楽天市場で「商品画像 AI」と聞くと、まずRMS AIアシスタントの画像加工機能を思い浮かべる方が多いでしょう。確かに無料で使える公式ツールとして便利ですが、正直なところ、RMSのAI画像生成だけで商品ページの画像を完結させるのは難しいのが現実です。
なぜなら、楽天自身がA/Bテストで「AIで背景を合成した画像は、売上ベースでは必ずしも優位ではなかった」と認めているからです。
本記事では、RMS公式AIの「使える部分」と「足りない部分」を明確にした上で、ChatGPTの画像生成やPhotoshopの生成AI、背景除去ツールなど外部AIを楽天の商品画像にどう組み合わせるかを、ガイドライン対応の具体的な注意点まで含めて解説します。RMSの使い方だけで終わる記事とは、少し違う内容になっているはずです。
「AI画像で売上は上がるのか」─楽天のA/Bテストが示した意外な答え
商品画像をAIで作る話に入る前に、EC事業者として最も気になる問いに向き合っておきます。「AIで作った画像で、本当に売上は上がるのか?」という問いです。
楽天の開発チームは、RMS AIアシスタントで生成した「美しい背景付き画像」をA/Bテストにかけています。その結果、売上面では必ずしも従来の画像より優位に立たなかったそうです。リリース後の利用データを見ても、当初想定していたほどの利用率は得られず、他のAI機能と比べて使用頻度が低いことが課題になっていました。
では店舗側は何を求めていたのか。それは「白背景画像を作る機能がほしい」というシンプルな要望でした。おしゃれな背景合成ではなく、商品を切り抜いて白背景に置くだけの加工です。楽天がこのフィードバックを受けて白背景オプションを追加したところ、画像生成機能全体の利用率がようやく向上したという経緯があります。
ここから読み取れる教訓は明確です。AI画像生成の価値は「見栄えを良くすること」ではなく「画像制作の工数とコストを下げること」にあります。華やかな合成画像を作ること自体が目的ではなく、撮影・切り抜き・背景処理といった面倒な作業をAIで省力化し、浮いたリソースを商品企画や販促に振り向ける。これがAI画像活用の正しい考え方です。
RMS AIアシスタントの画像機能──できることと、できないこと
30秒でわかるRMS画像AIの実力
RMSの「商品画像加工支援AI」は、商品画像をアップロードして背景テーマを選ぶと、約30秒で4パターンの画像を生成してくれる無料ツールです。背景テーマは全7種類あり、設置場所系(テーブル・キッチン・アウトドア・リビング)と背景系(白背景・木目・ギフト)に分かれています。
追加費用なし、生成回数の制限なし、何度でも再生成可能。楽天に出店している全店舗が使えます。操作もRMSの「店舗設定」→「画像・動画登録」→「画像をAIで加工」と進むだけなので、導入のハードルはほぼゼロです。
ここが限界:RMS AIだけでは足りない3つの理由
1. 出力が1024×1024固定で、用途が限られる
生成画像は正方形の1024×1024ピクセル固定です。楽天の推奨サイズ(700×700以上)はクリアしていますが、高解像度が必要なバナーや、縦長・横長のSNS用画像には対応できません。
2. 商品ジャンルによる仕上がりの差が大きい
インテリアや雑貨は比較的自然な仕上がりになりますが、食品は背景との馴染みが不自然になりがちです。実際に試したことがある方なら「いかにも合成しました、という感じが消えない」という感想を持った方も多いのではないでしょうか。商品が1点のみ・全体が写っている・余白が十分にある画像でないと綺麗に生成されないという制約もあります。
3. 「商品を売る画像」を作る設計になっていない
RMS AIはあくまで「背景を合成する」ツールです。商品の魅力を引き出す構図やライティングの最適化、テキストの配置といった「売れるサムネイルを作る」機能は含まれていません。背景を変えただけで転換率が劇的に上がるわけではない、というA/Bテストの結果がそれを裏付けています。
RMSの外で使うべきAIツール──楽天の商品画像に本当に効くのはこれ
ここからが本題です。RMS AIでカバーしきれない部分を、どの外部AIツールで補うか。用途別に、実務で使えるものだけを厳選して紹介します。
用途1:白抜き・背景除去を大量処理したい
楽天のガイドラインでは第1商品画像の背景は「白」か「写真背景」が基本です。商品数が多い店舗にとって、白抜き作業の自動化は最も費用対効果が高いAI活用です。
remove.bgは無料プランでも使える背景除去ツールで、高解像度の出力には有料プラン(月額約1,500円〜)が必要です。APIも提供されており、自社の商品管理システムと連携させて自動処理する使い方も可能です。数百点規模の商品登録がある店舗では、RMS AIの白背景機能よりもこうした専用ツールのほうが効率的です。
Photoshopの「被写体を選択」+生成AIを使えば、切り抜きの精度をさらに高められます。髪の毛や透明素材など複雑な輪郭の商品でも、Photoshopの選択精度は他のツールを上回ります。すでにAdobe CCを契約している店舗なら追加コストなしで使える点も見逃せません。
ChatGPTの画像編集機能でも、商品写真をアップロードして「背景を白にして」と指示するだけで白抜き処理ができます。精度はPhotoshopに一歩譲りますが、手軽さでは最も優れています。
用途2:利用シーンのイメージ画像を作りたい
2枚目以降のサブ画像や、楽天ROOM・SNS用の画像として「商品が実際に使われている場面」を見せたい場合、外部の画像生成AIが力を発揮します。
ChatGPTの画像生成機能(GPT Image) は、商品の白背景写真をアップロードして「このソファをナチュラルテイストのリビングに配置して」と指示するだけで、ロケ撮影のような画像を生成できます。月額約3,000円のChatGPT Plusで利用可能です。RMS AIと比較して背景のバリエーションが無限である点と、プロンプトで細かくコントロールできる点が大きな違いです。
Adobe Photoshopの生成AI(生成塗りつぶし) は、既存の商品写真の一部を選択して背景だけをAIで差し替えるという使い方ができます。Photoshopを普段から使っている店舗なら、追加の学習コストなく導入できるのが利点です。
Midjourneyは画像のクオリティが非常に高い一方、商品写真をベースにした合成が得意ではなく、「ゼロからイメージ画像を作る」用途向きです。ブランドの世界観を伝えるビジュアル素材やバナー背景の制作に適しています。月額約1,500円から。
用途3:商品バリエーション画像の量産
カラーバリエーションやサイズ違いの画像を一点一点撮影するのは大きなコストです。EC特化型の画像生成サービスとしてFotographer.aiやStudio Globalなども登場しており、商品の元画像1枚から異なるアングルや異なる背景の画像を複数パターン生成できます。SKUが多い店舗ほど時間短縮効果が大きくなる領域です。
ガイドラインの落とし穴──AI生成画像で「△判定」になるパターン
AI画像を作れても、楽天のガイドラインに引っかかっては意味がありません。ここでは、AI生成画像特有の「ハマりやすいポイント」に絞って解説します。
2024年6月改定で「合成背景」がOKになった、が…
楽天の商品画像ガイドラインには3つの基本ルールがあります。テキスト要素は20%以内、枠線禁止、そして背景は白または写真背景のみ。
重要なのは、2024年6月の改定で「自然に見える合成背景」が認められるようになったことです。RMSの商品画像加工支援AIのリリースに合わせた改定で、実際に撮影した写真背景だけでなく、AIで自然に合成した背景もOKになりました。
ただし、ここで油断するとNG判定をもらいます。AI生成画像で不自然に切り取られていたり、商品の一部が背景と合体してしまっているようなケースはガイドライン違反の対象です。
AI生成画像で実際にNG・△判定が出やすいケース
楽天の画像判定はAIが行っているため、人間の目には問題なく見えても機械的にNG判定が出ることがあります。特にAI生成画像で注意が必要なのは以下のケースです。
まず、AI合成による影の付き方が不自然で、背景がベタ塗りとみなされるパターン。次に、商品の輪郭がAIの切り抜きで微妙にぼやけていて、商品と背景の境界が不明確なパターン。そして、AIが背景として生成した要素が枠線と誤認されるパターンです。
対策はシンプルで、AI生成画像は必ずRMS内の画像判定ツールで「○」判定が出ることを確認してからアップロードしてください。判定が「△」になった場合は、背景の明るさを調整したり、商品周囲の余白を増やすことで改善するケースが多いです。違反すると違反点数5点が加算され、累積でランキングや検索結果からの除外、RPP広告の停止といったペナルティにつながるため、手間を惜しまず事前チェックを習慣化すべきです。
AI生成画像の著作権について
AIで生成した画像自体には、現時点では著作権がどこにも帰属しないというのが一般的な解釈です。ただし、加工のベースとしてアップロードする元画像に第三者の著作権がある場合は、当然ながら権利者の許諾が必要になります。自社で撮影した商品写真であれば問題ありませんが、仕入れ先やメーカーから提供された画像をAI加工する場合は事前の確認を忘れないようにしましょう。
実務での最適な組み合わせ──「撮影」と「AI」の線引き
ここまでの内容を踏まえて、実務でどう使い分けるかの判断基準を整理します。
実物撮影が依然として必須な画像
第1商品画像(サムネイル)は、商品の正確な色味・質感・サイズ感を伝える必要があるため、実物撮影が基本です。楽天のA/Bテストでも、白背景の実物写真がCTRと転換率の面で最も安定した結果を出しています。
素材感が購買決定に直結するアパレル、シズル感が命の食品、色味の正確性が求められるコスメ。これらのジャンルのメイン写真はAI生成に頼らないほうが無難です。
AIに任せて工数を削減すべき画像
逆に、以下の画像はAIに積極的に任せることでコスト削減効果が大きくなります。
サブ画像の利用シーン写真は、ChatGPTやPhotoshopの生成AIで十分なクオリティのものが作れます。白背景への切り抜きは、remove.bgやPhotoshopの生成AIで大量一括処理が効率的です。季節キャンペーン用のバナー背景は、Midjourneyで世界観に合ったビジュアルをゼロから生成できます。そしてSNS投稿用の画像は、RMS AIのテーマ背景でサッと作るのに向いています。
コスト試算の目安
プロカメラマンによる撮影が1商品あたり3,000〜10,000円かかるのに対し、AIツールの組み合わせなら月額5,000〜10,000円程度の固定費で月数十点の画像を生成できます。月50商品を新規登録する店舗であれば、サブ画像とSNS用画像だけでもAI化することで、月10〜30万円程度のコスト削減が見込める計算です。
ただし、メイン写真まで含めて全てをAI化するのは現時点では推奨しません。商品の正確な情報を伝える画像は実物撮影のほうが売上に貢献するという事実は、楽天のテスト結果からも明らかです。
今後の展望──楽天のAI画像はどこに向かうのか
楽天の開発チームは今後の展開として、背景テーマの拡充だけでなく、ファッション商品でモデルが着用した画像をAIで生成できるようにすることを視野に入れています。これが実現すれば、モデル撮影のコストが劇的に下がるため、アパレル系店舗への影響は特に大きいでしょう。
また、2025年7月に本格提供が始まったエージェント型AI「Rakuten AI」は楽天市場への搭載も予定されています。商品画像の最適化をAIがデータに基づいて提案する時代も、そう遠くはないはずです。
一方で、外部AIツールの進化も目覚ましく、1枚の商品写真から短尺動画を自動生成する技術が2026年に入って本格化しつつあります。静止画だけでなく動画コンテンツまでAIでカバーできるようになれば、楽天ROOMやSNSでの集客手法も大きく変わるでしょう。
まとめ──明日から始める3ステップ
楽天の商品画像にAIを活用する最適なアプローチは、「RMS公式AIは白背景の切り抜き用に使い、それ以外は外部ツールを目的別に使い分ける」という組み合わせです。
まず今日やるべきことは、RMS AIの白背景機能で手持ちの商品画像を5点ほど処理してみることです。追加費用はかかりません。次に、ChatGPT Plusに加入して、サブ画像用のイメージ画像を1点作ってみてください。そして、生成した画像を全てRMSの画像判定ツールに通す。この3ステップで、自店舗にとってAI画像がどこまで使えるかの感触がつかめます。
全部をAIに置き換えるのではなく、「撮影すべき画像」と「AIに任せる画像」を明確に分けること。その判断基準を持つことが、2026年の楽天運営における画像戦略の出発点です。
FAQ
Q. 楽天RMSの画像加工支援AIに費用はかかりますか?
楽天市場に出店していれば追加費用なしで利用できます。生成回数にも上限はなく、何度でも再生成可能です。
Q. AI生成画像を第1商品画像に使ってもガイドライン違反になりませんか?
2024年6月の改定で「自然に見える合成背景」が認められました。ただしAI判定で△やNG判定が出るケースもあるため、必ずRMSの画像判定ツールで事前確認してください。違反すると違反点数5点が加算されます。
Q. RMS AIと外部ツール、どちらを使うべきですか?
用途によります。白背景の簡易的な切り抜きならRMS AIで十分です。大量の白抜き処理ならremove.bgやPhotoshop、利用シーン画像ならChatGPT、ブランドビジュアルならMidjourneyと、目的に応じて使い分けるのが最も効率的です。
Q. AIで生成した商品画像の著作権はどうなりますか?
AIが生成した画像自体に著作権は帰属しないというのが現時点の一般的な解釈です。ただし、元画像に第三者の著作権がある場合は許諾が必要です。自社で撮影した商品写真が元画像であれば問題ありません。
Q. 導入から成果が見えるまでどのくらいかかりますか?
画像の生成自体は即日で可能です。CTRや転換率への効果測定には最低2〜4週間のデータ蓄積が必要です。まず少数の商品で試し、旧画像との数値比較で判断することをおすすめします。
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。 https://uruchikara.jp/contact/

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ)
株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長
Experience|実務経験
2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を
4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、
“売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。
Expertise|専門性
技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、
AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp
Authoritativeness|権威性
自社運営メディア
「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。
運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセル。
Trustworthiness|信頼性
東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて
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