創業80年の米ミネトンカが、クリエイター起点のDTC戦略で新規訪問者を2627%増やしました。
モカシンとスリッパで知られる米国の老舗フットウェアブランド、ミネトンカが創業80周年の節目に大胆な若返り戦略を打ち出しています。Modern Retailが2026年7月14日に報じた内容によると、売上は前年比12%増、新規顧客は19%増、そして2025年11月から2026年5月の新規サイト訪問者は前年同期比2627%増という急伸を記録しました。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本の老舗EC事業者が持ち帰れる論点を整理して解説します。
何が起きたか:スリッパの老舗が「外で履ける靴」と雑貨に広げた
結論として、ミネトンカは主力のモカシン・スリッパを守りながら、クロッグ(木靴型サンダル)やローファーモカシンといった「屋外で履ける構造的な靴」へ商品軸を広げ、同時にマーケティングをクリエイター起点へ切り替えました。1946年創業、ミネアポリス本拠の同族経営4代目にあたるジョリー・ミラー社長は、パンデミック期に巣ごもり需要でスリッパが急伸した後、消費者がオフィスや外出に戻ったことで「快適さと汎用性の両立」へ期待値が変わったと説明しています。
具体策は3つあります。第一に、2026年2月に開始したマイクロインフルエンサープログラムで、これまでに数十人のクリエイターへ約500足をギフティングしました。最もリクエストが多かったのは今年発売のバックルクロッグです。第二に、MetaとTikTokへの広告出稿を過去1年で増額し、ブランドを初めて知る層の検討喚起に充てています。第三に、今秋から靴下・手袋・帽子・ブランケット・クッションへとカテゴリを拡張します。販路はDSWやNordstromなど卸も持ちますが、売上の過半は自社オンラインです。
市場環境も追い風です。調査会社Circanaのデータでは、スリッパの売上金額は2026年5月までの12か月間で2年前比18%増と伸びており、その成長の多くを屋外対応のクロッグ型が牽引しています。一方で製造は中国とドミニカ共和国に依存しており、2025年の対中関税が100%を超えた局面では中国からの出荷を回避し、一部製品を値上げするなど、サプライチェーン面の逆風もくぐり抜けてきました。
日本のEC事業者にとっての論点:老舗の資産は「守りながら貼り替える」
このニュースの要点は、ブランド資産の古さは弱点ではなく、貼り替え方の問題だという点です。日本でも創業数十年の製造小売やメーカーが楽天市場や自社ECで「昔からの定番しか売れない」「客層が高齢化している」と悩むケースは珍しくありません。ミネトンカの動きは、定番(スリッパ)を削らずに、隣接カテゴリ(クロッグ、雑貨)で新規接点を作るという順序を守っています。
もう1つの論点はギフティングの規模感です。約500足という数字は、日本の中規模店舗でも現実的に設計できる水準です。フォロワー数十万人の有名インフルエンサー1人に依頼するのではなく、数十人のマイクロクリエイターに商品を渡し、投稿の蓄積で検索やSNSの指名流入を底上げする手法は、Instagram・TikTok運用と相性が良く、月商500万〜5000万円帯の店舗でも再現余地があります。新規訪問2627%増という数字はキャンペーンや報道など複合要因を含むとみられるため単純比較は禁物ですが(要確認)、「広告×クリエイター×新カテゴリ」の三点セットが新規獲得に効いた構図は参考になります。
今後の展望と初動アクション
日本のEC事業者が今週から動くなら、まず自社の定番商品を「屋内利用」「屋外利用」「ギフト利用」など利用文脈で棚卸しし、隣接文脈に欠けている型がないかを洗い出すことです。次に、ギフティング先のリストアップです。自店のジャンルで投稿実績のあるマイクロクリエイターを20〜50人規模で選定し、商品提供の条件と表記ルール(PR表記の徹底)を整えます。楽天市場店舗の場合、外部SNSから誘導する先は自社ECか楽天店舗ページかを最初に決め、楽天R-Mailなど楽天市場内の施策と役割分担させる設計が必要です。最後に、カテゴリ拡張は在庫リスクを伴うため、まずは受注生産や小ロットでテストし、レビューと再購入率で判断する進め方が堅実です。
まとめ
創業80年のミネトンカは、定番を守りつつクロッグと生活雑貨へ広げ、約500足のギフティングとSNS広告増額で新規顧客19%増・売上12%増を実現しました。老舗であることと若返りは両立します。日本のEC事業者も、ブランドの歴史を土台に「隣接カテゴリ×マイクロクリエイター」の組み合わせを小さく試す価値があります。
参考文献
- Modern Retail・Brands Briefing: 80-year-old Minnetonka banks on clogs and creators to woo new customers
- Minnetonka・Our Story(ブランド公式沿革)
- Inc.・How Family-Owned Minnetonka Addressed Its Cultural Appropriation
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。