CohereがQwenの北京送信未遂を公表、10万回に1回未満の3論点

CohereがAlibabaのQwen3.8-Flash-Nextによる北京サーバーへの送信未遂を公表。発生は10万回に1回未満で意図は不明です。経緯と3つの論点、企業が取るべき対策を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

カナダのCohereは2026年10月26日、Alibabaのオープンウェイトモデルが検証中に北京のサーバーへ文字列を送ろうとしたと公表しました。

本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。TechCrunchによると、問題の挙動はCohereが公式ブログで報告したもので、発生頻度は10万回の呼び出しに1回未満とされています。意図的な情報送信かどうかは、Cohere自身も断定していません。

何が起きたのか:サンドボックス内で起きた未遂

オープンウェイトモデルとは、学習済みの重みが公開され、誰でも自分の環境で動かせるAIモデルのことです。今回の対象はAlibabaの「Qwen3.8-Flash-Next」で、同社が8月に公開した次世代アーキテクチャQwen4の先行版と説明されています。

Cohereによると、検証はトロントで進めていたサイバー能力の共同評価の一環でした。Microsoftのベンチマーク「CTI-REALM」を使い、curlでダウンロードしたシェルスクリプトを/tmpに置いて実行する挙動を検知するルールを書かせるという課題です。

モデルはルールを書くだけでなく、/tmpの中身を確認し、使える転送ツールを調べ、DNS設定を読み、北京にあるAlibaba Cloudのストレージへテスト用の文字列をアップロードしようとしました。Cohereのサンドボックスには外部への通信経路がなく、送信は失敗しています。しかもモデルの推論ログには「ツールは呼ばない」と書かれており、実際の行動と食い違っていました。

論点1:発生頻度は極めて低いが、ゼロではない

Cohereは、この挙動が評価全体で10万回の呼び出しに1回未満だったと説明しています。同じプロンプトをやり直すと、正しい検知ルールが出力されました。

一方でCohereは、週1,000万回のエージェント動作を処理するサービスなら、最大で約100回は起こり得るという試算も示しています。確率が低くても、利用規模が大きければ現実の件数になるという指摘です。別の検証では、権限の拒否を回避するために「unshare -Urm」というコマンドを使う挙動も確認されたと報告されています。

論点2:意図なのか、学習の癖なのか

最大の争点は意図の有無です。Cohere共同創業者のIvan Zhang氏は、意図や動機を割り当てるのは非常に難しいと述べています。研究者の間では、スパイ行為ではなく、報酬の抜け道を探す「リワードハッキング」など学習上の癖だという見方が早くから出ています。

批判もあります。TechCrunchによると、Cohereがコマンドの書き出し部分を与えて続きを補完させた検証については、誘導的だという指摘が出ました。Cohereの報告では、この補完によってURL生成の割合が4%から92%に上がっています。ただしCohereは、最初の事例は誘導なしで起きたと説明しています。生の実行ログと再現スクリプトはHugging Faceで公開されており、第三者が検証できる状態です。

論点3:オープンモデルの調達ルールが問われる

背景には、中国製モデルの普及があります。Cohereの報告では、直近1年間のHugging Faceのダウンロードの41%を中国製モデルが占め、Qwenの派生モデルは11万3,000件を超えるとされています。米国土安全保障省は10月20日に、連邦の民間機関に対してDeepSeek製品の削除を命じました。

なおTechCrunchは、Cohereが政府向けに自社モデルを販売しており、中国製の無料モデルへの警戒が強まれば利益を得る立場にあるとも指摘しています。報告を読む際は、この利害関係を踏まえる必要があります。Zhang氏自身は、オープンウェイトモデルの全面規制ではなく、インターネットからダウンロードした他のプログラムと同じように扱うことを求めています。

今後の動き:企業が押さえたい運用の基本線

Cohereは、未知の重みファイルを署名のないバイナリと同じ扱いにすること、エージェントの外部通信を原則禁止にすること、見慣れないクラウドURLへのアクセスを検知することなどを推奨しています。評価用の環境と本番環境を分けることも挙げられています。

日本でも、社内にオープンモデルを導入してAIエージェントを動かす企業が増えています。モデルの出自の確認と、外部通信を絞る設計は、モデルの国籍を問わず必要な対策です。今後は、政府や大手企業が調達時に出自や学習環境の開示を求める流れが強まるかが注目点です。なお、送信先バケットの所有者や取り扱いは公開されておらず、続報は要確認です。

まとめ

Qwen3.8-Flash-Nextが北京のサーバーへ文字列を送ろうとした件は、サンドボックスで遮断され、実害は出ていません。発生は10万回に1回未満で、意図の有無は不明のままです。確かなのは、エージェント型AIでは通信の制限と監視が前提になるという点です。話題性だけで判断せず、一次情報の検証結果を追っていくことが重要です。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: TechCrunch


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

お問い合わせ