Claude Dashboardsとは、質問文から自動更新の集計画面を作るClaudeの機能のことです。
Claude Dashboardsは、Anthropicが2026年10月8日に有料プラン向けのベータ版として発表した機能で、「今四半期の売上を地域別にまとめて」のような普通の文章で頼むと、接続したデータベースから数字を集め、データの更新に合わせて中身が変わるダッシュボードを作ります。接続先はAmazon Redshift、BigQuery、ClickHouse、Databricks、Snowflakeの5つのデータ基盤と、Salesforceなどのコネクタです。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)の現場知見にもとづいて、楽天市場・Amazon・Shopifyの売上データをClaude Dashboardsで見られるようにするまでの道筋を整理します。
先に要点を書くと、Claude Dashboardsは「ExcelやBIツールを開かずに、気になった数字をその場で画面にする」ための機能です。ただし、楽天RMSやShopifyに直接つながるわけではありません。各モールの売上データをいったんBigQueryなどのデータ基盤に集めておくことが前提になります。この準備さえ整えば、週次の売上会議の資料づくりは、質問を1文書くだけの作業に変わります。
Claude Dashboardsで何ができるようになったのか
できるようになったのは、データベースの知識がなくても、自然な文章の質問から最新の数字が入った集計画面を作り、その画面を自動で最新に保てることです。Anthropicの公式発表によると、利用者が質問を書くと、Claudeが接続先のデータから答えを引き出し、ダッシュボードを組み立て、データが変わるたびに中身を更新します。
画面上の数字の信頼性を確かめる仕組みもあります。どの数字もクリックすると、その数字を出したクエリ(データベースへの問い合わせ文)が表示され、Claudeにその意味を説明させることもできます。各グラフには、データを最後に更新した時刻が表示されます。数字の根拠を後から追えるため、「この売上は税込みか税抜きか」「キャンセル分は引いてあるか」といった確認がその場でできます。
作ったダッシュボードは、Amplitude、Grafana、Hex、Mixpanel、Omni、Perplexity、PostHog、Sigmaといった外部の分析ツールへ引き渡せます。Databricks Genie、Looker、monday.com、Tableauへの対応は近日予定とされています。公式発表は、向いている使い方として「今週の登録数を先月と比べる」ような、すばやい探索的な質問を挙げています。

提供条件は、有料プラン向けのベータ版です。公式発表ではProやMaxなどの具体的なプラン名は示されていません。Enterpriseプランでは初期設定で無効になっており、管理者が組織設定の「Artifacts」から有効にする必要があります。料金や利用上限についても公式発表に記載はなく、利用量は通常のプランの上限に含まれると報じられています。個人で試すなら、ClaudeのProプラン(月額20ドルから)が入り口になります。
同じ発表では、短い説明動画やグラフのアニメーションを作るClaude Motion(TeamとEnterprise向けのベータ版)も公開されました。文書やスライドを作るDocs、Slides、Designはベータを終え、無料プランを含む全プランで使えるようになっています。ChatGPT側の似た機能との違いは、ChatGPT WorkのData AgentでEC売上を読む方法と読み比べると分かりやすくなります。
EC事業者が使うための前提条件
EC事業者がClaude Dashboardsを使うには、売上データをデータ基盤に集める、接続の権限を絞る、指標の定義をそろえる、の3つの準備が要ります。どれも一度整えれば繰り返し使える土台なので、最初の1か月でまとめて片付けるのが効率的です。
1つ目は、データ基盤への集約です。Claude Dashboardsが直接つながるのはBigQueryやSnowflakeなどのデータ基盤で、楽天RMS、Amazonのセラーセントラル、Shopifyの管理画面とは直接つながりません。中小のEC事業者なら、GoogleのBigQueryが始めやすい選択肢です。楽天RMSの受注データやAmazonのビジネスレポート、Shopifyの注文データをCSVで書き出し、BigQueryに取り込むところから始めます。データ量が増えてきたら、各モールのAPIや連携ツールで自動取り込みに切り替えます。
ここで最初につまずきやすいのが文字コードです。楽天RMSなど国内のシステムから書き出したCSVはShift_JISのことが多い一方、BigQueryの取り込みは基本的にUTF-8を前提にしています。そのまま取り込むと商品名が文字化けするため、事前にUTF-8へ変換してください。変換と確認の手順はECのCSV文字化け・文字コード確認スキルで解説しています。
2つ目は、接続権限の絞り込みです。Anthropicのヘルプセンターをもとにした解説では、BigQueryへの接続には個人のアカウントではなく専用のサービスアカウントを使い、データセット単位で権限を絞ることが推奨されています。顧客の氏名や住所が入ったテーブルは接続先から外し、売上や商品単位の集計に必要な列だけを見せる設計にしてください。個人情報を含まない集計用のテーブルを別に作っておくと、安心して質問を投げられます。
3つ目は、指標の定義です。「売上」1つとっても、税込みか税抜きか、送料やポイント値引きを含むか、キャンセル分を引くかで数字が変わります。楽天市場とAmazonとShopifyで定義がばらばらのまま集計すると、モール別の比較が意味を持ちません。どの列をどう計算するかを1枚の文書にまとめ、Claudeへの質問に毎回添えるか、集計用のテーブル側で定義をそろえておくのが定石です。
売上ダッシュボードを作るまでの手順
手順は、データの取り込み、接続、最初の質問、検証、定例化の5段階です。最初の1枚は、全モール合計の日別売上から作ると、データの不備を見つけやすくなります。
最初の段階では、直近3か月分の受注データを各モールから書き出し、BigQueryに「受注明細」のテーブルとして取り込みます。列名はモールごとに違うため、注文日、モール名、商品コード、数量、税抜き金額、送料、値引き額、キャンセル区分など、共通の列にそろえてから取り込みます。
次に、Claudeの設定画面からBigQueryへの接続を追加します。Enterpriseプランの場合は、先に管理者がDashboardsを有効にしておく必要があります。接続できたら、最初の質問として「直近90日の日別売上を、モール別の積み上げ棒グラフで」と頼みます。
3段階目は検証です。できたダッシュボードの数字を1つずつクリックしてクエリを確認し、RMSやセラーセントラルの管理画面で見える売上と照合します。誤差が出たら、多くはキャンセルや返品の扱い、日付の基準(注文日か出荷日か)の違いが原因です。
4段階目で、質問を足していきます。「商品別の売上上位20品と前月比」「新規客とリピート客の売上比率」「楽天スーパーSALE期間中の時間帯別の注文数」など、会議で毎回聞かれる質問をダッシュボードに足していきます。最後に、週次の売上会議でこのダッシュボードを開くことを決め、Excelの集計作業をやめる日を決めます。
ダッシュボードづくりに使うプロンプト5本
ここでは、Claude Dashboardsへの質問文と、その準備に使うプロンプトを5本収録します。プロンプト2と4はClaude Dashboardsで使う質問文、それ以外はChatGPT、Claude、Geminiのどれでも使える準備用です。
プロンプト1は、集計用のテーブル設計を決めるためのものです。モールごとに違う列を、共通の形にそろえる設計図を作ります。
プロンプト1:モール横断の受注テーブルを設計する
あなたはEC事業者のデータ担当です。
楽天市場、Amazon、Shopifyの受注データを1つのテーブルにまとめるための設計を作成してください。
条件:
1. 共通の列(注文日、モール名、注文番号、商品コード、商品名、数量、税抜き金額、送料、値引き額、ポイント利用額、キャンセル区分)を定義する
2. 各モールのCSVのどの列が、共通の列のどれに対応するかを対応表として文章で示す
3. 顧客の氏名・住所・電話番号・メールアドレスは含めない
4. 売上の定義(税抜き、送料を含めない、キャンセル分を除く)を明記する
各モールのCSVの列名:{列名の一覧}
プロンプト2は、最初のダッシュボードを作るための質問文です。定義を質問に含めて、解釈のずれを防ぎます。
プロンプト2:全モール合計の売上ダッシュボードを作る
受注明細テーブルを使って、売上のダッシュボードを作ってください。
内容:
1. 直近90日の日別売上(モール別の積み上げ棒グラフ)
2. 今月の累計売上と、前月同日までの累計との比較
3. モール別の売上構成比
売上の定義:税抜き金額の合計。送料は含めず、キャンセル区分が「キャンセル」の行は除く。
日付の基準:注文日。
プロンプト3は、会議で使う質問の候補を洗い出すためのものです。毎回聞かれる質問を先にリスト化します。
プロンプト3:売上会議で使う質問リストを作る
月商{金額}のEC事業者の週次売上会議で、毎回確認すべき質問を15個作成してください。
条件:
1. 売上、客数、客単価、商品、広告、在庫の観点を含める
2. 各質問を、データベースに投げられる具体的な文章にする(期間、比較対象、切り口を明記)
3. 楽天スーパーSALEやお買い物マラソンなど、セール期間の比較を含める
4. 各質問に、答えを見て判断すること(例:在庫の追加発注の要否)を1行添える
扱っているモール:{楽天市場/Amazon/Shopify など}
プロンプト4は、異常値を見つけるための質問文です。数字の動きを人が見落とさないようにします。
プロンプト4:売上の異常を検知するダッシュボードを作る
受注明細テーブルを使って、異常を見つけるためのダッシュボードを作ってください。
内容:
1. 商品別の日次売上で、直近7日平均から50%以上増えた、または減った商品の一覧
2. モール別のキャンセル率の推移(直近30日)
3. 前週に売上があったのに、今週の売上がゼロになった商品の一覧
各グラフに、判定に使った条件を注記してください。
プロンプト5は、ダッシュボードの数字を検証するためのものです。クエリの中身を平易な言葉で説明させ、管理画面の数字と照合します。
プロンプト5:ダッシュボードの数字を検証する
以下のクエリ(データベースへの問い合わせ文)が何を計算しているかを、データの専門家でない店長にも分かる言葉で説明してください。
確認してほしい点:
1. 売上に税・送料・値引き・キャンセルが含まれているか
2. 日付は注文日・出荷日・入金日のどれを基準にしているか
3. 重複して数えている可能性がある行はないか
4. 楽天RMSやセラーセントラルの管理画面の数字とずれるとしたら、どんな理由が考えられるか
クエリ:{クエリ本文}
5本を通すと、設計、作成、質問の整理、異常検知、検証の流れがそろいます。直近の支援案件で観測したのは、プロンプト5で管理画面とのずれを最初に潰した店舗ほど、ダッシュボードが会議で信用され、定着も早かったという傾向です。
導入でつまずく3つの失敗と回避策
失敗の多くは、データの定義を決めないまま始めること、権限を広く渡しすぎること、数字を検証せずに使うことの3つです。
1つ目の失敗は、売上の定義があいまいなまま質問することです。Claudeは質問の文脈から計算方法を推測しますが、推測が自社の定義と一致する保証はありません。モールごとに税込みと税抜きが混ざったまま合計すれば、モール別の比較は意味を失います。回避策は、プロンプト1で定義を文書化し、質問のたびに添えるか、集計用テーブルの段階で定義をそろえておくことです。
2つ目の失敗は、個人情報を含むテーブルまで接続してしまうことです。受注データには購入者の氏名や住所が含まれます。分析に不要な個人情報をAIの接続先に置けば、社内規程や個人情報保護法の観点で説明が難しくなります。回避策は、専用のサービスアカウントを使い、集計に必要な列だけを持つテーブルに権限を限定することです。楽天市場とAmazonの両方を回している店舗で観測されたのは、最初に「分析用データセット」を分けた店舗ほど、社内の承認がスムーズに通ったという傾向でした。
3つ目の失敗は、検証せずに数字を使うことです。ダッシュボードはもっともらしく見えるため、誤った集計でもそのまま会議資料になりがちです。回避策は、最初の2週間は管理画面の数字と並べて照合し、ずれの原因を潰してから本番の会議で使うことです。数字をクリックしてクエリを確認できる仕組みは、そのためにあります。
効果の目安と、費用の考え方
効果は、集計作業の時間の削減と、意思決定の速さで測ります。週次の売上会議のために、各モールの管理画面から数字を集めてExcelにまとめる作業に毎週2〜3時間かけている店舗は少なくありません。この作業がダッシュボードを開くだけになれば、月に8〜12時間ほどの削減が目安です(作業時間は店舗ごとに異なるため試算です)。
費用は、Claudeの有料プランと、データ基盤の利用料の2つです。BigQueryは保存するデータ量と、クエリで読み込むデータ量に応じた従量課金で、中小のEC事業者の売上データ程度なら少額に収まるケースが多いと見られますが、具体的な金額はGoogle Cloudの料金ページで試算してください。Claude Dashboardsの利用量は通常のプランの上限に含まれると報じられており、追加料金の有無は公式発表に記載がありません。
月次の経営レポートまで自動化したい場合は、ダッシュボードの数字をもとに文章のレポートを作る仕組みと組み合わせると効果的です。考え方はEC月次経営レポート作成スキルで解説しています。
今後の展望と、EC事業者が持つべき視点
AIが集計画面を作る時代には、競争力の源泉は「BIツールを使いこなす力」から「データを整えておく力」へ移ります。質問1文で画面ができるなら、差がつくのは、質問に答えられるデータが手元にそろっているかどうかです。
Anthropicは同じ発表で、文書・スライド・デザインの機能を全プランに広げ、Claude内で作られた文書や資料は4,500万件を超えたとしています。売上の集計画面、会議資料、説明動画までが1つのAIの中で作れるようになると、週次の会議の準備は「データを整え、質問を書く」ことだけになっていきます。
一方で、ベータ版である以上、接続先や機能は今後変わる可能性があります。楽天RMSやShopifyへの直接接続が加わるかは現時点で分かりません。まずはBigQueryに売上データを集める仕組みを作っておけば、Claude Dashboardsに限らず、ChatGPTやGeminiの同種の機能にもそのまま使い回せます。AIの機能を選ぶ前に、データの置き場所を決めておくことが、最も手堅い投資です。
よくある質問
Claude Dashboardsとは何ですか
Claude Dashboardsとは、自然な文章の質問から、接続したデータベースの数字を使って自動更新されるダッシュボードを作るClaudeの機能のことです。2026年10月8日に有料プラン向けのベータ版として発表されました。
無料プランで使えますか
いいえ、Claude Dashboardsは有料プラン向けのベータ版です。Enterpriseプランでは初期設定で無効になっており、管理者が組織設定から有効にする必要があります。Docs、Slides、Designは無料プランを含む全プランで使えます。
楽天RMSやShopifyに直接つなげられますか
いいえ、公式発表で案内されている接続先は、BigQuery、Snowflake、Amazon Redshift、ClickHouse、Databricksなどのデータ基盤と、Salesforceなどのコネクタです。楽天RMSやShopifyのデータは、いったんBigQueryなどに取り込んでから使います。
料金はいくらかかりますか
Claude Dashboards自体の料金は公式発表に記載がなく、利用量は通常のプランの上限に含まれると報じられています。別途、BigQueryなどデータ基盤の利用料がかかります。ClaudeのProプランは月額20ドルからです。
数字が正しいかどうかはどう確かめますか
ダッシュボードの数字をクリックすると、その数字を出したクエリが表示され、Claudeに意味を説明させることもできます。導入初期は、楽天RMSやセラーセントラルの管理画面の数字と並べて照合してください。
顧客の個人情報は大丈夫ですか
個人情報を含むテーブルは接続しないのが原則です。専用のサービスアカウントを使い、集計に必要な列だけを持つテーブルに権限を絞ってください。社内規程と個人情報保護法の観点で、接続範囲を事前に確認しておくと安心です。
ExcelやBIツールは不要になりますか
いいえ、すぐに不要になるわけではありません。Claude Dashboardsは、気になった数字をその場で確かめる探索的な使い方に向いています。定型の経営指標を厳密に管理する用途では、既存のBIツールと併用し、作ったダッシュボードを外部ツールへ引き渡す使い方も検討してください。
まとめ
Claude Dashboardsは、質問1文で売上ダッシュボードを作り、データの更新に合わせて自動で最新に保つ機能です。EC事業者が使うには、楽天市場・Amazon・Shopifyの売上データをBigQueryなどに集め、権限を絞り、売上の定義をそろえる準備が欠かせません。最初は全モール合計の日別売上から始め、管理画面の数字と照合してから週次の会議に組み込むのが、確実に定着させる進め方です。
参考文献
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。