2025年8月、SEO業界に衝撃が走りました。月間アクティブユーザー1000万人を突破し、前月比40%という驚異的な成長を見せているAI検索エンジン「Perplexity(パープレキシティ)」が、あえてSEO対策を一切していないことが判明したのです。
LinkedInでは「Perplexityのプログラマティック SEOは天才的だ!」「大胆で賢い戦略」といった称賛の声が相次いでいました。しかし、Search Engine Journalの調査により、真実はまったく逆だったのです。
Perplexityとは、ChatGPTのような対話型AIを使って、質問に直接答えを返してくれる新しいタイプの検索サービスです。従来のGoogleのように「リンクの一覧」を表示するのではなく、「あなたの質問への回答」を直接生成してくれます。そんなPerplexityが、なぜSEO対策をしないのでしょうか。
Perplexityの「Discover Pages」に隠された戦略
すべてのページが同じタイトルという異常事態
PerplexityのDiscover Pagesは、毎日のトレンドニュースをAIが自動的にまとめるコンテンツです。SEO専門家たちは、これらのページがGoogle検索で上位表示されているのを見て「素晴らしいSEO戦略だ」と絶賛していました。
しかし、実際にソースコードを確認すると驚くべき事実が判明します。すべてのページが以下の同一コードを使用していたのです。
- タイトルタグ:「Perplexity」(全ページ同じ)
- メタディスクリプション:「Perplexity is a free AI-powered answer engine…」(全ページ同じ)
- カノニカルタグ:トップページを指定(全ページ同じ)
SEOの基本中の基本は「各ページに固有のタイトルと説明文を設定すること」です。これを完全に無視しているのは、意図的としか考えられません。
実際にGoogle検索で調べてみると…
記事の筆者がPerplexityのDiscover Pagesを実際にGoogle検索で調べたところ、テストしたすべてのページが検索結果に表示されませんでした。つまり、Perplexityは最初からGoogleでの上位表示など狙っていなかったのです。
なぜPerplexityはGoogleを無視するのか
「検索エンジン」から「回答エンジン」へのパラダイムシフト
従来の検索体験を思い出してください。Google検索→青いリンクをクリック→サイトを開く→情報を探す→戻って別のサイトへ…この繰り返しです。平均的なユーザーは、1つの疑問を解決するために3〜5個のサイトを訪問します。
Perplexityが提供するのは全く異なる体験です。質問を入力→即座に回答が生成→疑問があれば追加質問→さらに詳しい回答。まるで知識豊富な友人と会話しているような体験を提供します。
Googleの土俵で戦わない戦略
Perplexityの共同創業者は元OpenAIの研究者で、AI技術の最前線にいる人物です。彼らは最初から「Googleとは違う道」を選択しました。
Google検索からの流入に依存すると、結局Googleのルールに従わざるを得ません。アルゴリズムの変更で順位が下がれば、ビジネスが崩壊するリスクもあります。実際、多くのメディアサイトがGoogleのアップデートで大打撃を受けてきました。
Perplexityは、そんな「Googleへの依存」を最初から拒否したのです。
ユーザーが直接訪れる「目的地」を作る
毎日更新される「AIニュースポータル」
PerplexityのDiscover機能は、単なる検索結果ではありません。毎日更新される「今日のニュース」「トレンドトピック」「話題の出来事」がAIによって整理され、要約されて提示されます。
これは、ユーザーに「毎日Perplexityをチェックする習慣」を作らせる戦略です。朝起きたらTwitterを見る、通勤中にYahoo!ニュースを読む、そんな習慣の中に「Perplexityで今日の話題をチェック」を組み込もうとしているのです。
検索広告に依存しないビジネスモデル
Googleの収益の約80%は検索広告です。一方、Perplexityは月額20ドルのサブスクリプションモデルを採用しています。広告を表示しない代わりに、より精度の高い回答、より詳細な情報源の提示、無制限の質問回数などを提供します。
この違いは重要です。Googleは広告主のために検索結果を最適化する必要がありますが、Perplexityは純粋にユーザー体験だけを追求できるのです。
次世代検索の覇権争いが始まった
Microsoft、Google、そしてPerplexity
2025年現在、検索市場は大きな転換点を迎えています。
- Microsoft:Bing + ChatGPTの統合で攻勢
- Google:SGE(Search Generative Experience)で対抗
- Perplexity:独立系として急成長
この中で、Perplexityだけが「既存の検索エンジンのルールを無視する」という大胆な戦略を取っています。SEOという20年以上続いてきたゲームのルールを、根本から書き換えようとしているのです。
信頼できる情報源を重視する新しい評価軸
Perplexityは独自の「信頼できる情報源リスト」を内部で管理しています。学術論文、公式ニュースサイト、専門メディアなどが優遇される一方で、SEO目的で作られたコンテンツファームは無視されます。
興味深いのは、RedditやQuoraなどのコミュニティサイトも重視されている点です。実際のユーザーの生の声、体験談、議論が「信頼できる情報」として評価されているのです。
これからのWeb戦略はどう変わるのか
SEOの終焉?それとも進化?
「SEOは死んだ」という声も聞こえてきます。しかし、より正確には「SEOだけでは不十分になった」と言うべきでしょう。
これからのWeb戦略で重要になるのは:
- 直接的なブランド認知:ユーザーが直接サイト名を入力して訪問
- コミュニティでの評判:Reddit、Twitter、専門フォーラムでの言及
- 本質的な価値提供:SEO目的ではない、純粋に役立つコンテンツ
AI時代の新しい可視性戦略
Perplexityの成功は、一つの重要な教訓を示しています。「検索エンジンに最適化する」のではなく「ユーザーに直接価値を届ける」ことの重要性です。
企業やメディアは、以下の戦略転換を迫られています:
- 複数のAIプラットフォームへの対応(Google、Bing、Perplexity、ChatGPT)
- 構造化データとFAQ形式での情報整理
- 動画、音声、テキストのマルチフォーマット展開
- コミュニティでの自然な言及を増やす活動
まとめ:Googleの次の時代が始まった
PerplexityがSEO対策をしない理由は明確です。Googleの次の時代を作ろうとしているからです。
20年以上続いたGoogle検索の時代。その間、私たちはSEOというルールに従ってコンテンツを作り、リンクを集め、キーワードを最適化してきました。しかし、AI時代の到来により、そのゲームのルールが根本から変わろうとしています。
Perplexityの月間1000万ユーザーという数字は、まだGoogleの1日のユーザー数にも及びません。しかし、前月比40%という成長率が続けば、状況は急速に変わるかもしれません。
最も興味深いのは、PerplexityがSEOを無視することで、逆に「SEOの限界」を浮き彫りにした点です。私たちは長年、Googleのアルゴリズムに最適化することに必死でした。しかし、本当に大切なのは「ユーザーに価値を提供すること」だったのかもしれません。
次の10年、検索はどう進化するのか。その答えは、もうすでに始まっています。
