2026年のホリデー商戦では、ガソリン高による購買行動の変化、1時間配送の拡大、AI買い物アシスタントの普及が同時に進んでいます。
本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。ホリデー商戦のサプライチェーン動向とは、年末商戦に向けて在庫、配送、返品といった物流面で何が変わっているかを指す言葉です。米国の小売専門メディアが2026年10月12日に整理した論点から、日本のEC事業者が年末商戦の準備で押さえておきたい点を読み解きます。
米国のホリデー商戦で何が起きているか
Modern Retailは、2026年10月12日付のサプライチェーン特集で、消費者心理が過去最低水準に近い一方で支出は堅調だと伝えています。多くの小売業者はすでにホリデー用の在庫を受け取っており、焦点は在庫の確保から、どう届けどう売るかへ移っているというのが同記事の見立てです。
数字で見ると、PwCの調査ではホリデーギフトへの平均支出予定額は708ドルで、前年の721ドルから2%減りました。一方で、ICSCの調査では回答者の93%がホリデーシーズンに店舗を訪れる予定だとしています。節約志向は強いものの、買い物そのものは続くという構図です。なお、PwCの数字は同記事内のリンク先が別のガソリン価格記事になっており、一次資料での確認は要確認です。
背景にはガソリン価格の上昇があります。同記事は、イラン戦争の開始以降にガソリン価格が上がり、パイプラインの被害などで数日単位で変動しうると指摘しています。その結果、消費者が買い物の回数をまとめたり、通常より多くオンラインで購入したりする可能性があるというのが筆者の見方です。
配送とAIアシスタントの競争が激しくなっている
同記事が挙げる2つ目の変化が、配送の速さとAIによる買い物支援です。Walmartは感謝祭前に全米で、1時間の速達配送サービスを始めると紹介されています。CostcoはDoorDashおよびUber Eatsとの提携を発表し、DoorDashもMacy’s、Anthropologie、Vansなどの新しい小売パートナーを加えました。
AIアシスタントも出そろっています。Instacartは9月にClementineを発表し、同じ日にShiptが「Ask Shipt」を公開しました。DoorDashはテキストメッセージで使える買い物アシスタントを展開し、WalmartはSparkyを1年強運用しています。筆者は、これらが決算説明会で売上の主要因として語られるかに注目すると書いており、現時点で売上への貢献が示されたわけではありません。
3つ目は返品です。DoorDashは返品サービスをパイロットとして発表しており、返品予約には7.99ドルの手数料がかかり、配達員が最短30分で自宅へ集荷に来ます。同記事は、ホリデー期の返品が商品の約17%に上るとしています。この17%は2025年版の小売返品レポートに基づく数字で、全体の開始時期の記述にも一部あいまいな点があるため、詳細は要確認です。
日本のEC事業者にとっての論点
日本の楽天市場やAmazon.co.jp、Shopify、Yahoo!ショッピングの店舗運営者にとって、米国の動きがそのまま当てはまるわけではありません。ただ、年末商戦に向けた考え方のヒントは3つあります。
ひとつは、節約志向でも買い物は続くという前提で、客単価を無理に上げるよりも、まとめ買いや送料条件に合わせたセット提案を整える発想です。米国でもAmazonの秋のセールでは、バンドル商品への反応が良かったと同記事が伝えています。2つ目は、配送の速さが比較の軸になる前提で、自店の出荷リードタイムと、遅延時の案内文をあらかじめ見直しておくことです。3つ目は、返品が増える時期に備え、返品条件の表記と問い合わせへの返信テンプレートを整えることです。
AIアシスタントについては、日本の主要モールで同じ形のサービスがすぐ広がるとは限りません。それでも、商品ページの情報が整理されていれば、AIが商品を説明したり比較したりする場面で選ばれやすくなります。サイズ、素材、配送条件、返品条件といった基本情報を、文章と構造化された項目の両方で揃えておくことが、現実的な備えになります。
今後の動き
注目点は3つあります。まず、各社の決算説明会でAIアシスタントが売上にどれだけ寄与したと語られるかです。次に、ガソリン価格の変動が、オンライン購入の比率や配送コストにどう響くかです。最後に、DoorDashのような返品の集荷サービスが、ホリデー後の返品負担をどこまで下げるかです。いずれも現時点で確定した結果はなく、年末商戦が進むなかで見えてくる部分が大きいといえます。
まとめ
2026年のホリデー商戦では、支出予定額の2%減という節約志向のなかで、1時間配送、AI買い物アシスタント、返品集荷という3つの競争軸が同時に動いています。日本のEC事業者は、米国の施策をまねるより、セット提案、出荷リードタイムの見直し、返品対応の整備、商品情報の整理という、すぐ着手できる備えから始めるのが現実的です。
参考文献
- Modern Retail: Supply chain stories to watch this holiday season
- Chain Store Age: ICSC、ほぼ全ての買い物客がホリデーに店舗を訪れる予定
- Walmart: 速達配送サービスの案内
- DoorDash: 返品サービスに関する発表
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。