米年末商戦が初の1兆ドル超へ、小売は季節採用を絞り込む3つの論点

米国の年末小売売上高が初の1兆ドル超へ。UPS10万人、Amazon30万人の採用が進む中、倉庫職は季節求人の9%に。採用の量より配分が問われる3論点を日本のEC事業者向けに整理します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

全米小売連盟(NRF)の予測では、米国の年末小売売上高が初めて1兆ドルを超える見通しで、小売各社は季節採用を的を絞って進めています。

本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。年末商戦は人を増やせば売上が伸びるという単純な話ではなくなってきました。米国の小売メディアModern Retailの報道をもとに、採用の「量」より「配分」が問われ始めた背景と、日本のEC事業者がこの時期の人員と物流をどう設計すべきかを整理します。

何が起きたか:1兆ドル規模の年末商戦と各社の採用計画

Modern Retailによると、全米小売連盟(NRF)の最新予測で、今年の米国の年末小売売上高は初めて1兆ドルを超える見込みです。NRFの予測は同団体のForecastsページで確認できます。この需要を受け、物流と小売の各社が季節雇用の計画を公表しています。

物流ではUPSが、今後数か月で10万人を採用してピーク時の出荷需要に備えるとされています。Amazonは米国で季節・パート・正社員を合わせて30万人を採用する計画で、前年同期比20%増と伝えられています。店舗側では、Macy’s、Dick’s Sporting Goods、Foot Lockerがすでに店舗の人員配置を始めています。

季節性の強い業態では規模がさらに目立ちます。Spirit Halloweenは米国とカナダの1,500店舗で5万2,000人超を採用し、同社で過去最大規模になりました。Michaelsは9月に1万人超の採用を始め、昨年の年末商戦後には季節職の約50%が正社員に転換したと報じられています。

なぜ「量」より「配分」なのか:数字で見る採用の変化

採用の中身にも変化が出ています。Indeed Hiring Labのデータによると、小売の季節求人に占める倉庫職の割合は9%で、2019年の3.5%から上昇しました。つまり、売り場の接客より、EC出荷を支える倉庫や物流の人手に重心が移っています。HireQuestのMatt Wilkerson氏も、EC物流、倉庫、輸送、3PLで配送需要が引き続き強いと述べています。3PLとは、荷主に代わって保管や出荷を請け負う物流事業者のことです。

サンタクララ大学のSavannah Wei Shi教授は、総採用数よりも、チャネルをまたいでどれだけ選択的に人員を配分しているかが重要だと指摘しています。実店舗は既存スタッフ、柔軟なシフト、受け取りや返品対応などのクロストレーニングで対応する傾向があるとのことです。また、ICIMSのTrent Cotton氏によると、9月の小売応募者のうち18〜24歳が40%を占め、前年の37%から上昇しました。

消費者側の動きも見逃せません。Shi氏は、消費者が全体として支出を減らしているわけではなく、インフレ疲れから購入時期を戦略的に選び、大型のプロモーションイベントを待つ傾向があると見ています。需要が特定の日に集中しやすくなるほど、ピークに合わせた人員の厚みが重要になります。

日本のEC事業者にとっての論点

日本でも、年末商戦に向けた出荷ピークと人手の確保は毎年の課題です。ここで注目したいのは、米国の動きが「全員を増やす」のではなく「倉庫・出荷に寄せる」方向に進んでいる点です。楽天市場やYahoo!ショッピングで店舗運営をしている事業者にとっても、ブラックフライデー、年末ギフト、お歳暮、福袋の時期は、問い合わせ対応より出荷業務の遅延が評価やレビューに響きやすくなります。

物流の面では、運送各社の繁忙期に合わせた出荷締め時間の見直しが現実的な対策になります。自社倉庫なら短時間のスポット人員を、外部委託なら3PLやモール連携の物流サービスを、早めに確保しておく必要があります。なお、日本の個別企業の今期の採用規模や、米国のような季節職から正社員への転換率は、本記事の元情報からは確認できません(要確認)。

現場で今から見直せるポイントは、次の3つです。1つ目は、過去の注文データから日別の出荷ピークを割り出し、人員を平均ではなくピーク日に合わせて配置することです。2つ目は、ピッキング、梱包、返品対応など複数の業務をこなせる人を育て、日ごとの偏りに対応することです。3つ目は、生成AIを使って需要の予測メモや作業手順書、問い合わせ回答の下書きを整え、新人でも早く動ける状態にしておくことです。

今後の展望と初動アクション

今回の報道から読み取れるのは、年末商戦の勝負が「人数の確保」から「どこに誰を置くか」へ移っていることです。1兆ドル規模の需要が見込まれても、各社は応募者を無制限に増やすのではなく、倉庫、店舗、受け取り、返品といった業務ごとの優先順位をつけて採用しています。この考え方は、規模の小さい日本のEC事業者にもそのまま当てはまります。

初動としては、まず直近2年の11月から12月の日別出荷数と、遅延が起きた日を並べて確認してください。次に、その日に足りなかった業務がピッキングなのか、梱包なのか、問い合わせ対応なのかを切り分けます。最後に、足りない業務に絞って、スポット人員の募集、手順書の整備、AIによる回答テンプレート作成を前倒しで進めます。

まとめ

NRFの予測で米国の年末小売売上高は初めて1兆ドルを超える見通しとなり、UPSの10万人、Amazonの30万人といった大型採用が進んでいます。一方で、倉庫職は小売の季節求人の9%に達し、採用は「量」から「配分」の勝負に移りました。日本のEC事業者も、人数を増やす前に、出荷ピークと不足業務を数字で把握し、必要な場所に絞って人員と仕組みを準備することが、年末商戦を乗り切る近道です。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

お問い合わせ