米控訴裁がAIエージェントのAmazon利用差止を取り消しました。
米国の連邦控訴裁判所が2026年8月4日、AI購買エージェントによるAmazonサイトの利用を禁じていた仮差止命令を取り消しました。AIエージェントが利用者に代わってオンラインプラットフォームへアクセスする行為が適法かどうかについて、米国の連邦控訴審が判断を示したのはこれが初めてです。モール側の規約と、利用者が選んだAIの権利が正面からぶつかった最初の司法判断であり、日本のEC事業者にとっても他人事ではありません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

何が起きたか、争点は「誰がアクセスしたのか」の一点
結論から言うと、勝敗を分けたのは「Amazonにアクセスしたのは誰か」という帰属の問題でした。The Decoderによると、サンフランシスコの米第9巡回区連邦控訴裁判所は、Amazonが連邦のコンピュータ不正利用法違反を主張しても勝訴の見込みは低いと判断しました。この法律は許可なくコンピュータにアクセスして情報を得る行為を禁じていますが、控訴裁は、エージェントを通じてAmazonにアクセスしたのは利用者本人であってPerplexityという会社ではない、と結論づけています。
経緯は9か月前にさかのぼります。Amazonは2025年11月にPerplexityを提訴しました。同社のブラウザCometに組み込まれたAIエージェントが、利用者のAmazonアカウントにログインして注文まで代行している点をとらえ、セキュリティ上のリスクがあり、繰り返しの停止要求にも応じなかったと主張したものです。Perplexity側は訴えを根拠のないものだと反論し、AIエージェントには「Amazonが利用者に浴びせる広告を見る目玉がない」ため、顧客をCometから遠ざけたいだけの動きだと述べています。
2026年3月には、カリフォルニア州の連邦地裁がいったんPerplexity側を止めました。担当したMaxine Chesneyは、Perplexityが利用者の許可は得ていたもののAmazonの承認なしにパスワード保護されたアカウントへアクセスしたとする「強い証拠」があると認定し、Amazonのデータの複製削除まで命じています。今回の決定でこの仮差止は失効しましたが、訴訟そのものが終わったわけではありません。Amazonは「本日の仮差止に関する決定には敬意をもって同意しかねます」と述べ、次の手を検討していると説明しています(PYMNTS)。再審理の申立てや連邦最高裁への上訴という選択肢が残り、本案はサンフランシスコの連邦地裁で続きます。なお、両媒体はいずれもロイターの2026年8月4日付報道を情報源としています。
背景として押さえておきたいのは、両社が敵対関係だけではないことです。PerplexityはAWSの顧客で数億ドル規模のコミットメントを持ち、Jeff BezosはPerplexityの投資家の一人でもあります。Amazonは第三者のAIに対して、透明に動作し既定のAPIを尊重するよう求め、自社のBuy For MeやRufusを引き合いに出しました。これに対しPerplexityの最高経営責任者Aravind Srinivasは「いじめ」だと反発し、利用者の代理として動くエージェントには人間の利用者と同じ権利があるべきだと主張しています。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
一つめは、これが米国法の判断にすぎないという冷静な線引きです。日本には不正アクセス行為の禁止等に関する法律がありますが、米国のコンピュータ不正利用法とは条文の作りが異なり、今回の判断が日本の裁判所を拘束することはありません。日本国内でエージェント経由の自動ログインについて公的な判断が示された事例は、本記事執筆時点では確認できていません(要確認)。「日本でも解禁された」と読むのは誤りですから、社内共有の際はここを最初に押さえてください。
二つめは、法的な決着を待たずに実務の前提が動くという点です。モール側が第三者のエージェントを法的に締め出しにくいとなれば、利用者が自分の意思で連れてくるエージェントは無視できない流入経路になります。厄介なのは計測で、エージェント経由の注文はユーザーエージェントや参照元から見分けにくく、放置すると転換率も広告のCPAも実態からずれていきます。AI経由の流入をチャネルとして切り出す考え方はAI経由注文の成長とチャネル戦略で整理していますので、計測設計を見直す起点にしてください。
三つめは、広告収益モデルへの影響です。Perplexityの「エージェントには広告を見る目玉がない」という主張は挑発的ですが、指摘そのものは的を射ています。Amazonのスポンサープロダクトも楽天市場のRPPも、人間が検索結果を眺めて回遊することを前提に設計された課金の仕組みです。購買の判断が人間の閲覧の外で完結する割合が増えれば、同じ入札額で得られる成果は目減りします。この構造変化はゼロクリックコマース対策で扱った論点と地続きで、今回の司法判断はその流れを法的に後押しした形になります。
今後の展望と初動アクション
まず、自社ECを持つ事業者は自分でルールを決められる立場にあることを再確認してください。ShopifyやBASEなど自社ドメインの店舗であれば、利用規約でエージェント経由の注文をどう扱うか、レート制限やボット対策をどこまで効かせるかを自社で設計できます。締め出すか歓迎するかを決めないまま放置するのが一番まずい選択です。
次に、商品情報の機械可読性を上げる作業は、今回の決定でさらに優先度が上がりました。価格、在庫、送料、配送日、返品条件が構造化データとして読み取れるかどうかで、エージェントが候補に載せてくれるかが変わります。具体的な点検項目はAIエージェント向け商品ページのスキーマ点検リストにまとめてあります。
三つめは受注と決済の守りです。エージェントが利用者のアカウントにログインして注文する形が広がると、本人確認や不正検知のロジックが人間の操作を前提にしたままでは誤検知と見逃しの両方が増えます。想定される失敗パターンはエージェント決済とフィード鮮度、注文失敗対策で先に確認しておくと手戻りが減ります。
最後に、モールに出店している事業者ができることは限られます。楽天市場やYahoo!ショッピングが第三者エージェントの自動ログインについて明示的なルールを公表しているかは、本記事執筆時点では確認できていません(要確認)。少なくとも当面は、モール側の発表を待ちつつ、自社ECと会員基盤という自分で握れる領域に投資を寄せる判断が現実的です。Amazonが自社のBuy For MeとRufusを引き合いに出したことからも分かるとおり、モールは自前のエージェントを推し、他社のエージェントには慎重という基本姿勢を崩していません。
まとめ
米第9巡回区連邦控訴裁は2026年8月4日、AI購買エージェントのAmazon利用を禁じた仮差止を取り消し、アクセスの主体は利用者であるとの判断を示しました。日本法には直接及びませんが、エージェント経由の購買が現実の流入経路として定着する流れは加速します。日本のEC事業者は、計測でエージェント経由を切り分け、商品データを機械可読にし、自社ECの規約と不正対策を先に整えるという順序で備えるのが妥当です。
参考文献
- The Decoder|US appeals court allows Perplexity’s AI shopping agent back on Amazon
- PYMNTS|Appeals Court Overturns Ban on Perplexity AI Shopping Agents on Amazon
- Amazon公式声明|Amazon’s statement on Perplexity’s Comet(2025年11月)
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。