り始めたことを示すニュースです。日本でもAmazonのPrime Video広告が2025年に始まり、2026年第4四半期に新フォーマットが加わります。EC事業者は、検索広告のROASだけに頼らない効果測定と、動画・クリエイター素材の準備を今から進めておくことが、上流化するリテールメディアに振り回されないための備えになります。関連する動きとして、リテールメディア11社の広告配分をまとめた記事や、SephoraのTikTok Shopライブ施策の記事もあわせてご覧ください。

参考文献

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引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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