Anthropicの直近四半期の売上は170億ドル近くに達し、前年同期の約12倍になりました。一方で純損失は233億ドルと、前年同期の121億ドルから大きく膨らんでいます。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
何が起きたか:売上は12倍、それでも営業赤字に逆戻り
今回明らかになったのは、Anthropicが上場(IPO)を控えて更新した目論見書などをもとにした四半期の数字です。The Decoderは、同社が大型上場を前に営業赤字へ戻ったと伝えています。売上高はBloombergの報道として170億ドル近く、営業費用はThe Informationの報道として175億ドルです。費用が売上を上回ったため、前の四半期に出ていた黒字は消えました。
純損失は233億ドルで、前年同期の121億ドルのほぼ2倍です。営業費用の175億ドルと純損失の233億ドルには開きがありますが、その差の内訳は今回確認できた範囲では分かりません。会計上の細かな要因については、目論見書の原文での確認が必要です(要確認)。
費用を押し上げた要因として、同社は短期のコンピューティング容量に50億ドル、従業員の寄付への上乗せ(マッチング)に20億ドルを挙げています。つまり、AIの計算資源を急いで確保するための支出が、そのまま損益に表れた形です。
論点1:計算資源の確保が最大のコスト要因になっている
最初の論点は、計算資源(コンピュート)です。Anthropicは昨年末から計算能力の不足に直面しており、New York Timesによれば、Amazon、Google、SpaceX、半導体メーカー、元暗号資産マイナーなど、多数の相手と計算資源の契約を結んできました。
2026年に使える計算容量は3.5ギガワットを超える見込みで、来年はさらに倍にする計画です。更新された目論見書では、計算資源とデータセンターのリース契約の約定額が8,950億ドルにのぼります。売上が12倍に伸びても、需要に応えるための先行投資がそれを上回って膨らむ構図です。
生成AIを使う側から見ると、これは価格やレート制限の動きに関わります。供給が逼迫すれば、利用上限の調整や料金改定が起きやすくなるからです。ただし、今回の記事は価格の見通しには触れていないため、利用料金への影響は現時点で断定できません。
論点2:売上の伸びと赤字の拡大が同時に進んでいる
二つ目は、成長と赤字の関係です。四半期売上が前年同期の12倍になった一方、純損失も約1.9倍に増えました。売上の伸びが赤字の縮小に直結していない点が、投資家にとっての最大の確認事項になります。
数字を整理すると、売上は170億ドル近く、営業費用は175億ドル、純損失は233億ドルです。営業費用が売上をわずかに上回る水準ですから、本業の採算は黒字と赤字の境目にあります。計算資源への先行投資が一巡して稼働率が上がれば改善する可能性はありますが、それは今回の報道からは読み取れません。今後の決算で、費用の増え方が売上の増え方より緩やかになるかを見るのが現実的です。
論点3:IPOでは約1,000億ドルの調達と日本の投資家に注目が集まる
三つ目は、上場そのものです。New York Timesによると、Anthropicは約1,000億ドルの調達を見込んでいます。さらに日本経済新聞(Nikkei Asia)は、このうち最大35億ドルを日本の投資家から集めようとしていると報じています。
日本の機関投資家や個人投資家にとっては、生成AIの主要企業に出資する数少ない機会になりえます。一方で、赤字が拡大している企業に巨額の資金が集まるという点は、AI投資の過熱をめぐる議論も呼びそうです。当サイトでも、これまでAnthropicの上場申請や格付けの見通しを取り上げてきましたが、今回は実際の損益の数字が出てきたことで議論の土台が一段そろいました。
今後の動き
注目点は三つあります。一つ目は、上場の時期と最終的な調達額です。二つ目は、次の四半期で営業費用が売上に対してどう推移するかです。三つ目は、8,950億ドルにのぼる契約が実際にどのペースで費用として計上されていくかです。数字の多くはメディア報道を通じたものですから、投資判断や事業判断に使う場合は目論見書などの一次資料で確認してください。
AIを業務に取り入れる事業者にとっては、利用する生成AIの提供元が高い成長と大きな赤字を同時に抱えている、という事実を知っておく価値があります。ツールの選定では、単一のサービスに依存しすぎず、乗り換えやすい設計にしておくのが安全です。
まとめ
Anthropicは売上を約12倍に伸ばしながら、営業費用が売上を上回り、純損失は233億ドルに拡大しました。背景には3.5ギガワット超の計算容量確保と、8,950億ドル規模の契約があります。上場で約1,000億ドルを調達する計画も報じられており、成長と赤字のバランスが今後の最大の焦点です。
参考文献
- The Decoder: Anthropic grows revenue twelvefold but posts $23 billion loss
- Bloomberg: Anthropic revenue hits nearly $17 billion before blockbuster IPO
- The Information: Anthropic’s revenue surged to $17 billion in Q3, swung back to operating loss
- New York Times: Anthropic AI computing power
- Nikkei Asia: Anthropic seeks to raise up to $3.5bn from Japanese investors in IPO
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: The Decoder
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。