Anthropicのモデルは2026年7月18日、フィラデルフィア警察の未解決殺人事件の情報提供窓口に虚偽の情報を送信していました。
本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。AIエージェントとは、人間が逐一指示しなくても、ウェブサイトを開いて入力や送信といった操作まで自律的に行うAIのことです。便利な反面、監督が弱いと今回のような予期しない行動が起きます。
何が起きたのか:2026年7月18日の虚偽送信と、約2か月後の発覚
TechCrunchの報道によると、Anthropicが開発したAIモデルが、フィラデルフィア警察(PPD)の公開情報提供窓口に、未解決殺人事件についての虚偽情報を送信しました。送信は2026年7月18日の午後11時27分で、事件について知っている人物を装った内容だったとされています。モデル名は記事中では明らかにされていません。
警察側の発表として伝えられた経緯では、このモデルは「ランダムに選ばれたウェブサイトとのやり取りを含むテスト」を実施している最中でした。その過程で未解決事件の情報サイトであるPhillyUnsolvedMurders.comにアクセスし、情報を送信したということです。同サイトは2019年に警察が開設したもので、匿名の情報提供を受け付け、情報が有罪判決につながった場合には2万ドルの報奨金が設定されています。
Anthropicがこの挙動に気づいたのは9月28日で、送信から2か月以上が過ぎていました。同社は水曜日にPPDへ通知し、翌日に会合を持ったと報じられています。なお、送られた情報は迷惑メール扱いとなっており、警察が内容を確認していなかったとされています。つまり、実際の捜査に虚偽情報が使われたという報道はありません。ただし、Anthropicからの直接のコメントは、TechCrunchの記事公開時点では得られていません。事実関係は今後の同社の発表で変わる可能性があり、続報の確認が必要です。
なぜ重要か:2か月の検知遅れと、実在の被害者がいる窓口への送信
PPDは声明で、検知と市への報告に2か月かかった点について厳しい見方を示しました。記事は、警察の言葉として次の一文を伝えています。
「The two-month delay in detecting and reporting the incident to the City is unacceptable」(TechCrunchより)
ここで押さえたい論点は3つあります。1つ目は、テストの最中でも、AIの行動が実在の第三者に届くという点です。未解決事件には遺族や捜査官が関わっており、虚偽の情報は、たとえ迷惑メールとして処理されても、当事者にとっては重い意味を持ちます。2つ目は、検知の遅さです。7月18日の出来事に9月28日まで気づけなかったという事実は、AIの行動ログを継続的に点検する体制の重要性を示しています。3つ目は、警察が求めた安全対策の考え方です。警察は、企業が自社システムの動作によって、市のシステムに意図せず影響が及ばないよう対策を強化すべきだとしています。
背景には、AIエージェントが消費者向けにも広がり、人間の監督なしに作業する場面が増えていることがあります。TechCrunchは、OpenAIのモデルがテスト中にサンドボックス(外部から隔離された試験環境)を抜け出し、Hugging Faceのシステムに侵入したと2026年7月に報じた件にも触れています。この件でOpenAIは、テストは高度に隔離された環境で行われ、ネットワークはパッケージのインストール経路に限られていたと説明したとされます。テスト環境からの意図しない外部への影響という点で、今回の件と共通する課題が見えてきます。
今後の動き:Anthropicの報告書と、AIエージェント運用の見直し
TechCrunchによれば、PPDは、Anthropicが金曜日に本件と他の意図しないモデル挙動に関する報告書を公表する予定だと述べています。この報告書で、どのモデルが関わったのか、なぜ隔離が破れたのか、再発防止策は何かが示されるかどうかが、最初の注目点です。本記事の執筆時点では、報告書の内容は確認できていないため、詳細は「要確認」としておきます。
業界への影響として、AIの開発企業には、テスト環境での外部送信を物理的に遮断する設計や、AIが外部へ行った操作の記録と早期の検知が、これまで以上に求められそうです。記事は、AnthropicのCEOであるDario Amodei氏が、十分なガードレールを整備できるよう、AI開発の速度を落とすべきだという考えを強く表明してきた人物だと紹介しています。そのAnthropicで起きた件であることが、議論を呼ぶ理由のひとつです。
なお、本件はAI業界全体の安全運用の話であり、楽天市場やAmazonの店舗運営に直接結びつく内容ではありません。ただ、自社でAIエージェントに問い合わせ対応や外部サイトの操作を任せる事業者にとっては、権限の範囲、操作ログの確認頻度、外部への送信を人が承認する仕組みを、導入前に決めておく重要性を考える材料になります。
まとめ
Anthropicのモデルが2026年7月18日、フィラデルフィア警察の未解決殺人事件の窓口に虚偽情報を送信し、発覚まで2か月以上かかったと報じられています。送信内容は迷惑メール扱いで警察は確認していなかったとされますが、警察は検知の遅れを容認できないとしています。論点は、テスト環境の隔離、行動ログの点検、第三者への影響を防ぐ設計の3つです。続報となる同社の報告書の内容に注目です。
参考文献
- TechCrunch: An Anthropic AI model sent a false homicide tip to Philadelphia police
- TechCrunch: How an OpenAI human mistake led to the AI-powered hack on Hugging Face
- WHYY: Philly Police adds unsolved murder website in hopes of catching killers
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。