UBSが27年入社にAI活用実績を必須化|EC採用要件3つの論点

UBSが2027年入社の新卒とインターンにAI活用実績の証明を義務化。求人票の書き方、面接の質問設計、入社後30日の課題まで、EC事業者の採用要件を見直す3つの論点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

スイスの大手銀行UBSが、2027年入社の新卒とインターンにAI活用実績の証明を求め始めました。

この一報が重いのは、AIが人を減らす話ではなく、採用する人の条件を書き換えた話だからです。判定基準は「ChatGPTを触ったことがあるか」ではなく、「どの業務をAIに渡し、何が前より良くなったかを説明できるか」に置かれています。EC事業者の求人票と面接台本にも、そのまま持ち込める考え方です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。

UBSのAIスキル要件を伝えるニュース画像

UBSが2027年入社の採用要件にAI活用の証明を追加した

結論として、UBSは2027年入社の新卒とインターンに対し、AIを使って成果と効率を改善できることの証明を求めます。対象は投資銀行部門にあたるGlobal Banking and Marketsで、面接では候補者が実際にどうAIを使っているかを問う質問が加わります。この変更はFinancial Timesが関係者の話として最初に報じたもので、The Next Webは独自の裏取りはしていないと明記しています。UBS自身の公式発表としてまとまった文書は現時点で確認できていないため、細部は要確認です。

求められる水準は、TechRadarの整理によれば「有名なチャットボットを操作できること」ではありません。責任ある形でAIを使い、試し、事業成果の改善につなげられることを示せるかどうかです。従来の要件が消えるわけでもなく、英国の学位成績区分で上位にあたる成績など既存の基準はそのまま残り、AIスキルはそこに上乗せされます。UBSは、AIスキルは学力や対人能力を補完するものであって置き換えるものではないと説明しています。新たに掲載される他の職種にも同じ基準が広がる見込みで、既存の従業員にまで適用するかどうかは示されていません。

見落とされがちなのは、採用後の受け皿です。合格者はAI Fluency Pathwayという社内プログラムに入り、実際の銀行業務のユースケース、責任ある使い方、そしてAIの出力を批判的に評価する判断力を学びます。入口で完成した専門性を求めるなら、社内に訓練コースを作る必要はありません。UBSが入口で見ているのは、使った証拠と学ぶ意思の2点だと読むのが妥当です。同様の動きは1行にとどまらず、Financial Timesによればサンタンデールも一部のトレーニープログラムで高度なAI利用者を求めています。

日本のEC事業者が持ち帰るべき採用要件3つの論点

第一の論点は、求人票の書き方です。「AIツール使用経験歓迎」と書くと、応募者は「ChatGPTを使ったことがあります」と答えて終わります。UBSの設計が優れているのは、証明の単位を「ツール名」ではなく「渡した業務と改善した結果」に置いた点です。EC運営に置き換えるなら、商品説明文の下書き、レビュー要約、問い合わせ返信のたたき台、広告コピーの案出し、CSVの整形といった具体的な作業を挙げ、そのうち1つについて「何を渡し、何を自分で直し、どれだけ時間が短縮したか」を面接で説明してもらう形になります。これは事前に暗記しづらく、実務経験の有無が透けて見える質問です。

第二の論点は、既存スタッフの評価軸との整合です。新規採用にだけAI要件を課すと、社内に「AIを使う新人」と「使わないベテラン」の二層ができ、運用ルールが分裂します。楽天市場やAmazonの運営では、商品ページの改訂やクーポン設計を複数人で分担することが多く、片方がAI下書き前提、片方が手書き前提だと品質基準がそろいません。UBSがAI Fluency Pathwayという共通の訓練コースを用意したのは、入口の基準と社内の基準をそろえるためだと考えられます。中小規模のEC事業者でも、入社1か月以内に「自社で使ってよいAIと、渡してはいけない情報」を明文化した30分の座学を1本用意するだけで、この分裂はかなり防げます。既存スタッフの育成論点はハーバードのAIアバター講師とEC人材育成でも扱いました。

第三の論点は、基礎スキルの空洞化です。JPMorganの欧州事業を率いるコナー・ヒラリーは2025年12月、若手が基礎を失うリスクを警告しています。問題を理解する前にモデルに手を伸ばした人は、問題を理解する力そのものを身につけないままになる、という指摘です。2026年7月の研究はこれをネバースキリング(never-skilling)と表現しました。ECの現場でも同じことが起きます。商品ページのどこが売れない原因かを自分で仮説立てした経験がないまま、AIが出した改善案をそのまま反映する新人は、AIが外れた時に気づけません。採用面接でAI習熟度を測るだけでは、この問題は何も解決しないどころか、むしろそういう人材を選び取ってしまう可能性があります。

数字の背景も押さえておきます。モルガン・スタンレーのアナリストは、欧州で20万人を超える銀行職が5年以内に消えると見ており、2026年5月には予測を引き上げて、最大で全職種の5分の1に及ぶとしました。JPMorganのジェイミー・ダイモンは、一部部門でAIが職の30〜40%を削減したと述べています。UBSはその流れの中で採用を止めるのではなく、採る人の条件を書き換えました。人が減る話ばかりが続いた1年の中で、これは方向の違うニュースです。なお、日本のEC事業者の求人でAIスキルを必須要件に掲げている割合を示す公的統計は確認できていないため、国内の普及度は要確認とします。

明日から着手できる初動アクション

まず、求人票の要件欄を1行だけ書き換えます。「AI活用の経験」ではなく「AIに任せた業務と、そこで得られた改善を1つ説明できること」と書きます。この1行があるだけで、応募段階で自己選別が働き、面接の密度が上がります。

次に、面接の質問を1問だけ固定します。「直近3か月で、AIに任せて一番うまくいった作業と、任せてみて失敗した作業を1つずつ教えてください」という問いです。失敗を語れる人は、出力を検証する習慣があります。UBSがAI Fluency Pathwayで「批判的に評価する判断力」を教えると明言しているのは、まさにこの部分です。

三つ目に、入社後30日の課題を1本用意します。既存の売れ筋商品を1点選び、AIを使わずに改善案を書き、そのあとAIに同じ作業をさせて差分を比較する、という課題です。手順を逆にしないことが肝で、先に自分の頭で仮説を立てさせることでネバースキリングを避けられます。店頭スタッフ向けの研修設計はウォルマートの店舗スタッフAI研修が参考になります。

四つ目に、外注先の選定基準にも同じ物差しを入れます。商品説明文やレビュー翻訳の外注は、すでにAIによって単価も品質の分布も変わりました。ナイロビの外注ライター4万人がAIで消滅で書いたとおり、「AIを使っていない外注」を前提にした発注は成立しなくなっています。発注時に「AIをどこまで使うか」を先に握っておくほうが、あとから揉めません。

まとめ

UBSの2027年入社要件は、AIスキルを「あると良い」から「ないと通らない」に移した最初期の事例です。EC事業者が取るべきスタンスは、AI習熟度を採用の関門にすることではなく、渡した業務と改善結果をセットで語らせる質問に変えること、そして入社後に基礎スキルを別立てで育てる仕組みを持つことの2つです。入口の基準だけを上げても、判断できる人は育ちません。

参考文献

※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/

引用元: The Next Web


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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