OpenAIはChatGPT内でアプリを探して使える新機能群を発表しました。
2026年9月29日(米国時間)のOpenAI DevDay 2026で、ChatGPTを「アプリを見つけ、つなぎ、その場で使う場所」に変える発表がまとめて行われました。会話の流れでアプリを提案する機能、アプリ風の操作画面を持つプラグイン拡張、他社サービスにChatGPTのアカウントと利用枠を持ち込める仕組み、そして4,000超のアプリにつながる常時稼働エージェント「Dots」です。ChatGPTの週間利用者はOpenAIの発表で12億人に達しており、この規模の入口が「アプリストアの代わり」を狙い始めたことは、自社ECやSaaSを使うEC事業者にも無関係ではありません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
ChatGPTのアプリ窓口化で何が発表されたか
結論から言うと、今回の発表は「アプリの発見・起動・利用・本人確認」をChatGPTの中で完結させる部品がそろった、という内容です。TechCrunchは一連の発表を、従来のアプリストアモデルへの正面からの挑戦と位置づけています。Axiosによると、DevDay全体の発表は20件を超えました。
中心となるのは次の4点です。1つ目は会話内のアプリ提案です。ユーザーの作業に役立つアプリがあるとChatGPTが判断すると、会話の途中でそのアプリを提案し、接続すればChatGPTの中でそのまま使えるようになります。
2つ目はプラグインの拡張です。ChatGPTのプラグインとは、SlackやGoogle Driveなどの外部ツールをChatGPTにつなぐ仕組みのことです。今回、アプリごとにサイドバーの専用スペース、会話しながら操作できるインタラクティブなパネル、独自形式に対応したファイルビューアーを持てるようになりました。開発者向けにはPlugin Creatorという作成ツールが用意され、審査の進み具合や修正点の確認、人による再審査の依頼もできるよう改善されています。

3つ目はSign in with ChatGPTです。ChatGPTのアカウントで外部サービスにログインし、契約中のAI利用枠をそのまま使える仕組みで、Notion、Vercel、CognitionのDevinなど16社が立ち上げパートナーに入りました。あわせて、Adobe、Figma、HubSpot、Salesforceなど30社超が参加する企業向けのOpenAI Marketplaceも始まっています。
4つ目がDotsです。Dotsとは、専用のクラウドPCとブラウザを持ち、ユーザーの目標に向けてバックグラウンドで動き続けるAIエージェントのことです。BGRによると、Dotsはプラグイン経由で4,000超のアプリにつながり、ChatGPT Proの200ドルプランとBusiness Premiumから提供が始まりました。
一方で、アプリストアの収益源にあたる課金・収益分配の仕組みは、今回発表されていません。この点は後述の論点に関わります。
日本のEC事業者にとっての3つの論点
結論として、影響が大きいのは「見つけてもらう場所」「業務ツールの選び方」「AIに任せる権限」の3点です。どれも今日すぐ売上が変わる話ではありませんが、半年から1年で判断を迫られる可能性が高いテーマです。
1つ目は、商品やサービスが「見つけてもらう場所」がさらに増えることです。これまでの集客は、Google検索と、楽天市場やAmazonのモール内検索が中心でした。そこに、ChatGPTが会話の中でアプリを提案し、DotsがWebを巡回して調べものを代行する経路が加わります。人ではなくAIが最初に情報を読む場面が増えるため、商品名や説明文、価格、在庫の情報が正確で、機械にも読み取りやすい形になっているかが問われます。Shopifyなどの自社ECでは、うるチカラのChatGPTショッピングとShopifyのエージェント対応の準備で整理した商品データの整備が、そのまま今回の変化への備えになります。楽天市場の店舗は外部への誘導が規約で制限されているため、モール内の商品ページの情報を正確に保つことが現実的な対応です。
2つ目は、業務ツールの選び方です。EC事業者が使うCRMや受注管理、在庫管理のSaaSが、ChatGPTのプラグインやOpenAI Marketplaceに対応しているかどうかが、今後の選定基準の1つになりそうです。HubSpotやSalesforceはすでにMarketplaceの参加企業に入っています。ブランドとしてChatGPT内に独自アプリを出す判断については、ChatGPTアプリとブランドストアへのEC事業者の対応もあわせてご覧ください。ただし、課金や収益分配の仕組みが未発表のため、アプリを出す側の収益モデルはまだ読めません。TechCrunchも、ユーザーが事業者のWebサイトで契約し、そのアカウントをChatGPTにつなぐ形を例に挙げています。当面は、決済と会員登録は自社サイトに残るという前提で考えるのが妥当です。
3つ目は、AIに任せる権限の線引きです。DotsはBGRの報道によると、ユーザーが操作していない間も接続先アプリを読み取り専用で調べる「プロアクティブ・リサーチ」を行い、メッセージ送信や編集はしないとされています。実際の操作はCustom Rulesで、許可、承認必須、禁止を細かく分けられる設計です。EC業務では、受注データや顧客対応メール、返金処理など、誤操作が直接損失につながる操作が多くあります。直前のGPT-6.1 Astra公開中止とAI権限の見直しでも触れたとおり、エージェントの性能が上がるほど、権限設計の重要性は増していきます。
今後の展望と初動アクション
結論として、今やるべきことは「情報の整備」と「権限ルールの下書き」の2つで、大きな投資はまだ不要です。常時稼働エージェントの競争はすでに始まっており、Metaは9月8日にMuseを公開し、中小企業向けにも広げています。この流れは、うるチカラのMeta Muse中小企業版の解説でも取り上げました。
初動として、まず自社ECの商品データを点検してください。商品名、説明文、価格、在庫、送料、返品条件が最新で、ページ上とデータ上で食い違いがないかを確認します。AIエージェントは古い情報をそのまま読み取って比較に使うため、ここが崩れていると候補から外れやすくなります。
次に、社内で使っているSaaSの棚卸しをおすすめします。Slack、Notion、HubSpotなど、すでにChatGPTとつながるツールがどれかを把握しておくと、Dotsのようなエージェントを試すときの範囲が決めやすくなります。
最後に、AIに任せる操作のルールを先に文書化しておきます。例えば、在庫や売上の確認は許可、顧客へのメール送信は承認必須、返金や価格変更は禁止、といった3段階の線引きです。なお、Dotsの日本での提供状況や料金の詳細は、現時点で要確認です。今後、OpenAIが課金や収益分配の仕組みを発表すれば、ChatGPT内でアプリや商品を売る判断材料が一気にそろうため、次の発表にも注目しておきましょう。
まとめ
OpenAIはDevDay 2026で、会話内のアプリ提案、プラグイン拡張、Sign in with ChatGPT、常時稼働エージェントDotsを発表し、週12億人が使うChatGPTをアプリの窓口に変えようとしています。日本のEC事業者は、課金の仕組みがまだ出ていない今のうちに、商品データの正確さとAIに任せる権限のルールを整えておくことが、最も費用対効果の高い備えになります。
参考文献
- TechCrunch: OpenAI’s latest features take direct aim at the app store model
- TechCrunch: OpenAI expands ChatGPT’s plugins with app-like interfaces and automations
- Axios: The 5 biggest announcements from OpenAI’s blockbuster AI conference
- BGR: Everything OpenAI Announced At DevDay 2026
- OpenAI Help Center: Sign in with ChatGPT
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。