OpenAIは2026年10月、EU域内のChatGPTとCodexが出力する文章に、人の目には見えない透かしを入れると発表しました。
本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
AIウォーターマークとは、AIが生成した文章や画像に、機械だけが読み取れる印を埋め込み、後から「AIが作ったもの」と判別できるようにする仕組みのことです。TechCrunchによると、OpenAIは2026年8月2日に適用が始まったEUのAI規則(AI Act)の透明性ルールに対応するため、ChatGPTとCodexの文章に透かしを入れます。数週間以内にEUのすべてのプランで自動適用となる予定で、APIでは同日から一部モデルでオプトイン(利用者が自分で有効にする)方式が始まりました。
何が起きたか:EU域内は自動、APIは選択制
OpenAIの公式発表によると、透かしはEU域内のChatGPTとCodexの出力のうち対象となる文章に入ります。方式はtextGrainと呼ばれ、モデルが単語を選ぶときの統計的な偏りに信号を埋め込み、検出器がその偏りを読み取る仕組みです。技術報告書の公開とオープンソース化も計画されていると説明されています。
注目したいのは適用範囲の違いです。EU域内のChatGPTとCodexは自動で透かしが入る一方、APIは世界共通でオプトインです。クラウドパートナー経由で使う場合の対応も、数週間以内に広げるとしています。つまり、同じモデルでも「どの入口から使うか」で透かしの有無が変わる設計です。
検出ツールは当面、承認を受けた研究者と専門組織に限って提供され、申請の受付は発表当日に始まりました。一般公開はされません。画像や音声の検証ツールは、従来どおり公開が続きます。
なぜ重要か:透かしは万能ではなく、数字に限界が出ている
この透かしは完璧な判別手段ではありません。OpenAIが示した数字では、目標の誤検出率を1%に抑えた場合、文章が200トークンで検出率は約80%、400トークンで約95%です。短い文章ほど見抜きにくいことになります。
さらに編集への耐性も課題です。単語の10%を類義語に置き換えると、検出率は92%から66%に下がります。25%を置き換えると17%まで落ちます。数学のように言い回しの選択肢が限られる分野でも検出率は大きく下がります。TechCrunchによると、OpenAIはこうした限界があるため、検出ツールを最初は限られた組織にしか渡さないと説明しています。
規制の観点では、EUが生成コンテンツの機械可読な識別を求める流れが、実際のサービス仕様に落ちてきた点が重要です。AI生成物を「人が書いたかどうか」で線引きする議論は、今後さらに増えると考えられます。なお、TechCrunchの記事にはAnthropicが2026年8月に透かしについて先に発表していたことも触れられており、他社の対応状況は今後も要確認です。
今後の動き:注目すべき3つのポイント
第一に、技術報告書とオープンソース化の時期です。方式が公開されれば、第三者が検出精度や回避のしやすさを検証でき、数字の信頼性が高まります。第二に、API経由の扱いです。オプトイン方式のままでは、規則の趣旨にどこまで沿うかという議論が続く可能性があります。第三に、検出ツールを使える組織の範囲です。研究者や専門組織から先に広がるのか、報道機関や教育機関まで届くのかで、実際の運用が変わります。
日本の読者にとっても、EU向けサービスに文章生成AIを組み込む企業や、AIで作った文章を公開するメディアにとっては無関係ではありません。透かしが入る前提で、自社のコンテンツ制作フローや表示ルールを見直す準備はしておく価値があります。日本の規制への波及は現時点で確認できておらず、要確認です。
まとめ
OpenAIはEUのAI規則に対応し、ChatGPTとCodexの文章に見えない透かしを入れ始めます。EUは自動、APIはオプトインという二段構えで、検出ツールは研究者と専門組織に限定されます。一方で、単語の10%を置き換えるだけで検出率が92%から66%に下がるなど、限界も数字で示されました。透かしは「AI生成の証明」ではなく「一定条件で見抜ける手がかり」と捉え、今後の技術報告書と各社の追随を見守るのが現実的です。
参考文献
- TechCrunch: OpenAI will start watermarking ChatGPT’s text in the EU
- OpenAI: EU text provenance
- 欧州委員会: AIに関する規制の枠組み
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。