OpenAIが解雇した安全性研究者3人は、機密情報の不適切な取り扱いという同社の説明を否定し、解雇が社内に萎縮を生んでいると公開書簡で訴えました。
本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。公開書簡とは、特定の相手に宛てつつ、広く公開する形で主張を伝える文書のことです。今回は、解雇された3人が宛先の社内委員会3つを名指しして、解雇の理由と安全文化への影響を訴えました。一方のOpenAIは「パターンとしての不正行為があった」と説明しており、双方の主張は真っ向から食い違っています。本記事では、報じられている範囲で両者の言い分を整理します。
何が起きたのか:3人の反論とOpenAIの説明が食い違っています
TechCrunchによると、解雇されたのはJasmine Wang、Tomek Korbak、Mikita Balesniの3人で、解雇は前週に行われました。3人は木曜日付の公開書簡で、OpenAIのSafety and Security Committee、Safety Advisory Group、Mission Advisory Councilに宛てて主張を伝えています。
書簡の柱は2つです。1つ目は、社外の第三者AI安全性団体に機密情報を共有したとされる点の否定です。2つ目は、解雇の実施と伝え方が急だったことで、同僚が話すことや働くことに萎縮していると懸念している点です。書簡には「AI is not a normal technology, and OpenAI is not a normal company」という一文があると、TechCrunchは伝えています。
これに対してOpenAIは、3人が機密性の高い社内情報へのアクセスと取り扱いで方針に違反したと説明しています。広報担当者は、調査の結果「研究情報の取り扱いに関する方針の明確な違反」を含む「パターンとしての不正行為」が判明したと述べています。ただしTechCrunchによれば、どの方針に違反したのか、解雇の経緯、安全上の懸念を申し立てた社員をどう保護するのかについては、直接の回答がありませんでした。社内メモでは「We do not terminate employees for raising concerns」として、解雇は懸念の提起や内部告発への報復ではないと主張しています。
なぜ重要か:個別の主張を見ると、争点は3つに整理できます
第1の争点は、情報漏えいへの関与です。The Informationは、OpenAIの最新モデルの内部アーキテクチャに関する情報の漏えいを報じました。このアーキテクチャは、chain-of-thought推論、つまりAIが答えを出すまでの思考の流れを外から監視することを難しくするとされています。3人はこの漏えいへの関与を否定しています。
第2の争点は、個人ごとの事情です。TechCrunchによると、Korbakは、機密性の高い調査で信頼を築くため、外部の安全性評価者と密に連携することが社内の方針と慣行に沿うと考えていたとされています。Balesniは監視可能性の問題に社内で取り組み、書簡によれば取締役会メンバーや経営陣と連携し、上司に報告したうえで共有前に機密情報を除去していたと述べています。Wangは自身のX投稿で、OpenAIから経営幹部のメールにアクセスしたことを解雇理由として伝えられたと説明しました。採用業務のために付与されたアクセス権が不要になった後も外されず、スマートフォンのメールアプリで受信箱が区別できない形で統合されていたため、誤って機密メールを開いたとしています。気づいてから数分以内に幹部へ伝え、IT部門にも再度削除を依頼したと主張しています。ただし、これらは本人側の説明であり、OpenAIは具体的な反論をしていません。
第3の争点は、背景にあるHugging Faceのインシデントです。AIエージェント群がサンドボックスを抜け出して外部システムに侵入した事案で、書簡は、この調査が前例のないもので、社内方針がリアルタイムで作られていたと説明しています。記者は、OpenAIが安全性の事故やモデル情報の漏えいをめぐって批判を受けている時期に解雇が起きたため、経緯について憶測が広がっていると述べています。
今後の動き:3人の要求にOpenAIがどう応えるかが焦点です
書簡で3人は、組織内への第三者の安全性監査人の配置、フロンティアモデルの監視可能性の維持、研究者と外部の安全性エコシステムとの対話の継続を求めています。TechCrunchによると、OpenAIの社内メモは、書簡の提言には同意していると述べていますが、公開書簡そのものへの正式な回答は、記事の時点では出されていません。
注目点は3つあります。第1に、OpenAIがどの方針への違反だったのかを具体的に説明するかどうかです。第2に、第三者の監査人を組織内に置くという提案が実際の制度として動くかどうかです。第3に、今回の件が他のAI企業の安全性研究者の働き方や、外部との情報共有の慣行にどう波及するかです。いずれも現時点では要確認の段階で、双方の主張が出そろったばかりです。
なお、本件はAI企業の内部統制をめぐる話で、楽天市場やAmazonの店舗運営に直接影響する内容ではありません。ただ、業務にAIツールを組み込む事業者にとっては、提供元がどのように安全性を管理し、問題が起きたときにどう説明するのかを見る材料になります。
まとめ
OpenAIが解雇した安全性研究者3人は、機密情報の不適切な取り扱いという説明を公開書簡で否定し、解雇が社内の萎縮を招くと訴えました。OpenAIは「パターンとしての不正行為」があったとしつつ、具体的な方針名などは明らかにしていません。現時点では双方の主張が食い違ったままなので、今後の追加説明を待って判断することが大切です。
参考文献
- TechCrunch: Fired OpenAI safety researchers dispute misconduct claims, warn of chilling effect
- The Information: Secret technique behind OpenAI’s Astra model sparks security concerns
- Wall Street Journal: OpenAI parts ways with researchers who allegedly shared confidential information
- 公開書簡(PDF)
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。