QVCは、TikTokで週約200時間のライブ配信を行い、テレビ放送と相互に顧客を送り合う循環をホリデー商戦に向けて強めています。
本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。米国のテレビ通販大手QVCが、TikTokのライブ販売とテレビ放送を組み合わせた集客の仕組みを語りました。Modern Retailのインタビューによると、QVCはTikTok向けに専用スタジオを10室用意し、週約200時間の配信を続けています。日本でもライブコマースに取り組む事業者が増えており、他人事ではない内容です。
QVCが語ったTikTokとテレビの循環とは
フライホイール(はずみ車)とは、一度回り始めると勢いが次の成長を生む仕組みのことです。Modern Retailの記事は、QVC Groupでソーシャルコマースを統括するKrystyna Taheri氏へのインタビューで、この考え方をTikTokとテレビの連携に当てはめています。
記事で挙げられた数字は具体的です。QVCは1986年創業で、今年は40回目のホリデーシーズンにあたります。テレビでのライブ放送は年間約6万時間、TikTokでのライブ配信は週約200時間です。TikTok向けに作ったライブスタジオは10室あり、数十万人規模のクリエイターと協業しているとされています。2025年にTikTok Shopで獲得した米国の新規顧客は約100万人と報じられていますが、記事本文とインタビュー発言で表現に差があるため、正確な数字は要確認です。
見どころは配信の作り方の違いです。TikTokのライブでは冒頭の20〜30秒で視聴者をつかむ必要があるのに対し、テレビの1コーナーは7〜8分かけて商品を見せます。Taheri氏は「It’s a different style of live selling.」と述べており、同じ商品でも見せ方を媒体ごとに変えている点が示されています。
日本のEC事業者にとっての論点
論点の一つ目は、ライブ販売を単発のイベントにせず、毎週の定常業務にしている点です。週200時間という量は大企業ならではですが、考え方は小規模店舗にも使えます。たとえば週1回、決まった曜日と時間に30分だけ配信するだけでも、視聴者に習慣が生まれます。日本ではTikTok Shopの国内展開が始まっており、楽天市場やAmazonの店舗運営と並行して試す事業者が出てきています。
二つ目は、媒体ごとに入口と役割を分ける設計です。QVCはTikTokを新規顧客との出会いの場、テレビを深く説明する場として使い分けています。日本のEC事業者に置き換えると、短尺動画やライブで認知を取り、楽天市場やAmazonの商品ページで購入に進んでもらい、メルマガやLINEで再訪を促す流れが近い形です。楽天市場では商品ページの導線、Amazonでは広告と商品ページの整合が鍵になるため、動画で見せた訴求と商品ページの文言をそろえておくことが成果に直結します。
三つ目は、商戦期の山場を早めに設計することです。記事には、ブラックフライデーとサイバーマンデーを取れなければ年間を取れないという趣旨の発言があります。QVCは11月6〜8日にホリデー向けの長時間配信を予定しており、8〜10時間のメガライブも組んでいます。日本でも楽天スーパーSALEや年末商戦、Amazonのセールが控えるため、配信の予告や限定商品の準備は商戦の数週間前から動かす必要があります。
今後の展望と初動アクション
QVC Group全体の業績は厳しく、2026年6月30日までの3か月間の純売上高は17億6,500万ドルで、前年同期の19億8,400万ドルから減少したと記事は伝えています。その中でソーシャルコマースを成長の柱に据えている点は、ライブ販売が老舗にとっても生き残りの手段になりつつあることを示しています。ただし、配信時間を増やせば売上が伸びるとは限らず、ここは日本市場でも検証が必要です。
事業者がまず取れる初動は、次の3点です。第一に、売れ筋商品の中から、実演や使い方の説明で魅力が伝わる商品を1〜3点選びます。第二に、短い冒頭フックと、じっくり説明する長めの枠を分けた配信台本を作ります。第三に、配信経由の注文を計測できるよう、クーポンコードや専用ページを用意し、配信ごとに売上と新規顧客数を記録します。数字が取れれば、続けるか止めるかの判断が早くなります。
まとめ
QVCの事例が示すのは、ライブ販売の成否は一回の派手な企画ではなく、媒体ごとの役割分担と継続的な配信量で決まるということです。日本のEC事業者は、週1回30分の配信と商品ページの整合から始め、数字を見ながら広げるのが現実的です。規模の大きい事例をそのまま真似るのではなく、自社の商品と人員に合う形に落とし込むことが大切です。
参考文献
- Modern Retail: How QVC is building a flywheel across TikTok and TV ahead of the holidays
- QVC公式サイト
- Modern Retail
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。