TikTok Shop専任ポジション新設が拡大|ソーシャルコマース3論点

米国ブランドがTikTok Shop専任責任者の募集を拡大しています。米国オンライン小売の2%を占める現状と、日本の流通総額の約70%がコンテンツ起点という数字から、EC事業者が決めるべき3つの論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

米国ブランドがTikTok Shop専任の責任者ポジションを新設しています。

Modern Retailが2026年8月11日に報じたところによると、髭剃りブランドHarry’sの親会社であるMammoth Brands、化粧品のStila Cosmetics、アクセサリーのBaubleBarなどが、TikTok Shopだけを担当する社内ポジションの募集を相次いで出しています。これまでSNS担当やマーケティング担当の兼務、あるいは代理店への外注で回してきた領域が、独立した職務として切り出され始めた形です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の支援実績を持ち、AI導入支援を2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。日本でもTikTok Shopは提供開始から1年が過ぎ、同じ「誰が担当するのか」という問いが現実の課題になっています。

TikTok活用のイメージ

TikTok Shop専任の求人が並び始めた

米国では、TikTok Shopを1つの事業単位として扱う求人が並び始めました。チャネルの1つとして横並びに扱う段階を、売上規模が超えたためです。

Mammoth Brandsは「TikTok Shopのビジョン、戦略、複数ブランドにまたがるロードマップを描く」ことを条件に、head of TikTok Shopを募集しています。Stila Cosmeticsはライブ配信の強化を担うTikTok Shopマーケティングのマネージャーを、BaubleBarはクリエイター提携から販促キャンペーンまでを見るTikTok Shopマネージャーを探しています。ベビー用品のJool Babyは「eコマースマーケットプレイスマネージャー」という名称で、代理店との折衝、実績データの分析、需要予測の精度改善、在庫チームとの連携までを職務範囲に含めました。求人にはTikTok Shopの実務経験が「あれば望ましいが必須ではない」と明記されています。

数字の裏付けもあります。調査会社Consumer Edgeの推計では、TikTok Shopは2026年7月時点で米国のオンライン小売支出の2%を占め、前年同月の1.2%から拡大しました。主要ブランドのTikTok Shop経由の売上は2025年にほぼ倍増し、米国の中小事業者の売上は66%増を記録しています。米国での提供開始は3年前の9月であり、まだ歴史の浅いチャネルにブランドが人を貼り付け始めたことになります。

日本のEC事業者にとっての論点

日本でも同じ配置の見直しが必要になります。日本のTikTok Shopは購買がコンテンツに強く依存する構造で、他業務との兼務では必要な時間を確保できないためです。

TikTokが2026年2月3日に公表した日本市場のデータでは、2025年6月30日の提供開始から同年12月末までの流通総額の約70%が、動画やLIVE配信などのコンテンツを起点とした購入でした。同期間に登録セラー企業は提供開始当初の約3倍となる5万店に、TikTok Shopクリエイターは約20万人に増え、購入者数は半年で20倍以上に伸びています。購買層は18歳から34歳と35歳以上がそれぞれ約半数で、若年層専用のチャネルではなくなりました。

現場の負荷も公表されています。王子製薬は1回あたり4時間から6時間におよぶLIVE配信をほぼ毎日実施し、広告経由の流通総額が前月比で約4,500%成長した月もあったとしています。メイクアップブランドのKATEは、参入前と比較してフォロワーが約200%増加しました。毎日4時間から6時間の配信は、楽天市場やAmazonの受注処理・広告運用と片手間で兼務できる作業量ではありません。加えて手数料や施策の条件が短期間で変わるため、変更を追う担当者が不在だと利益設計が崩れます。高単価商材でも成立し始めている点は、TikTok Shopで高単価が売れるで整理しています。

なお導線には向きの制約があります。TikTokで獲得した顧客を楽天市場の店舗に送るのは問題ありませんが、逆に楽天R-Mailや商品ページからTikTokアカウントへ誘導することは楽天市場の規約上できません。担当者を置く段階で、チャネルごとに送客の向きを整理しておくべきです。内製と外注の判断軸はEC事業者がSNS運用を内製すべきか外注すべきかで詳しく扱っています。

専任を置く前に決める3つのこと

専任を置くなら、肩書きより先に責任範囲を決めるべきです。米国の事例から、日本の事業者がそのまま使える論点は3つあります。

1つ目は、P&Lをその担当に持たせるかどうかです。Jool Baby創業者のJudah Bergmanは、Modern Retailで「TikTok Shopは非常に速く変わり、手数料も機会も変わり続ける」と述べ、損益に責任を持てる人材が必要だと語っています。売上だけを見る担当だと、手数料改定で利益が消えても気づけません。同社はTikTok Shopに2024年に参加し、約9万7,000個を販売、現在は売上の約5%をこのチャネルから得ています。

2つ目は、在庫と需要予測への接続です。Jool Babyの求人が在庫チームとの連携を明記しているのは、ライブ配信で瞬間的に売れる商材ほど、欠品と過剰在庫の両方を起こしやすいためです。日本でも受注データが基幹システムに戻る導線を先に用意しないと、専任を置いた瞬間に出荷が詰まります。ライブ販売のレコメンド精度が競争軸になりつつある流れは、WhatnotがAIレコメンド企業買収でも触れました。

3つ目は、内製と外注の線引きです。Stila Cosmeticsは本社にライブ配信スタジオを構えたため専任を社内に置く判断をし、アフィリエイト系の代理店とは併走しています。日本でも配信は内製、アフィリエイト管理と広告運用は外部、といった分割が現実的です。採用要件も難所になります。Stilaでは応募者がコンテンツ制作寄りか、小売の売上や客単価の設計寄りかに二分され、必要なのは両方をまたぐ人材だとしています。Bergmanは経験者の多くが代理店側に所属していて採用が難しいとも述べています。日本はTikTok Shopの提供開始が2025年6月と新しいため、この偏りは米国よりも強い可能性がありますが、国内の人材分布を示す公開データは見当たらないため要確認とします。既存の店舗運営スタッフに配信の実務を足す社内育成のほうが、結果的に早い場合があります。

まとめ

TikTok Shopは、兼務で回すチャネルから、損益と在庫の責任を持つ担当を置く事業へ移りつつあります。米国では専任求人が並び、日本では流通総額の約70%がコンテンツ起点という構造がすでに数字で出ています。まずは自社で誰がライブ配信の時間と手数料変更を追うのかを決め、内製と外注の線を引くところから始めるのが現実的です。

参考文献

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引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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