投稿者 齋藤竹紘投稿日: カテゴリー Gemini
Googleが2025年10月に発表した生成AI技術の最新アップデートは、画像生成モデル「Nano Banana」と動画生成モデル「Veo 3.1」を中心とした新機能群です。公式ブログではハロウィーン向けコンテンツの作成例として紹介されていますが、これらのツールが持つ可能性は季節イベントの枠を超えています。
従来、プロのカメラマンやデザイナーに依頼していた作業が、テキストでの指示だけで実現できる時代が到来しつつあります。特に注目すべきは、既存の写真を基にバリエーションを生成できる点と、静止画から動画を作成できる点です。
Nano Bananaの画像生成能力
Googleの最新画像生成モデル「Nano Banana」は、既存の写真をアップロードし、詳細なプロンプトを与えることで、まったく異なるスタイルの画像を生成できます。
公式ブログで紹介されている例では、自撮り写真を「半骸骨の半透明なビクトリア朝の幽霊」に変換したり、「Y2K（2000年代初頭）スタイルの映画ポスター風」に変換したりしています。プロンプトには「ultra-realistic photograph（超リアルな写真風）」「maintain existing pose and framing（既存のポーズと構図を維持）」といった技術的な指示を含めることで、出力品質をコントロールできます。
興味深いのは、ペットの写真を使った例です。「猫のSunnyを魔法使いの衣装を着たカートゥーンキャラクターに変える」というプロンプトで画像を生成した後、その画像をGeminiに渡して「Storybook機能」を使うと、イラストを中心とした物語を作成できます。1枚の写真から、キャラクターと物語の両方が生まれるという流れです。
Geminiアプリ内でNano Bananaにアクセスし、写真とプロンプトを入力するだけという手軽さも特徴です。ただし、プロンプトの精度が出力品質を大きく左右するため、具体的で詳細な指示が重要になります。
Google PhotosのRemix機能でスタイル変換
Google Photosに追加された「Remix」機能は、既存の写真を3Dアニメーション、アニメ風、スケッチ風などのスタイルに変換できます。2025年10月のアップデートでは、ハロウィーン専用スタイルに加え、クレイアニメーション、ピクセルアート、浮世絵風といった選択肢も追加されました。
使い方は、Google Photosの「Create」タブを開き、「Remix」を選択して画像とスタイルを選ぶだけです。複雑な操作は不要で、数タップで完結します。
米国のAndroidユーザー向けには、写真編集画面で直接AIに編集を依頼できる「Help me edit」機能も提供されています。この機能は現時点では米国限定ですが、将来的には他の地域にも展開される可能性があります。
Veo 3.1による動画生成の進化
Googleが最近リリースした動画生成モデル「Veo 3.1」は、テキストプロンプトだけで動画を生成できるだけでなく、静止画を動画化する機能も備えています。公式ブログでは、静止画の肖像画を動く映像に変換した例が紹介されています。
Veo 3.1の特徴は、プロンプトへの忠実度が向上し、より豊かな音声、物語のコントロール性、その他の改善が施されている点です。例として紹介されている動画では、「小さなオレンジと白と黒の牧羊犬と、小さな全身ゴールデンのコッカースパニエルとキングチャールズスパニエルのミックス犬が、木々に囲まれた住宅街から出てくる。秋の葉が落ちていて、玄関にはカボチャがある。犬たちは近所をトリック・オア・トリートして回る。最後に『Happy Halloween!』という文字が画面に表示される。30秒以内。スタイルはかわいくスケッチ風で」というプロンプトが使われています。
このレベルの詳細な指示により、具体的なイメージに近い動画を生成できることが分かります。静止画から動画を作成する機能は、既存の写真素材を活用したい場合に特に有効です。
Mixboardでアイデアを視覚化
Google Labsの実験的ツール「Mixboard」は、アイデアの視覚化と探索を支援します。公式ブログでは、犬をさまざまなハロウィーンコスチュームで表現した例が紹介されており、1つの入力から複数のバリエーションを自動生成できることが示されています。
Mixboardは、頭の中にある漠然とした概念を具体的なビジュアルに落とし込む際や、複数の方向性を並べて比較検討したい場合に役立ちます。現時点では実験段階のツールですが、アイデア出しの段階で活用できる可能性があります。
Gemini Canvasでインタラクティブなツールを作成
Gemini Canvasは、クリエイティブなアイデアをWebアプリやインタラクティブな可視化ツールに変換する機能です。公式ブログでは、自撮り写真をジャック・オー・ランタンのカービングテンプレートに変換し、自宅で彫れるデザインを作成する例が紹介されています。
これは単なる画像生成ではなく、「自撮り写真をジャック・オー・ランタンに変換し、自宅で彫れるデザインを提供するアプリを作って」という指示で、インタラクティブなツールそのものを生成できることを意味します。プログラミング知識がなくても、アイデアを形にできる可能性を示しています。
日本での利用状況と今後の展開
これらのGoogle AI機能の多くは、現時点では英語圏を中心に展開されています。特にGoogle PhotosのRemix機能における「Help me edit」は米国のAndroidユーザー限定であり、日本での提供時期は明確にされていません。
しかし、Geminiアプリ自体は日本でも利用可能であり、Nano BananaやVeo 3.1へのアクセスも段階的に拡大しています。日本語でのプロンプト入力も可能ですが、現時点では英語プロンプトの方が精度の高い出力が得られる傾向があります。
利用には、Gemini Advancedの有料プラン（月額2,900円）への加入が必要です。無料版でも基本的な機能は使えますが、Nano BananaやVeo 3.1といった最新モデルへのアクセスは有料プラン限定となっています。
生成AIツールの実用における注意点
これらの生成AIツールは強力ですが、出力品質は必ずしも安定していません。同じプロンプトでも複数回試すことで、より良い結果が得られることがあります。また、生成された画像や動画には、意図しない要素が含まれることもあるため、使用前に必ず内容を確認する必要があります。
著作権の観点では、生成された画像や動画を商用利用する際には、Googleの利用規約を確認し、必要に応じて法的なアドバイスを受けることをおすすめします。特に、元となる写真に他人が写っている場合や、ブランドロゴが含まれる場合は注意が必要です。
プロンプトの設計には試行錯誤が必要です。最初から完璧な結果を期待するのではなく、段階的に指示を調整していくアプローチが現実的です。公式ブログで紹介されているプロンプト例は、そのまま使うだけでなく、自分の目的に合わせてカスタマイズする際の参考になります。
まとめ
GoogleのNano BananaとVeo 3.1は、画像や動画の制作における技術的なハードルを大きく下げます。特に、既存の写真を基にバリエーションを生成できる点や、静止画から動画を作成できる点は、これまでプロの領域とされていた作業を民主化する可能性を持っています。
現時点では英語圏中心の展開であり、日本での本格的な利用環境が整うにはもう少し時間がかかるかもしれません。しかし、早期に試用を始めることで、これらのツールの特性や効果的な使い方を理解できます。
生成AIは完璧なツールではなく、人間の創造性を置き換えるものでもありません。しかし、アイデアを素早く形にしたり、複数のバリエーションを検討したりする際の強力な支援ツールとして、今後ますます重要な役割を果たすでしょう。
引用: https://blog.google/products/gemini/gemini-nano-banana-veo-halloween-images/
スラッグ: google-nano-banana-veo-ai-image-video-generation
この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます
