Appleが6月のWWDC(Worldwide Developers Conference)で発表する新しいSiriは、Google Geminiを組み合わせたチャット型体験になる見通しです。BloombergのMark Gurman氏のレポートを元にTechCrunchが伝えた内容で、注目点はプライバシーの大幅強化と、メッセージアプリと同じ「30日/1年/無期限」を選べる会話履歴の自動削除機能です。音声アシスタント市場が生成AIに飲み込まれていく中で、Appleがどのような立ち位置を取りに行くのかが見えてきました。
何が起きたか:Gemini駆動のSiriと自動削除チャット
Mark Gurman氏のニュースレターによると、Appleは6月9日開幕予定のWWDC 2026で、初の独立した「Siriアプリ」を公開する計画です。中核を担う大規模言語モデルはAppleの自社モデルではなく、GoogleのGeminiが採用される見込みで、ChatGPTのようなマルチターン会話とタスク実行を1つの画面で行える体験になるとされています。
最大の特徴は、会話履歴のプライバシーコントロールです。ユーザーは個々のチャットや全履歴を保持する期間を「30日」「1年」「無期限」から選べ、メッセージアプリの設定と同じUIで管理できるとされています。Apple広報はコメントを出していませんが、Gurman氏は「プライバシーが新しいSiriの主要テーマになる」と書いており、競合のOpenAIやAnthropicが抱える「会話ログの学習利用」への懸念を逆手に取った訴求になりそうです。
これまでSiriは音声コマンド主体で、文脈を持つ会話には弱いと評価されてきました。Apple Intelligenceとして発表された刷新計画も2025年に公開が遅れ、業界からは「AppleはAIで2周遅れている」との厳しい声が出ていました。今回のGemini採用は、自社モデルだけで戦うのを諦め、Google Cloud上の最先端モデルを取り込んで一気に追いつく戦略の表れと言えます。
なぜ重要か:音声アシスタントが「コマースの入口」に変わる
このニュースを単なるOSアップデートと見過ごすと、本質を取り違えます。注目すべきは、ChatGPT型のSiriが「日常の検索・購買・予約」の入口に座る点です。AmazonがAlexaにAlexa Shopping Agentを統合したり、GoogleがSearch Generative Experienceに商品比較を持ち込んだりしているのと同じ流れで、AppleもSiri経由のショッピング体験を準備していると見るのが自然です。
日本のEC事業者にとって、この動きは無視できません。総務省の令和6年通信利用動向調査では、日本のスマートフォン保有率は8割を超えており、その半数以上がiPhoneとされます。新Siriが日本語でも使える形でリリースされれば、「Hey Siri、楽天で人気の防水スピーカー教えて」「Amazonで一番レビュー数が多い加湿器、注文しておいて」といった音声経由のEC体験が一気に現実味を帯びます。
もう1つの論点はプライバシー設計です。30日で消える会話履歴は、ユーザーにとっては安心材料ですが、広告事業者やリコメンド事業者にとっては「個人の購買意図データが残らない」ことを意味します。Cookieレス時代と同じ構造で、購買データを蓄える主導権がプラットフォーム側に移る可能性が高く、EC事業者は自社で1stパーティデータを蓄える基盤を急がなければなりません。
今後の動き:6月WWDCで何を見るべきか
注目ポイントは大きく3つです。
1つ目は、Gemini採用の正式発表があるかどうかです。Appleは過去にもOpenAIとの連携をWWDC 2024で公表しており、今回Geminiが追加されれば「Siriが複数モデルを使い分ける」アーキテクチャになる可能性があります。これは日本のEC事業者がAppleの開発者向けAPIをどう使えるかに直結します。
2つ目は、開発者向けSDKの公開範囲です。サードパーティのアプリがSiriのチャット画面に「ショートカット」として組み込まれるなら、楽天市場やAmazon Japan、Shopifyで動く各ストアが「商品検索・注文確認」の動線をSiri経由で提供できるようになります。
3つ目は、対応地域と言語です。Apple Intelligenceは日本語対応が2025年春以降に大幅に遅れた経緯があり、新Siriも初回リリースで日本語が含まれるかは要確認です。Geminiの日本語性能は高いため、当初から日本語対応する可能性はありますが、現時点では推測の域を出ません。
まとめ
Apple Siriの新版がGemini駆動になり、30日自動削除チャットを備えるという報道は、AI音声アシスタントの主戦場が「賢さ+プライバシー」に移った象徴的な動きです。日本のEC事業者は、音声経由の購買導線をどう設計するか、そして自社で購買意図データを蓄える基盤をどう作るかの両方を、WWDC 2026の発表内容を見ながら早めに検討すべきタイミングに来ています。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。