Googleの公式ブログが5月20日(米国時間)、Google Marketing Liveに合わせて、Universal Commerce Protocol(UCP)を軸にした新しい買い物体験を発表しました。検索結果やGeminiのチャットから、そのままGoogle Payで決済できる「Universal Cart」が中核です。Nike、Sephora、Target、Walmart、Wayfair、ShopifyマーチャントのFentyやSteve Maddenなどが対応ブランドに名を連ねています。
第一印象としては、これまで「AIで商品を探す」段階だった話が、いよいよ「AIの画面の中で支払いまで終わる」段階に進んだ、という強い手応えです。日本のEC事業者にとっても、商品ページ単体での勝負から、AIインターフェースの中で拾われるかどうかの戦いに移ることを意味しており、影響は決して小さくありません。

何が発表されたのか──Universal CartとUCPの正体
今回Googleが打ち出したのは大きく三つです。一つ目は、複数の小売事業者にまたがって商品を入れられるUniversal Cart。買い物客は検索画面やGemini上で気に入った商品を一つのカートにまとめ、Google Payで数タップ決済するか、各小売のサイトに移って決済するかを選べます。重要なのは、決済代行はGoogleが担っても「販売主体」は常に小売側に残るという点で、ここはGoogleが明確に強調しています。
二つ目は、UCP連携広告です。ブランドがUCPに対応していれば、Search広告のDirect Offersや、YouTube上のDemand Gen広告に表示された商品をその場で買えるようになります。Google Payの中にはAffirmやKlarnaといったBNPL(後払い)も組み込まれ、広告→商品ページ→カート→決済という長い導線が、広告→決済の最短ルートに圧縮されます。
三つ目は、AI上での発見性を可視化する仕組みです。Merchant Centerに「AI performance insights」が追加され、自社ブランドがAI Modeなどでどれくらい表示されているかを、同業他社と比較して把握できるようになります。あわせて、商品説明文を会話的な検索クエリに合わせて書き換えるための「conversational attributes」と、AIアシスタント「Ask Advisor」もMerchant Centerに搭載されます。
日本市場では、Googleショッピングは楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングと並ぶ流入源に育っていますが、生成AI向けの商品データ整備に着手していない事業者が大半というのが実感です。今回の発表は、その整備が「やった方がいい」から「やらないと見つけてもらえない」フェーズに入る合図と受け取った方が良いと考えています。
日本市場・日本のEC事業者にとっての論点
国内では、楽天が国内最大規模のLLM「Rakuten AI 3.0」をEC領域に組み込み、Amazonも「Alexa for Shopping」をローンチするなど、AIエージェントが商品を推薦・購入する流れは並走で加速しています。Googleが小売連合とともにUCPという業界標準を握りに行ったのは、この主導権争いへの明確な動きと言えます。
日本企業にとっては、特定のエコシステムに乗るのではなく、複数のAIから等しく見つけてもらう共通仕様としてUCPを捉えるのが現実的です。商品名・型番・スペックが明確なカテゴリ、たとえば家電、PC周辺機器、サプリ、ペット用品、業務用消耗品などは、AI経由の比較・推薦に乗りやすく、Googleの新ツールが想定する「同業比較での自社の表示シェア」はこうした領域でまず効いてくると見ています。

今後の展望・初動アクション
UCP対応のチェックアウトは、当面アメリカ中心で、カナダとオーストラリア、その後イギリスへ広がる予定です。日本はまだロールアウト地域に入っていません。ただし、AI Modeの会話起点で買い物が完結する体験は、いずれ日本市場にも入ってくると考えるのが自然で、商品データを「AIに読まれる前提」で整え直しておくのが現時点で取れる最大の準備になります。
具体的な打ち手としてはまず、商品タイトル・説明文・属性データの再設計です。従来の楽天SEOやAmazon COSMO向けのキーワード詰め込みでは、AIに正しく要約・比較されません。用途・対象ユーザー・サイズ感・素材・代替候補との違いを、自然な日本語で書く必要があります。Googleが追加するconversational attributesの考え方は、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングの商品ページにも応用できます。
もう一つは、自社サイトでの一次情報の厚みです。AI Modeでの表示シェアを取るには、商品の使用シーン、開発の背景、競合との違いといった一次コンテンツを、商品ページとは別レイヤーで蓄積していく動きが、これから一段と価値を持ちます。
まとめ
GoogleのUniversal Cartと新UCP機能は、AI時代のECがどの方向に進むのかを最も明確に示した発表でした。日本のEC事業者がいま着手すべきことは、第一に商品データのAI最適化、第二に決済導線の点検、第三に自社サイトでの一次情報の蓄積、この三点に集約されます。日本市場でUCPが直接立ち上がる前から、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングでの売上にも跳ね返る投資なので、先延ばしせずに走り出すことをおすすめします。
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引用元: Google The Keyword
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。