OpenAIは2025年11月13日、ChatGPTの新機能「グループチャット」のパイロット版を日本、ニュージーランド、韓国、台湾の4カ国で開始しました。この機能により、最大20名のユーザーが同一の会話空間でChatGPTを交えた協業が可能になります。従来のチャットボットが1対1の対話形式だったのに対し、複数のユーザーとAIが同時に参加できる点が大きな転換です。
グループチャット機能の仕組みと特徴
グループチャットを開始するには、新規または既存の会話画面右上にある人型アイコンをタップします。既存の会話から開始する場合、ChatGPTは過去の履歴を含まない新しいグループチャットを作成します。招待リンクを共有することで最大20名まで参加者を追加でき、リンクを持っている人は誰でもグループに参加できます。初回参加時には名前、ユーザー名、写真を含む簡易プロフィールの設定が求められます。
技術面では、グループチャットはGPT-5.1 Autoで動作します。このモデルは、プロンプトの内容とユーザーのプラン(Free、Go、Plus、Pro)に応じて最適なモデルを自動選択します。OpenAIによれば、ChatGPTはグループ会話の流れを理解し、いつ発言すべきか、いつ黙っているべきかを判断できるよう訓練されています。ユーザーは「ChatGPT」とメンション することで、いつでもAIに発言を促すことができます。
プライバシー面では重要な配慮がなされています。個人のChatGPT記憶機能はグループチャットでは使用されず、グループ会話から新しい記憶が作成されることもありません。グループチャットは通常の個人チャットとは別のセクションに表示され、管理が容易になっています。グループ作成者以外のメンバーは、他のメンバーを削除する権限を持ちます。また、18歳未満の参加者が1名でもいる場合、全員に対してコンテンツフィルターが適用されます。
実際の活用場面
OpenAIは、グループチャット機能が友人や家族、同僚との協業を促進すると説明しています。週末旅行の計画では、グループ内でChatGPTが目的地の比較、旅程の作成、持ち物リストの提案を行い、全員が議論に参加できます。レストラン選びでは、全員の好みに合う店を見つける手助けをします。
職場や学校での活用も想定されています。学生はノートや記事を共有し、ChatGPTにレポートの概要作成や複雑なトピックの要約を依頼できます。同僚同士では、会議の整理、提案書の下書き、クリエイティブなコンセプトの精錬などに活用できます。
グループチャットでは、検索機能、画像生成、ファイルアップロード、音声入力などの機能が利用可能です。ChatGPTは絵文字でリアクションしたり、プロフィール写真を参照して個別化された画像を生成することもできます。重要な点として、利用制限(レートリミット)はChatGPTが応答を生成する際にのみ適用され、ユーザー間の直接的なメッセージには適用されません。
段階的な展開とOpenAIの意図
OpenAIは今回のパイロット版を「共有体験」に向けた小さな第一歩と位置づけています。初期ユーザーからのフィードバックを収集し、他の地域やプランへの拡大方法を検討する方針です。OpenAIのスタッフであるKeyan Zhang氏は、社内では当初「マルチプレイヤーChatGPT」を「型破りなアイデア」と考えていたものの、初期テストでモデルが既存インターフェースで示されている以上の可能性を示したと述べています。
この動きは、OpenAIがChatGPTをより深く日常的なワークフローに組み込もうとする戦略の一環です。11月には新しいGPT-5.1モデルがリリースされ、より高速な推論と信頼性の高い指示追従、パーソナライズされた会話体験が強化されています。先月発表されたChatGPT Atlasブラウザと合わせて、OpenAIはAIを単なる質問応答ツールから、協業のための共有スペースへと進化させようとしています。
競合他社も類似の動きを見せています。マイクロソフトは10月にCopilot AIアシスタントでグループチャット機能をアップデートしました。一方、AnthropicのClaudeは2024年夏にプロジェクト機能を通じて共有可能なコンテキストとチャット履歴を導入していますが、これはリアルタイムのグループチャットとは異なります。
日本での展開が持つ意味
今回のパイロット版で日本が選ばれた背景には、アジア太平洋地域におけるAI活用の高い関心と、協業文化への適合性があると考えられます。日本は4カ国の中で最大の経済規模を持ち、ビジネス環境におけるAIツールの採用が急速に進んでいます。
OpenAIは現在、100万社以上の有料ビジネス顧客を抱えており、製薬、小売、テクノロジー、金融サービスなどの分野で研究支援、要約、顧客対応にモデルが採用されています。グループチャット機能は、こうした企業顧客のニーズに応える形で設計されており、チーム内でのAI活用を促進する狙いがあります。
ただし、OpenAIは現時点でグループチャットのデータが将来のAIトレーニングに使用されるかどうかを明言していません。企業利用を考える場合、この点は今後確認が必要な項目です。
まとめ
ChatGPTのグループチャット機能は、AIを個人利用からチーム協業へと拡張する重要な一歩です。日本でのパイロット展開は、ユーザーがどのように機能を活用し、どのような課題や要望があるかを見極める機会となります。OpenAIが初期フィードバックをどう反映し、グローバル展開にどうつなげるかが、今後の注目点です。
引用: /openai.
