Inkling 2 Small、594Bのオープン重みAIが示す3つの論点

Thinking Machinesが発表したInkling 2 Smallを解説。594Bパラメータ、指数13から31への伸び、1タスク1.18ドルのコスト、重み公開の予定まで3つの論点で整理します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

Thinking Machinesは2026年11月6日、総パラメータ594Bのオープンウェイト予定モデル「Inkling 2 Small」を発表しました。

本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。Inkling 2 Smallとは、元OpenAI CTOのMira Murati氏が率いるスタートアップが公開した、ファインチューニング(自社データでの追加学習)向けのベースモデルのことです。The Decoderによると、同社は西側で最強のオープンウェイトモデルだと主張しています。前世代からの伸びが大きく、独自AIを持ちたい企業にとって選択肢が広がる発表です。

Inkling 2 Smallで何が起きたのか:数字で見る事実関係

Inkling 2 Smallは、Mixture-of-Experts(MoE、処理ごとに一部の専門家だけを動かす構造)を採用したモデルです。総パラメータ数は594B(5,940億)ですが、推論時に動くのは17B分だけです。入力はテキストと画像に対応し、思考の深さを調整できます。提供は当初Tinkerというプラットフォーム経由で、重み自体は外部の安全性テストが終わった後にApache 2.0ライセンスで公開される予定です。公式の発表はThinking Machinesのニュースページに掲載されています。

性能面では、独立評価機関のArtificial Analysisが出すIntelligence Indexで31を記録しました。前世代のInkling Smallは13だったため、18ポイントの上昇です。この数値はGoogleのGemini 3.8 Flashとほぼ同等の水準とされています。

個別のベンチマークでも伸びが目立ちます。AutomationBench-AAは5%から46%へ、FrontierCode 2.0は5%から25%へ上がりました。コーディングの総合評価であるSWE-bench Pro v2(Hard)では86.3%、DeepSWEでは72.1%です。画像関連ではMMMU Proが81.6%、ウェブサイト制作の対戦評価DesignArenaでは1,340 Eloとなり、オープンウェイトモデルの中で最高だと報じられています。

Artificial Analysisによる知能指数の比較図

なぜ重要か:コストの低さと、数字の読み方に注意が要る点

重要な論点の1つ目は、実行コストです。Artificial Analysisの比較では、1タスクあたりのコストはInkling 2 Smallが1.18ドルです。同じ条件でGemini 3.8 Flashは7.77ドル、Claude Sonnet 5.5は10.02ドルとされています。ただし、このモデルは1タスクで約15万の出力トークンを使い、前世代の約4倍です。タスクあたりコストも前世代の約6倍に増えています。安いのは他社モデルと比べた場合であり、前世代より安くなったわけではありません。

2つ目は、数字の読み方です。ハルシネーション率(事実と異なる回答をする割合)は61%から27%に下がりました。しかし同じ報道によれば、回答率は77%から53%に低下しており、答えない場面が増えたことが主因とされています。単純に賢くなったと読むのは危険です。

3つ目は、競合との位置関係です。同じ比較表の中で、DeepSWEなど多くのテストではDeepSeek-V4.1-Flashが上回っています。SWE-bench Pro v2 (Hard)ではKimi K3がわずかに首位です。つまり、西側のオープンウェイトでは最上位でも、全体で圧倒しているわけではありません。同社の主張と第三者評価の範囲は分けて見る必要があります。

学習面の規模も報じられています。学習は約12兆トークンで、うち強化学習フェーズが3兆トークンです。2,048基のGPUで9日間かけ、数十万件の長期コーディングタスクで鍛えたとされています。一方、制限も明記されています。音声には非対応で、チャット用途への最適化は十分ではなく、大規模なコードベースでは適切なツールを選べないことがあります。

タスクあたりコストと知能の関係を示す図

今後の動き:重み公開の時期と、自社データでの追加学習

最大の注目点は、重みの公開時期です。公開は外部の安全性テストの完了後とされており、具体的な日付は発表で確認できませんでした(要確認)。公開されればApache 2.0ライセンスのため、商用利用や改変がしやすくなります。自社のデータで調整した専用モデルを持ちたい企業にとっては、実用的な選択肢が1つ増えます。

もう1つの注目点は、他陣営の反応です。中国勢のDeepSeekやKimiが同じ指標で競っており、西側のオープンウェイトが追いつきつつあるのかどうかは、今後のモデル更新で見えてきます。Artificial Analysisの比較にKimi K3.1 Proは含まれていないため、次の評価では順位が入れ替わる可能性があります。

日本の読者として押さえておきたいのは、ベースモデルは完成品ではないという点です。ファインチューニングには学習データの準備と評価の設計が必要で、そこに工数がかかります。まずはTinkerなどで挙動を確かめ、重みが公開された段階で自社の用途に合うかを見極める流れが現実的でしょう。商品説明の生成や問い合わせ対応のような用途に使う場合も、日本語での精度は今回の発表だけでは分かりません(要確認)。

まとめ

Inkling 2 Smallは、594Bの総パラメータと17Bの有効パラメータを持つMoEモデルで、Intelligence Indexは前世代の13から31へ伸びました。1タスク1.18ドルというコスト面の強みがある一方、前世代よりコストは増え、回答率の低下という注意点もあります。重みの公開時期は未確認ですので、公式発表と第三者評価の続報を確認しながら判断することをおすすめします。

参考文献

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引用元: The Decoder


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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