Lyria 3.5が全世界で一般開放|1曲0.08ドルのEC動画音源3論点

Googleが音楽生成モデルLyria 3.5をGeminiアプリとAPIで全世界に開放しました。1曲0.08ドルの価格、SynthID透かし、再現性の制約を踏まえ、EC事業者が商品動画の音源を内製する際の3論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

Googleは2026年9月4日、音楽生成モデルLyria 3.5をGeminiアプリとAPIで全世界に開放しました。

商品動画のBGMやブランドジングルを、外部の音源ライブラリに頼らず自社で作る選択肢が現実的になりました。API経由の価格はフルソング1曲あたり0.08ドルで、1ドル150円換算ならおよそ12円です(為替レートは変動するため実際の請求額は要確認)。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。日本のEC事業者にとって何が変わるのか、コスト・規約・運用の3点から整理します。

Lyria 3.5がGeminiアプリとGemini APIで利用可能になったことを示すイメージ

何が起きたか:Lyria 3.5がGeminiアプリとAPIに到達

結論から言えば、これまで一部ツール限定だった最新の音楽生成モデルが、誰でも触れる場所に降りてきたということです。Googleは公式ブログThe Keywordで、Lyria 3.5をGeminiアプリとGemini APIで提供開始したと発表しました。ウェブとモバイルアプリの全ユーザーが対象で、地域限定ではありません。Unite.AIによれば、同モデルは2026年7月29日にGoogle Flow Musicで先行公開されており、今回はその提供範囲が広がった形です。

Geminiアプリ側では、ジャンルを選ぶか文章で指定でき、ボーカル入りとインストゥルメンタルを切り替えられます。テンプレートも追加され、背景音楽から誕生日向けの楽曲まで出発点を選べるようになりました。尺も短めと長めから選択できます。Googleが用途として挙げているのは、動画のバッキングトラック、ブランドジングル、着信音です。EC事業者の日常業務にそのまま重なる用途が、公式の想定に入っている点は見逃せません。

開発者向けの音楽生成ドキュメントによると、Lyria 3.5は44.1kHzのステレオ音源を、テキストまたは画像から生成します。モデルは2つに分かれており、30秒固定でループやプレビュー向けの lyria-3-clip-preview と、数分のフル楽曲を作る lyria-3.5 です。前者はMP3のみ、後者はWAV出力にも対応します。画像は最大10枚まで添付でき、色調や被写体の雰囲気に沿った曲を作らせることができます。歌詞は自分で書いて渡すこともでき、Verse・Chorus・Bridgeといった区間タグや、0分10秒から30秒までは何を鳴らすといったタイムスタンプ指定で構成を制御します。

日本のEC事業者にとっての論点:コスト・規約・再現性

まず効いてくるのはコスト構造の変化です。Gemini APIの価格表では、Lyria 3.5のフルソングが1リクエスト0.08ドル、30秒クリップのLyria 3 Clipが0.04ドルと明記されています。無料枠はありません。商品100点分の専用BGMを作っても8ドル程度という水準で、これは商品ごとに音源を出し分ける運用が価格面で成立することを意味します。従来のストック音源サービスの年額サブスクと比較する材料が、はっきりした数字で出てきたと考えてよいでしょう。動画そのものの生成コストについては、Gemini Omni 1.1 Flashの値下げを扱った記事も併せて確認してください。

次に規約です。ドキュメントには、生成された音源すべてにSynthIDの電子透かしが埋め込まれると書かれています。人間の耳には知覚できないとされていますが、機械的にはAI生成物と判別できます。楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・TikTok Shopのそれぞれで、AI生成音源を含む動画の掲載可否や表示義務がどう規定されているかは、モールごとに扱いが異なるうえ改定も入るため要確認です。AI音源の透かしと配信規制をめぐる動きは、Sunoが透かしとダウンロード制限を強化した件でも整理しています。特定アーティストの声や著作権のある歌詞を求めるプロンプトは、安全フィルタでブロックされる仕様です。

三つ目が再現性です。ドキュメントは、音楽生成が単発処理であり、生成済みクリップを複数回のやり取りで編集していく使い方は現行版では非対応だと明記しています。さらに、同じプロンプトでも呼び出しごとに結果が変わるとされています。つまり「先月と同じジングルをもう一度」は原理的に作れません。採用した音源ファイルそのものを資産として保管する前提の運用設計が必要になります。前世代を扱ったLyria 3でのBGM自作ガイドと比べても、この制約は変わっていません。

初動アクション:まず何から手をつけるか

最初にやるべきは、主力商品10点程度に絞った置き換えテストです。0.04ドルのクリップモデルでプロンプトを固めてから、本番用にフル楽曲を生成すれば、試行錯誤のコストを半分に抑えられます。ドキュメント自身も、クリップで先に実験してから本生成に進む手順を推奨しています。

次に音源台帳を作ってください。曲ID、生成日、使用モデル名、投入したプロンプト全文、紐づく商品管理番号、使用チャネルの6項目を1行にまとめるだけで十分です。再生成で同じ曲が戻らない以上、この台帳とファイル本体が唯一の復元手段になります。

三つ目に、越境ECを手がけている場合は言語別の音源を検討する価値があります。ドキュメントによれば、プロンプトを書いた言語で歌詞が生成され、ボーカルのスタイルと発音もその言語に合わせて調整されます。英語圏向けと日本語向けで別のジングルを持つ運用が、追加の外注費なしで組めることになります。

最後に、既存のストック音源サブスクリプションの更新時期を確認しておいてください。年間の支払額と、自社で必要な楽曲本数に0.08ドルを掛けた金額を並べれば、契約を続けるべきかどうかの判断材料になります。ただし商用利用の可否と権利の帰属はGemini APIの利用規約側の定めに従うため、契約書レベルでの確認は必須です(要確認)。

まとめ

Lyria 3.5の全世界開放によって、商品動画の音源はモール横断で内製できる領域に入りました。1曲0.08ドルという単価は、商品単位でのBGM出し分けを現実的にします。一方で電子透かし、単発生成、非決定性という三つの制約は運用設計で吸収するしかありません。まずは小さく試し、音源台帳を回しながら、各モールの規約更新を追いかける進め方をおすすめします。

参考文献

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https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Google The Keyword


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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