ChatGPTを運営するOpenAIが、ついに広告表示のテストを開始すると発表しました。週8億人以上のユーザーを抱える巨大プラットフォームに広告が入ることで、EC事業者のマーケティング戦略は大きな転換点を迎えることになります。
この発表の背景には何があるのか、そして日本のEC事業者はどのように対応すべきなのか、具体的に見ていきましょう。
OpenAIが広告導入に踏み切った理由
OpenAIは2026年1月16日、ChatGPTの無料版と新設された低価格プラン「ChatGPT Go」に広告を表示するテストを開始すると公式ブログで発表しました。
なぜ今、広告なのでしょうか。背景にあるのは、同社の収益構造です。ChatGPTは5億人を超えるユーザーを抱えながら、その大半が無料ユーザーであり、いまだ黒字化を達成していません。サブスクリプション事業は順調とはいえ、AIの開発・運用に必要な莫大なインフラコストを賄うには、新たな収益源が必要だったのです。
広告の表示形式は、ChatGPTの回答テキストの「下部」に限定されます。重要なのは、OpenAIが明確に線引きをした点です。回答内容そのものには広告が影響しないこと、ユーザーの会話データが広告主に販売されることはないこと、そして健康・メンタルヘルス・政治など機微なトピックでは広告が表示されないことが約束されています。
料金プランの整理も同時に行われました。月額約1,500円のChatGPT Goが日本でも提供開始となり、無料版とGo版には広告が入ります。一方で、Plus(月額約3,000円)やPro(月額約30,000円)といった上位プランでは広告なしで利用できます。ユーザーに「選択の余地」を残した形です。
EC事業者にとっての3つのインパクト
この発表が日本のEC事業者にもたらす影響は、単なる「新しい広告枠の登場」にとどまりません。
まず、購買行動の起点が変わる可能性があります。従来、消費者は「Google検索→ECサイト→購入」という流れで買い物をしてきました。しかし、ChatGPTに代表されるAIアシスタントが普及するにつれ、「ChatGPTに相談→おすすめされた商品を購入」という新しい導線が生まれつつあります。2025年にはOpenAIがショッピング機能を実装し、AIとの対話から直接商品ページに遷移できるようになりました。広告導入は、この流れをさらに加速させるでしょう。
次に、広告の「質」が問われる時代になります。ChatGPTの広告は、ユーザーが能動的に課題解決を求めている瞬間に表示されます。SNS広告のような「割り込み型」ではなく、検索連動型広告に近い性質を持っています。たとえば、「メキシコ料理のレシピ」を聞いたユーザーにホットソースの広告が表示されるといった具合です。購買意欲の高いユーザーにリーチできる反面、文脈にそぐわない広告は逆効果になりかねません。
そして、AEO(AI Engine Optimization)という新しい概念への対応が求められます。従来のSEO(検索エンジン最適化)に加えて、AIが商品を「選びやすい」状態を整える必要が出てきています。構造化データの整備、レビューの充実、商品情報の正確性といった要素が、AI時代のEC競争力を左右することになります。
日本のEC事業者が今から準備すべきこと
テスト段階は米国のみですが、日本への展開も時間の問題と考えられます。先行して準備を進めておくことで、競合に差をつけることができます。
商品データの整備から始めましょう。AIは構造化データやメタ情報を解析して商品を評価します。楽天やYahoo!ショッピング、Shopifyなどの各プラットフォームで、商品名・説明文・スペック情報が正確かつ詳細に入力されているか確認してください。特に、AIが理解しやすい形式で情報を整理することが重要です。
レビュー施策の強化も欠かせません。OpenAIのショッピング機能では、レビュー数と評価が商品表示の上位要因になっていることが報告されています。正当な方法でレビューを集める仕組み、たとえば購入後のフォローメールや、レビュー投稿特典などを見直してみてください。
さらに、Google Analyticsなどの分析ツールで、ChatGPT経由のアクセスを計測できる状態にしておくことをお勧めします。ChatGPTのショッピング機能からの流入にはクエリパラメータが設定されているため、現時点でのAI経由売上の規模感を把握しておくことで、今後の投資判断に役立ちます。
まとめ:「AIに選ばれる」時代への備えを
ChatGPTへの広告導入は、AIが社会インフラとして定着した証です。これを「ノイズが増えた」と嘆くか、「新しい顧客接点が生まれた」と捉えるかで、今後のEC戦略は大きく変わってきます。
週8億人のユーザーを抱えるプラットフォームに、検索連動型の広告が入る。この事実だけでも、マーケティング担当者としては無視できない動きです。テストの結果次第では本格展開が加速する可能性もあり、今のうちから情報収集と準備を進めておくことをお勧めします。
AI時代のEC競争は、「人に選ばれる」だけでなく「AIに選ばれる」ことも重要になってきました。商品データの整備やレビュー施策の見直しは、広告対策としてだけでなく、AI検索時代全体への備えとして有効です。今日からできることから、一歩ずつ始めていきましょう。
引用:cbsnews

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ)
株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長
Experience|実務経験
2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を
4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、
“売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。
Expertise|専門性
技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、
AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp
Authoritativeness|権威性
自社運営メディア
「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。
運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセル。
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東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて
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