コストコは2026年度、デジタル経由の売上が330億ドルを超え、前年比20%以上伸びたと発表しました。
米国の会員制倉庫型小売チェーン、コストコ(Costco Wholesale)が2026年9月24日(米国時間)の決算説明会で、2026年度のデジタル売上が330億ドルを突破したと明らかにしました。成長を後押ししたのは、DoorDashやUber Eatsといった外部の配達プラットフォームとの連携です。さらに注目したいのは、AI検索ツールからの流入が2四半期連続で3桁成長し、サイト流入元のなかで最も高いコンバージョン率を記録したという点です。本記事では、コストコのデジタル売上の中身を整理したうえで、日本のEC事業者が押さえておきたい3つの論点を解説します。
コストコのデジタル売上330億ドルの中身
結論から言うと、コストコのデジタル売上の伸びは「自社サイトの強化」と「外部の配達アプリへの出店」の両輪で生まれています。Modern Retailによると、CEOのロン・ヴァクリスは決算説明会で、第三者の配達プラットフォーム経由の売上を含むデジタル売上が年間330億ドルを超え、20%以上成長したと説明しました。

決算の数字も確認しておきます。MarketBeatの決算説明会まとめによると、2026年度通期の売上高は2,972億ドルで前年比10%増、第4四半期のデジタル経由の既存店売上は19.5%増でした。ウェブサイトとアプリの総トラフィックは同四半期に30%増えています。
配達面では、ここ1か月でDoorDashとUber Eatsの両方で米国全土への配達を始めました。Uber Eatsは17州での試験運用を経ての全国展開です。2016年から続くInstacartとの提携とあわせ、3つの配達プラットフォームの平均配達時間は1時間未満とされています。会員は注文時に会員番号を入力する仕組みで、会員制のビジネスモデルは崩していません。
ヴァクリスは、これらの配達チャネル経由の売上について「大部分は上乗せ分で、倉庫店舗の食品売上への影響は限定的」と述べています(Modern Retail)。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
論点1:AI検索からの流入は「量は少なくても質が高い」
最も見逃せないのは、AI検索ツールからの流入がコストコのサイトで最も高いコンバージョン率を出したという事実です。AI検索からの訪問者は、ChatGPTやGeminiなどとの対話で比較検討をある程度済ませてから来店するため、購入意欲が高い状態でサイトに着地すると考えられます。
日本でも、自社ECや楽天市場の商品情報がAIの回答に引用されるかどうかが、今後の集客に効いてきます。商品名や仕様、価格、送料、返品条件といった基本情報を構造化して、AIが読み取りやすい形で公開しておくことが最初の一歩です。AI検索と購買の関係は、うるチカラの過去記事AI検索経由のCVRが高い理由とEC事業者の論点でも取り上げています。
論点2:外部チャネルは「カニバリ」ではなく「上乗せ」になりうる
コストコは、配達アプリ経由の売上が既存店の売上をほとんど奪っていないと説明しています。日本のEC事業者も、自社ECと楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの併売で「自社ECの売上が食われるのでは」と悩みがちです。ただ、チャネルごとに客層が違えば、新規顧客の獲得経路として素直に上乗せになります。
判断の材料になるのは、チャネル別の新規顧客比率と、顧客の重複率です。モールと自社ECで顧客リストを突き合わせ、重複が少ないようなら、外部チャネルを広げることは売上の上乗せにつながると考えてよいでしょう。
論点3:若年層は「最初は少額、あとで優良顧客」
コストコによると、コロナ禍以降に40歳未満の会員が約60%増え、全会員の4分の1以上を占めるまでになりました。この層は最初の購入額こそ小さいものの、時間とともに購入額が大きくなるとされています。
日本のEC事業者も、初回の客単価だけで広告やチャネルの良し悪しを判断すると、将来の優良顧客を取りこぼすおそれがあります。LTV(顧客生涯価値、1人の顧客が取引期間全体でもたらす利益)の観点で、若年層の獲得単価を少し高めに許容する設計も検討する価値があります。
今後の展望と初動アクション
コストコはパーソナライズ施策でも成果を出しており、Costco.comの注文の10%にパーソナライズされた商品が含まれるようになったと説明しています。2027年度は33店舗の新規出店を計画し、設備投資の約75億ドルには、将来のEC売上を支えるサプライチェーン投資も含まれています。店舗とデジタルの両方に投資を続ける姿勢は、今後も変わらないとみられます。
日本のEC事業者が今すぐ取り組めることは、次の3つです。
1つ目は、アクセス解析でAI検索経由の流入を分けて計測することです。ChatGPTやPerplexityなどの参照元を個別に集計し、コンバージョン率を他の流入元と比べてみてください。AI検索対策の考え方はAI検索とDTC4社のGEO事例も参考になります。
2つ目は、モールと自社ECの顧客重複率を調べることです。重複が少なければ、チャネル拡大は上乗せになる可能性が高いと判断できます。
3つ目は、新規顧客をコホート(初回購入月ごとのグループ)で分け、年齢層別に2回目以降の購入額を追うことです。若年層の育ち方が見えれば、広告の許容獲得単価を見直せます。配送スピードの考え方については米国の当日配送拡大とEC事業者の論点もあわせてご覧ください。
まとめ
コストコのデジタル売上は330億ドルを超え、外部の配達アプリとの連携が上乗せの売上を生み、若年層の獲得にもつながっています。なかでもAI検索からの流入が最も高いコンバージョン率を示した点は、日本のEC事業者にとっても見逃せないシグナルです。まずはAI検索経由の流入を計測し、チャネル別の新規顧客の質を見直すところから始めることをおすすめします。
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引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。