Googleが、検索やGeminiをまたいで複数の店舗の商品を1つのカートにまとめられる「ユニバーサルカート」を発表しました。価格の追跡や在庫アラート、互換性の警告までをGeminiが担い、Google Payで一括決済までつなげる構想です。米国では2026年夏に検索とGeminiアプリで先行提供され、その後YouTubeとGmailへ広がります。日本のEC事業者にとっては、商品ページへの入口が「検索結果」から「AIが管理するカート」へと一段手前に移る変化として捉えておくべき動きです。

何が起きたか:買い物の「ハブ」をGoogleが握りにきた
Modern Retailによると、Googleが発表したユニバーサルカートは、複数の小売事業者の商品を横断して1つのカートに入れ、Google上で買い物を完結させることを狙った機能です。値下がりや価格履歴の提示、在庫が戻った際のアラート、パーツの互換性チェックと代替品の提案までをGeminiが処理し、Google Payでの一括決済、もしくは各店舗サイトへの遷移を選べます。
参加する小売事業者として、ナイキ、セフォラ、ターゲット、ウルタ・ビューティ、ウォルマート、ウェイフェア、そしてShopifyで販売するFentyやSteve Maddenなどの名前が挙がっています。Googleは購入額から手数料を取らず、店舗側が引き続き「販売者」であり続ける設計だとしています。技術的には、AIショッピングのオープン標準として公開された「Universal Commerce Protocol(UCP)」の上に構築されており、UCP対応の決済はカナダ、オーストラリア、後に英国へと広がる予定です。
Googleの消費者ショッピング製品担当ディレクターであるSuresh Ganapathyは、欲しい商品を見つけたあとも「本当にお得かを確かめるための調査に、さらに数ステップかかる」と述べ、その手間をカート側で吸収する狙いを語っています。
日本のEC事業者にとっての論点
この発表時点では日本での提供時期は明示されておらず、まずは米国先行です(日本展開の時期は要確認)。それでも、楽天市場やAmazon、Shopify、Yahoo!ショッピングで店舗を運営する側が今から見ておくべき論点が3つあります。
1つ目は、商品情報の構造化がそのまま「AIカートに拾われるかどうか」を左右する点です。価格・在庫・送料・互換性といった属性をGoogle Merchant Centerのフィードへ正確に流し込めている店舗ほど、AIが価格比較や在庫アラートに使いやすくなります。フィードが古い、在庫数が実在庫とずれている、といった店舗は、AIに「条件の悪い候補」として後ろへ回される懸念があります。
2つ目は、価格と送料の透明性です。ユニバーサルカートは価格履歴と値下がりを前面に出すため、実質価格(本体+送料+ポイント)で見たときの競争力が、これまで以上に可視化されます。楽天市場のように送料・ポイント込みで実質価格を組み立てている店舗は、AIに比較される前提でその設計を見直す価値があります。
3つ目は、自社サイトへの送客と決済の主導権です。UCPやGoogle Payでの一括決済が普及すると、購入の最後の一押しがGoogle側のカートで起きるようになり、顧客データやリピート導線を店舗が握りづらくなる可能性があります。Shopifyなど自社ECで顧客接点を持つ事業者は、AIカート経由の新規と、自社で囲い込むリピートを分けて設計する発想が要ります。
今すぐ着手したい初動アクション
第一に、Google Merchant Centerの商品フィードを棚卸しし、価格・在庫・GTIN・送料・配送日数の精度を上げることです。AI横断カートに拾われる前提では、フィードの鮮度が露出量に直結します。第二に、自社の主力商品について実質価格での競合比較を行い、送料無料ラインやポイント設計を「AIに比較される目線」で点検することです。第三に、AI経由で来た新規顧客をどうリピートにつなげるか、メールやLINEなど自社チャネルへの導線を改めて整理しておくことです。日本展開を待ってから動くのではなく、フィード整備と価格設計という、いずれにせよ効く土台づくりを先に進めておくのが現実的です。
まとめ
ユニバーサルカートは、商品との出会いから決済までをGoogleのAIが束ねる構想であり、店舗にとっては露出の前提が「検索順位」から「AIに選ばれる商品データ」へと移っていく兆しです。日本での提供時期は未定ですが、フィードの精度向上と実質価格の見直しは今日から着手でき、どのモールで戦う事業者にも効きます。AIが買い物のハブになる時代を見据え、自社の商品データと価格設計を整える初動を早めに踏み出しておきたいところです。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。