ゴールドマン・サックスは2026年10月の社内ガイドラインで、Claude CodeなどのAIコーディングツールの利用をエンジニア中心に絞り込みました。
本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。ゴールドマン・サックスが、トレーダーや銀行員の大半からAIコーディングツールの利用権限を外したと伝えられています。CIOが非技術系社員の「vibe coding」を称賛したのは2026年7月で、そこから約3か月での方針転換です。AIの現場活用を進めるうえで、権限設計をどう考えるべきかを整理します。
何が起きたか:トレーダーと銀行員がAIコーディングツールを使えなくなった
The Decoderによると、ゴールドマン・サックスは、AnthropicのClaude CodeやMicrosoft傘下のGitHubが提供するコーディング支援ツールを、トレーダーや銀行員の大半から取り上げました。引き続き使えるのはエンジニアのみとされています。
この情報は、Bloombergが10月付けの社内ガイドラインを引用して報じたものです。トレーダーや銀行員は数か月にわたり、取引フローの監視やコンテンツ作成にこれらのツールを使っていたと伝えられています。社内ではこの変更に不満の声も出ているとされています。
vibe codingとは、専門のプログラマーではない人が、AIに自然な言葉で指示してプログラムを作らせる開発スタイルのことです。ゴールドマンのCIOであるMarco Argentiは、2026年7月のインタビューでこの考え方を称賛していました。トレーダーや資産運用部門の社員がアイデアをAIで試作し、それをエンジニアが本番向けに仕上げる流れが想定されていたと、The Decoderは伝えています。同記事は、この計画はもう採用されていないようだと指摘しています。
なぜ重要か:実験の終了宣言と、生産性とリスク管理という二つの理由
広報のNick Carcaterraは、Bloombergに対し、理由は生産性とリスク管理を含む複数の要因だと説明しました。実験段階は終わり、ツールは長期的に最も活用できる人に限定するという趣旨です。
ここで注目したいのは、禁止の理由が単なるセキュリティ事故ではなく、生産性とリスク管理の両面で語られている点です。具体的な事故の有無や、どのリスクが問題視されたのかは、現時点で公表されていないため要確認です。確かなのは、全社員にAIツールを開放して様子を見る段階から、用途と担当者を絞って運用する段階へ、世界有数の金融機関が舵を切ったという事実です。
金融機関は、取引や顧客情報という高い機密性を扱います。非技術職が作ったコードが、レビューを経ずに業務で動く状況は、統制の面で懸念が生じやすい構造です。一方で、現場に近い人が自分の手でツールを作れる価値も大きく、社内の不満はその裏返しと読めます。この綱引きは、金融に限らず、どの業種のAI導入でも起こりうるものです。
AI導入支援の現場では、全員に開放するか、一部に限定するかの二択で議論が止まりがちです。実際には、試作は自由にし、本番反映はレビュー必須とするなど、権限を段階に分ける設計が現実的です。ゴールドマンの事例は、その段階設計が後付けになったときの揺り戻しの大きさを示しています。
今後の動き:他社が追随するか、開放と統制の線引きがどう定まるか
今後の注目点は三つあります。第一に、他の大手金融機関が同様の絞り込みに動くかどうかです。第二に、AIツール提供側が、企業向けに利用範囲や操作履歴を細かく管理できる機能をどう強化するかです。第三に、制限された社員が、会社が許可しない形でAIを使い続ける、いわゆるシャドーAIが広がらないかどうかです。
今回の報道はBloombergの記事を起点としており、社内ガイドラインの全文は確認できていません。制限の範囲や例外の扱いは、今後の続報で変わる可能性があります。
なお、ここまでの内容はEC事業の運営に直接結びつくものではありません。ただ、社内でAIツールを使う範囲を決める必要がある事業者にとっては、導入の勢いだけで開放せず、用途と責任者を決めて運用する大切さを示す、参考事例といえます。
まとめ
ゴールドマン・サックスは、2026年7月に称賛したvibe codingから約3か月で、AIコーディングツールをエンジニア中心の利用へ絞り込みました。理由は生産性とリスク管理とされ、実験段階の終了が宣言された形です。AIの社内活用は、開放するか禁止するかではなく、誰が何に使い、誰が確認するかを決める運用設計の段階に入っています。
参考文献
- The Decoder: Goldman Sachs pulls AI coding tools from traders and bankers
- Bloomberg: Goldman restricts traders and bankers from using some AI tools
- Marco Argenti氏のインタビュー動画(YouTube)
- Anthropic: Claude Code
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。