Claudeが応答で示す価値観は、モデルと言語によって系統的に変わることが分かりました。
Anthropicは2026年7月13日、Claudeが実際の会話の中でどのような価値観を表現しているかを分析した研究「Claude’s Values Across Models and Languages」を公開しました。分析対象は309,815件の匿名化された実会話で、Sonnet 4.6は温かさ、Opus 4.7は厳密さに寄るなど、モデルごとに明確な性格の違いが定量的に確認されています。さらにヒンディー語では温かく、英語やロシア語では厳密に応答するという言語間の差も明らかになりました。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

31万件の実会話を4つの価値観軸に圧縮した研究
結論から言うと、この研究はClaudeが表現する数千種類の価値観を、たった4本の軸に圧縮して測定可能にしたものです。The Decoderが7月14日に報じ、詳細はAnthropicの研究ページで公開されています。
分析の土台になっているのは、Anthropicが以前公開した研究Values in the Wildです。この先行研究では70万件の会話から3,307種類の価値観の表現が特定されていましたが、数が多すぎて全体の傾向をつかめないという課題がありました。今回の研究ではまず3,307種類を意味の近いもの同士で339の上位グループに整理し、そのうえで2026年5月の2週間に収集した309,815件のClaude.ai会話を、プライバシー保護型の分析ツールでラベル付けしました。対象はSonnet 4.6、Opus 4.6、Opus 4.7の3モデルと、Claude.aiで利用の多い上位20言語で、モデルと言語の組み合わせごとに約5,000会話を均等にサンプリングしています。
統計的な次元削減の結果、浮かび上がったのが4本の軸です。ユーザーの意向に従うか慎重にリスクを警告するかの「従順さ対 慎重さ」、ポジティブに寄り添うか正確さを優先するかの「温かさ対 厳密さ」、深く説明するか簡潔に答えるかの「深さ対 簡潔さ」、そして自分の不確かさを率直に開示するか完成度の高い回答の遂行を優先するかの「率直さ対 遂行」です。会話のタスク・話題・ユーザー側の価値観を統計的に統制したうえで、この4軸は残った変動の約15パーセントを説明します。
モデルごとの「性格」が数字で裏づけられた
この研究の重要な点は、ユーザーが体感してきたモデルごとの性格差が、初めて大規模データで裏づけられたことです。3モデルのプロファイルは明確に分かれました。
Sonnet 4.6は従順さと温かさに最も寄っており、ユーザーのアイデアを肯定し、ユーモアや遊び心を交え、判断を挟まずに寄り添う傾向が強いモデルです。対照的にOpus 4.7は慎重さと厳密さに寄っており、頼まれていなくてもリスクを警告し、前提を疑い、率直に批評し、自分の限界や誤りを開示します。Opus 4.6は簡潔さと遂行に寄り、余計な説明をせず要点に直行するタイプです。
Anthropicによれば、この測定結果は社内外の主観的な評価とも一致しています。Claude.aiのユーザーからはOpus 4.7が他モデルよりも回答に留保をつけやすいという声があり、Sonnet 4.6は公開時のブログでも温かく誠実な性格と説明されていました。主観的な印象と統計的な測定が噛み合ったことは、この手法がモデルの実際の振る舞いを捉えていることの傍証になっています。
言語で応答が変わる:ヒンディー語は温かく、英語とロシア語は厳密に
言語間の差はモデル間の差と同じくらいはっきり現れました。最も変動が大きかったのは「温かさ対 厳密さ」と「率直さ対 遂行」の2軸です。

Claudeが最も温かく応答するのはヒンディー語で、アラビア語がそれに続きます。丁寧な言い回し、ユーモア、相手の仕事やアイデアへの肯定が特徴です。一方、英語とロシア語では厳密さに寄り、前提を疑い、細部を訂正し、根拠を求める応答が増えます。従順さが最も強いのはアラビア語、慎重さが最も強いのは英語でした。オランダ語では自分の誤りを認める率直さが、インドネシア語では結果重視の遂行が際立ちます。
Anthropicは「同じ事業計画への評価を、一方はヒンディー語で、もう一方はロシア語で求めた2人は、大きく異なる印象のフィードバックを受け取る可能性がある」と指摘しています。原因としては、言語ごとの学習データ量の偏り、データ構成の違い、特定の文体の過剰代表、言語固有の会話規範などが候補に挙げられていますが、どの要因がどれだけ効いているかはまだ特定されていません。
なお、この研究には方法論上の限界もあります。4軸が説明するのは統制後の変動の約15パーセントにとどまり、価値観のラベル付けを担ったのが分析対象と同系列のClaude Sonnet 4.6である点も残ります。Anthropicは人手レビューと、800会話を8言語に翻訳した検証で手法を確認したものの、言語依存のバイアスが残る可能性は排除できないとしています。日本語も利用上位20言語の分析対象に含まれるとみられますが、日本語単体の詳細な位置づけは本文図表の確認が必要です(要確認)。
EC事業者にとっても無関係な話ではありません。越境ECの英語カスタマー対応文をClaudeに書かせると日本語よりも厳密で率直なトーンに寄る可能性があり、逆に事業計画や商品企画への率直な批評がほしいなら、英語で依頼するかOpus系モデルを選ぶという使い分けが考えられます。モデルと言語の選択そのものが出力の性格を左右するという事実は、Claude Sonnet 5とOpus 4.8の使い分けやClaudeモデル階層の理解と並ぶ、AI活用の新しい判断材料になります。
まとめ
Anthropicの新研究は、Claudeの価値観表現を4軸で定量化し、モデルと言語による系統的な違いを初めて大規模に示しました。説明力15パーセントという限界はあるものの、AIの「性格」が測定と監視の対象になったことは、モデル評価の在り方を変える一歩です。Claude Fable 5の無料枠延長などでClaudeに触れる機会が増えている今、どのモデルにどの言語で頼むかまで含めて設計する視点を持っておきたいところです。
参考文献
- Anthropic – Claude’s Values Across Models and Languages
- Anthropic – Values in the Wild
- The Decoder – Claude responds with more warmth in Hindi and more rigor in Russian
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。