投稿者 齋藤竹紘投稿日: 2025年7月22日2025年7月22日カテゴリー ChatGPT

2025年7月、OpenAIが驚くべき数字を発表しました。ChatGPTには世界中から1日あたり25億回ものプロンプト（質問や指示）が送信されているというのです。アメリカだけでも3億3000万回。わずか8ヶ月前の2024年12月には「1日10億回」と発表されていたことを考えると、その成長スピードは驚異的です。

この数字が意味することは何でしょうか。そして、日本のEC事業者にとって、この変化はどのような意味を持つのでしょうか。今回は、ChatGPTの爆発的な普及が示す新たなビジネスチャンスと、EC事業者が今すぐ取るべきアクションについて考察します。

25億回が示す「AI利用の日常化」

Googleに迫る利用頻度

興味深いのは、Googleとの比較です。Googleの検索回数は1日あたり約140億回（年間5兆回）と推定されています。ChatGPTの25億回は、Googleの約18%に相当します。まだ差はありますが、ChatGPTが登場してわずか2年半でこの数字に到達したことを考えると、その浸透速度は驚異的です。

しかも、ChatGPTとGoogle検索では使い方が根本的に異なります。Google検索は「情報を探す」ツールですが、ChatGPTは「作業を手伝ってもらう」ツールです。つまり、25億回のプロンプトの多くは、文章作成、分析、アイデア出しなど、実際の業務に直結する使われ方をしているのです。

日本でも確実に進む「AI活用の波」

アメリカの3億3000万回という数字から推計すると、日本でも毎日数千万回のプロンプトが送信されていると考えられます。実際、私たちの周りでも「ChatGPTで調べた」「AIに聞いてみた」という会話が日常的に聞かれるようになりました。

特に注目すべきは、8ヶ月で2.5倍という成長率です。このペースが続けば、1年後には50億回、2年後には100億回に達する可能性もあります。つまり、AI活用は「一部の先進的な人だけのもの」から「誰もが使う当たり前のツール」へと急速に変化しているのです。

EC事業者にとっての意味

消費者の情報収集方法が変わる

これまで消費者は、商品を探す際にGoogleやAmazon、楽天で検索していました。しかし今後は、ChatGPTに「30代女性の誕生日プレゼントで5000円以内のおすすめは？」と聞く人が増えてくるでしょう。

実際、ChatGPTは商品の特徴を比較し、用途に応じた推奨を行い、購入時の注意点まで教えてくれます。つまり、ChatGPTは新たな「商品発見チャネル」になりつつあるのです。

競合他社もAIを活用し始めている

25億回のプロンプトの中には、確実にあなたの競合他社からの質問も含まれています。商品説明文の作成、マーケティング戦略の立案、顧客対応の効率化など、様々な場面でAIを活用している可能性が高いです。

もしあなたがまだAIを活用していないなら、すでに大きな差をつけられているかもしれません。逆に言えば、今から始めても遅くはありません。多くの企業がまだ試行錯誤の段階にある今こそ、本格的に活用を始めるチャンスです。

AIネイティブな顧客層の出現

特に若い世代では、ChatGPTを使うことが当たり前になっています。彼らは商品について質問する際も、より詳細で、より個別化された回答を期待します。「このブランドの商品はChatGPTでどう評価されているか」を気にする消費者も出てくるでしょう。

EC事業者は、このようなAIネイティブな顧客層に対応できる準備が必要です。商品データの構造化、詳細な商品情報の整備、AIが理解しやすい形での情報提供などが重要になってきます。

EC事業者が今すぐ始めるべきAI活用

1. 商品データの「AI最適化」

ChatGPTが商品を推奨する際、参照するのはインターネット上の情報です。あなたの商品がAIに正しく理解され、適切に推奨されるためには、以下の対策が必要です：

構造化データの実装

• 商品名、価格、特徴を明確に記載
• Schema.orgマークアップの活用
• 商品カテゴリーの適切な設定

詳細な商品説明

• 誰のための商品か（ターゲット）
• どんな問題を解決するか（ベネフィット）
• 他の商品との違い（差別化ポイント）

使用シーンの明記

• いつ使うのか
• どのように使うのか
• どんな効果があるのか

2. ChatGPTを使った業務効率化

25億回のプロンプトの多くは、業務効率化に使われています。EC事業者として以下の活用を始めましょう：

商品説明文の作成

プロンプト例：
「以下の商品特徴を基に、30代女性向けの魅力的な商品説明文を400文字で作成してください。
商品：オーガニックハンドクリーム
特徴：シアバター配合、無香料、敏感肌対応
強調ポイント：べたつかない、オフィスでも使える」

メールマーケティング

プロンプト例：
「夏のセールを告知するメルマガを作成してください。
対象：リピーター顧客
トーン：親しみやすく、お得感を演出
含める要素：期間限定、会員特典、人気商品紹介」

FAQ作成

プロンプト例：
「ハンドメイドアクセサリーのECサイト用FAQを10個作成してください。
よくある質問：サイズ、お手入れ方法、ギフト対応、返品について」

3. AIを活用した新サービスの開発

単に既存業務を効率化するだけでなく、AIを活用した新しい顧客体験を提供することも重要です：

AIチャットボットの導入 24時間365日、顧客の質問に即座に回答。ChatGPTのAPIを活用すれば、自然な会話が可能です。

パーソナライズドレコメンド 顧客の購買履歴と対話履歴を分析し、AIが最適な商品を提案。

バーチャルスタイリスト ファッションECなら、顧客の好みや体型に合わせたコーディネート提案。

4. 社内のAIリテラシー向上

25億回という数字は、世界中の人々がAIを使いこなし始めていることを示しています。EC事業者も遅れを取らないよう、組織全体でAIリテラシーを高める必要があります：

定期的な勉強会の開催

• ChatGPTの基本的な使い方
• プロンプトエンジニアリングの基礎
• EC業務での活用事例共有

実践的なワークショップ

• 実際の業務でAIを使ってみる
• 成功事例と失敗事例の共有
• 改善点の議論

KPIの設定

• AI活用による時間削減率
• 業務効率の向上度
• 新規施策の実施数

未来への備え：次の25億回に向けて

AIがもたらすEC業界の変化

ChatGPTの利用が今のペースで増え続ければ、2026年には1日50億回、2027年には100億回に達する可能性があります。その時、EC業界はどう変わっているでしょうか：

1. AI駆動型のショッピング体験 消費者はAIアシスタントと対話しながら商品を選ぶのが当たり前に。

2. 超パーソナライゼーション 個々の顧客の好み、予算、ライフスタイルに完全に最適化された提案。

3. 予測型在庫管理 AIが需要を予測し、在庫を自動最適化。

4. 感情認識マーケティング 顧客の感情状態に応じたマーケティングメッセージの自動調整。

今から準備すべきこと

データ基盤の整備 AIは良質なデータがあってこそ力を発揮します。顧客データ、商品データ、取引データを整理し、活用できる状態にしておきましょう。

API連携の準備 ChatGPTをはじめとするAIサービスとの連携を見据え、システムのAPI対応を進めましょう。

実験的な取り組み 小さくても良いので、AIを使った新しい取り組みを始めてみましょう。失敗を恐れず、学習を重ねることが重要です。

まとめ：25億回が示す新時代への招待状

ChatGPTへの1日25億回のプロンプト。この数字は、私たちが新しい時代の入り口に立っていることを示しています。AI活用が「特別なこと」から「日常」へと変わる、その転換点に私たちはいるのです。

EC事業者にとって、これは脅威であると同時に、大きなチャンスでもあります。AIを味方につけることで、業務効率を劇的に改善し、顧客に新しい価値を提供し、競合との差別化を図ることができます。

重要なのは、今すぐ始めることです。完璧を求める必要はありません。まずはChatGPTで商品説明文を1つ作ってみる。メールの返信を効率化してみる。そんな小さな一歩から始めてみてください。

25億回のプロンプトの中に、あなたのビジネスを変える1回を加えてみませんか。AI時代のEC成功への扉は、もうすでに開かれています。

引用：techcrunch.com