データセンターの電力消費は2035年に米国発電量の20%に達する見込みです。
調査機関のBloombergNEFが公表した新しいレポートで、データセンターが2035年に米国で発電される電力の5分の1を消費するという見通しが示されました。現在のおよそ4倍の水準です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。数字の大きさもさることながら、この予測がわずか7か月前の自社予測を83%上回っている点に、いま起きている変化の速さが表れていると感じました。

BloombergNEFの新予測:データセンター容量は10年で200ギガワット近くへ
結論として、AI向け計算資源の急拡大がデータセンターの電力需要を押し上げ、2035年には米国の発電量の20%を占めるとBloombergNEFは見ています。TechCrunchが2026年7月21日に報じた内容によると、データセンターの容量は今後10年で200ギガワット近くまで拡大し、そのうち半分近くがAIモデルの学習と推論に振り向けられる見通しです。電力需要ベースで見た場合、2033年には世界のAIチップの64%が米国に集中するとも予測されています。
注目したいのは、この数字が「控えめな見積もり」かもしれないという指摘です。BloombergNEFの2035年時点の電力需要予測は、同社が2025年12月に出した予測を83%上回りました。12月時点の予測は米国で106ギガワットでしたから、半年強でおよそ倍近くに引き上げられた計算になります。上方修正はBloombergNEFだけではありません。電力業界の非営利研究機関であるEPRIは2024年の推計を2倍以上に引き上げ、S&Pの予測も2025年10月から2026年4月にかけて3分の1以上増えています。「過去の予測に照らせば、これらの数字はむしろ控えめかもしれない」とTechCrunchは書いています。
予測の変遷を並べると流れがよく見えます。BloombergNEFは2025年4月のレポート「Power for AI: Easier Said Than Built」で、米国のデータセンター電力需要は2024年の約35ギガワットから2035年に78ギガワットへ、電力需要に占める割合は3.5%から8.6%へと見込んでいました。それが2025年12月に106ギガワット、そして今回は200ギガワット近く・20%です。1年強で、同じ機関の同じ年の予測が2倍以上に膨らんだことになります。
逼迫する送電網と、1年で76%上がった電気料金
なぜこの予測が重要かというと、増える需要の大半が、すでに余力の乏しい送電網にぶつかるからです。BloombergNEFは、今後10年に建設されるデータセンターの多くが逼迫した系統に接続されると見ています。バージニア州からイリノイ州にまたがるPJM Interconnectionでは電力の34%がデータセンター向けになり、テキサス州の大半をカバーするERCOTでは発電能力の22%を割り当てる必要が出てくるという想定です。
PJMの状況はすでに厳しくなっています。発電設備と大口需要家の双方から接続申請が殺到し、新規電源の接続申請受付を4年間停止しました。2026年4月に受付を再開したものの、大手電力会社のアメリカン・エレクトリック・パワーが系統からの離脱を示唆するまでに事態は悪化しています。需給の不均衡は価格に直結し、PJM管内の電力価格は直近1年で76%上昇しました。それでもデータセンターの接続希望は減らず、直近の容量オークションでは全体の38%をデータセンターが占めています。うるチカラでも以前、AIデータセンターの需要増で米国の一部地域の電力契約が打ち切られた件を取り上げましたが、当時の論点がより広い範囲に広がった形です。
規模は米国だけの話ではありません。AI普及が強気のシナリオで進んだ場合、2033年までに世界のデータセンターは1,935テラワット時の新規電力需要を生むとBloombergNEFは試算しています。これはインドの年間電力消費量にほぼ匹敵する量です。
一方で、こうした強気の需要予測に懐疑的な見方もあることは押さえておきたいところです。Utility Diveは2025年12月の記事で、AIバブルや投機的なデータセンター計画が需要予測を過大にしている可能性を指摘しています。同じ案件を複数の自治体に持ち込む「相見積もり」的な動きも珍しくないとされ、実際に建設される割合は計画より低くなるという見方です。予測はあくまで予測であり、幅を持って読む必要があります。
日本にとっての意味と、AI利用コストへの波及
日本の読者にとって分かりやすい比較があります。国際エネルギー機関(IEA)が2025年4月に公表した報告書「Energy and AI」では、世界のデータセンターの電力消費量が2030年までに約9,450億キロワット時と2024年比で倍増し、これは現在の日本の総電力消費量をわずかに上回る規模だと整理されています。同報告書によれば、日本と韓国のデータセンターが消費する電力は世界のデータセンター需要の約5%を占め、このシェアは2030年まで維持される見込みです。日本国内でもデータセンターや半導体工場の新増設を理由に電力需要の想定が引き上げられていますが、国内の具体的な数値は資料によって幅があるため、最新の審議会資料での確認をおすすめします。
需要が増える一方で、効率を上げる動きも同時に進んでいます。Googleは推論を担う専用チップ「Frozen v2」を開発中と報じられ、消費電力あたりのトークン数で既存TPU比6〜10倍の効率を狙うとされています。この件はうるチカラでも解説しました。モデル側でも軽量版の価格引き下げが続いており、2026年7月に公開されたGemini 3.6 Flashのような選択肢が増えています。電力需要の増加とチップ・モデルの効率改善がどこで釣り合うかは、今後数年のAI利用料金を左右する重要な変数になりそうです。
EC事業者の視点で1点だけ触れておくと、AIの利用料金は電力インフラのコスト構造の上に成り立っているという事実です。商品説明文の自動生成や画像生成、問い合わせ対応の自動化にAIを組み込むほど、料金体系の変動は運営コストに直結します。現時点で値上げが決まったという情報はありませんが、特定のモデル1つに業務を固定せず、用途ごとに軽量モデルと高性能モデルを使い分けられる構成にしておくことが、価格変動に耐えるうえで現実的な備えになります。
まとめ
BloombergNEFの新予測は、2035年に米国の発電量の20%をデータセンターが消費し、これは現在の約4倍に当たるという内容でした。予測が短期間で繰り返し上方修正されている点、送電網の逼迫で電力価格がすでに動いている点が要点です。同時に、専用チップや軽量モデルによる効率改善も進んでいます。数字の大きさに驚くより、AI利用コストの前提が動く可能性を織り込んで運用設計しておくことが実務的な構えになります。
参考文献
- Data centers expected to use 4x more electricity by 2035(TechCrunch)
- Power for AI: Easier Said Than Built(BloombergNEF)
- U.S. data center power demand could reach 106 GW by 2035: BloombergNEF(Utility Dive)
- Energy and AI(国際エネルギー機関)
- データセンターの電力消費量 2030年に日本超え IEA報告書(日本原子力産業協会)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。