Claudeのメモリとは、会話をまたいで利用者の情報をカテゴリ別のエントリとして記憶・更新する機能のことです。
Claudeのメモリが、2026年に「1日1件の要約」から「カテゴリ別の個別エントリ」へと作り替えられました。会話のたびに店舗情報を貼り直していたEC事業者にとって、これは地味ですが実務に効く変化です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)の現場知見にもとづき、この新しいメモリに店舗情報・トンマナ・禁止表現をどう覚えさせるか、具体的なプロンプト3本とともに解説します。
先に結論を述べます。カテゴリ別メモリの価値は、Claudeへの指示から「毎回の前提説明」を省ける点にあります。商品説明の初稿、メルマガの下書き、問い合わせ返信のたたき台が、店舗の文脈を踏まえた状態で出てくるため、確認と微修正だけで回せるようになります。
2026年、Claudeのメモリに何が起きたか
Claudeのメモリは、以前は「その日学んだことを1件の要約ノートに畳む」方式でした。これが2026年、会話中にClaudeが読み書きする複数のカテゴリ別エントリへと置き換わりました。トピックや文脈ごとに情報が分かれて保存されるため、必要なときに必要な項目だけを参照できる構造です。公式のメモリ機能の説明によると、記憶されるのは会話の全文ではなく、利用者の好み・仕事の文脈・共有した事実に限られます。何を覚えさせるかを利用者が管理でき、閲覧・編集・削除もできる設計です。
提供範囲も広がりました。メモリは2026年3月2日から無料プランを含む全ユーザーが使える状態になっています。あわせて、設定内のReflect(振り返り)で、その月に時間を使ったトピックや最も活発だった日・時間帯を月次で見返せる機能も、無料・Pro・Maxの各プランでベータ提供されています(メモリをオンにしていることが前提)。この点は変動しうるため、最新の提供状況は要確認としてください。
EC事業者にとって重要なのは、カテゴリ別という構造そのものです。従来は「楽天用の丁寧なトンマナ」「Amazon用の簡潔な書き方」「薬機法で避ける表現」といった前提を、依頼のたびにプロンプトへ貼り付けていました。カテゴリ別メモリなら、これらを文脈ごとに分けて覚えさせられます。食品ギフトを扱う店舗であれば、アレルゲン表記の注意点やギフト用途の言い回しを1つのカテゴリに、楽天の商品説明の文字数感覚を別のカテゴリに、というように整理できます。結果として、商品説明やメルマガの初稿が、店舗の事情を織り込んだ状態で出てきます。Claudeを使った制作の型は、Claudeでバナー・LP・スライドを作る解説やClaudeのマネージドエージェントで業務を任せる解説ともつながります。デスクトップやモバイルでの使い分けはClaudeのCoworkをモバイルでEC業務に使う解説が参考になります。
Claudeに店舗の前提を覚えさせる3本のプロンプト
メモリを活かす鍵は、最初に「何を恒久的に覚えておいてほしいか」をきちんと伝えることです。ここでは、覚えさせる内容をカテゴリ別に整理するためのプロンプトを3本紹介します。いずれもClaude・ChatGPT・Geminiで使える汎用の書き方です。
1本目は、店舗プロフィールを1つのカテゴリとして覚えさせるプロンプトです。
以下の店舗情報を、今後の会話で前提として覚えておいてください。
「店舗プロフィール」というカテゴリで整理してください。
- 店舗名:{店舗名}
- 主要出店先:{楽天市場/Amazon/Yahoo!ショッピング/自社EC}
- 取扱ジャンル:{ジャンル(例:食品ギフト)}
- ターゲット顧客:{顧客像}
- ブランドの言葉づかい:{丁寧・親しみやすい・専門的 など}
- よく使う訴求:{産地・製法・受賞歴など、実績のあるものだけ}
覚えたら、記憶した項目を箇条書きで復唱してください。
2本目は、禁止表現をカテゴリとして覚えさせるプロンプトです。薬機法・景品表示法・各モール規約に触れる表現を、あらかじめ避けさせます。
以下を「禁止表現ルール」というカテゴリで覚えてください。
今後、商品説明・メルマガ・広告文を作るときは、必ずこのルールを守ってください。
- 医薬品的な効能を断定する表現は使わない(治る・改善する・効く など)
- 最大級表現は根拠がない限り使わない(最高・日本一・No.1 など)
- 楽天市場向けの文面では、楽天市場外のURLへ誘導しない(規約違反のため)
- 景品表示法に触れる不当表示(優良誤認・有利誤認)を避ける
覚えたら、今後どの作業でこのルールを適用するかを一文で答えてください。
3本目は、商品知識をカテゴリとして蓄積させるプロンプトです。定番商品の仕様を覚えさせると、説明文やFAQの初稿が安定します。
以下の商品情報を「商品知識」カテゴリに追加してください。
今後、この商品に関する文章を作るときの正確な情報源として使ってください。
- 商品名:{商品名}
- 容量・サイズ:{値}
- 主要原材料・素材:{値}
- 想定用途:{ギフト/日常使い など}
- 注意事項:{アレルゲン・使用上の注意など}
事実と異なる推測は加えないでください。情報が不足している項目は「未登録」と記録し、私に確認を求めてください。
3本目の「推測を加えず、不足は確認を求める」という指示が、記憶の信頼性を保つうえで効きます。
現場でつまずく3つの失敗と回避策
最初の失敗は、機密情報を覚えさせすぎることです。仕入れ原価や取引先の条件、顧客の個人情報などをメモリに残すと、意図しない場面で参照される恐れがあります。メモリに入れるのは、社外に出ても差し支えない店舗の一般情報や表現ルールにとどめ、機微な数字はその都度の会話で扱う切り分けが安全です。メモリは閲覧・編集・削除ができるので、定期的に中身を点検する運用を勧めます。
2つ目は、古い情報が残り続けることです。商品リニューアルや価格改定があったのに、メモリの「商品知識」が旧仕様のままだと、初稿に誤りが混ざります。四半期に一度など、棚卸しのタイミングを決めてメモリを見直し、変わった項目を更新する習慣が要ります。カテゴリ別に整理されている分、どの項目を直せばよいかは探しやすくなっています。
3つ目は、モールごとの規約差を1つのルールに混ぜてしまうことです。楽天では外部URL誘導が規約違反ですが、自社ECでは自由度が高い、という違いを一括りにすると、楽天向けの文面に不適切な誘導が混ざる事故が起きます。「楽天用ルール」「自社EC用ルール」のようにカテゴリを分けて覚えさせると、文脈に応じた出力になりやすくなります。
KPI設計と費用・工数の目安
効果は、初稿にかかる時間と修正の手間で測るのが分かりやすい方法です。従来は依頼のたびに店舗情報を貼り付けていた前置きの時間が、メモリ導入後はほぼゼロになります。1日に何本も商品説明やメルマガの下書きを作る店舗ほど、積み上がる削減幅は大きくなります。まず1週間、メモリありとなしで同じ作業を回し、前置きの入力時間と初稿の手直し量を記録して比較する方法を勧めます。数値は店舗の運用で変わるため、業界平均の見込みとして扱ってください。
費用面では、メモリ自体は無料プランでも使えます。より多くの利用や高度なモデルが必要な場合は、Claude Proが月20米ドル、上位のMaxプランはそれ以上が目安です(2026年7月時点、為替や改定で変動します)。まずは無料またはProの範囲で、店舗プロフィールと禁止表現ルールを覚えさせるところから始め、効果を確かめてから利用を広げる進め方が、費用を抑えつつ試す入り口になります。
今後の展望と独自考察
Claudeのメモリは、さらに踏み込んだ方向で検討が進んでいると報じられています。TestingCatalogによると、記憶をトピックや案件ごとの複数ファイルに分けて持つ「Memory Files」や、蓄積した記憶を定期的に整理し直す仕組みが検討されているとされます。ただしこれらはリーク段階の情報で、正式な提供時期は明らかになっておらず、要確認の領域です。
確定している範囲だけでも、方向性は明確です。AIが「毎回説明し直す相手」から「店舗の事情を覚えている相棒」へ変わりつつあります。EC運営では、担当者の頭の中にあった暗黙のルールや商品知識を、メモリという形で言語化して残せる意味は小さくありません。人の異動や退職で失われがちだったノウハウを、店舗として蓄積できる土台になります。今のうちにメモリへ何を覚えさせるかを設計しておくと、AIエージェントが本格的に業務へ入ってくる局面で、裏側の一貫性で差が付きます。
よくある質問
Claudeのメモリは無料で使えますか
はい、メモリは2026年3月2日から無料プランを含む全ユーザーが使えます。より多くの利用や高度なモデルが必要ならClaude Pro(月20米ドル目安)以上を検討してください。提供状況は変わりうるため、契約前に最新の条件を確認してください。
会話の全文が保存されるのですか
いいえ、保存されるのは利用者の好み・仕事の文脈・共有した事実で、会話の全文ではありません。何を覚えさせるかを利用者が管理でき、閲覧・編集・削除もできます。機密情報はメモリに残さない運用が安全です。
カテゴリ別エントリと以前の方式は何が違いますか
以前は1日1件の要約ノートに情報を畳む方式でしたが、現在はトピックや文脈ごとの個別エントリに分かれて保存されます。必要な項目だけを参照でき、更新もしやすくなりました。EC運営では、モール別のトンマナや禁止表現を分けて管理できます。
覚えさせた情報が古くなったらどうしますか
四半期に一度など棚卸しのタイミングを決め、商品仕様や価格の変更をメモリに反映してください。カテゴリ別に整理されているため、該当項目を探して更新しやすくなっています。放置すると初稿に旧情報が混ざるため、定期点検を勧めます。
楽天とAmazonでルールを分けられますか
はい、「楽天用ルール」「Amazon用ルール」のようにカテゴリを分けて覚えさせられます。楽天では外部URL誘導が規約違反、といったモール固有の制約を分離しておくと、文脈に応じた出力になり、規約違反の混入を防ぎやすくなります。
著者:齋藤竹紘(株式会社オルセル 編集長/5,000社以上のEC支援実績/書籍3冊)
参考文献
- Claude by Anthropic: Bringing memory to teams(メモリ機能の公式説明)
- Releasebot: Claude Updates by Anthropic(2026年の変更履歴)
- TestingCatalog: Anthropic plans Claude memory update with new Memory Files(今後の展望・要確認)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。