米調査で、インフルエンサー施策にAIを使うマーケターは25%にとどまると判明しました。
米メディアModern Retailが2026年7月13日に公開した調査によると、SNS広告やリテールメディアではAI活用が進む一方、インフルエンサーマーケティングでAIを使う担当者は25%、コネクテッドTV(CTV、ネット接続型テレビ広告)では18%にとどまりました。「どこまでAIに任せ、どこから人が握るか」の境界線が数字で見えてきた形です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援を2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、日本のEC事業者向けの使い分けの視点を添えて解説します。
何が起きたか:チャネルごとにAI採用率が大きく割れた
結論として、AIの採用率はチャネルによって2倍以上の差がついています。Modern Retail+ Researchが2026年第1四半期に100人超のマーケティング担当者へ実施した調査では、SNSマーケティングでのAI活用が49%、リテールメディアが42%だったのに対し、インフルエンサー施策は25%、CTVに至っては82%が「AIを使っていない」と回答しました。
インフルエンサー領域で慎重論が根強い背景には「本物らしさ」への消費者の要求があります。世界広告主連盟(WFA)の2025年4月の調査では、バーチャルインフルエンサーを起用する予定がないブランドの96%が、消費者の信頼問題を理由に挙げました。AIが生成したアバターに商品を語らせることには、依然として強いブレーキがかかっています。
一方で、AIを使っている25%の内訳を見ると用途は明確です。75%がデータ分析、63%がコンテンツ制作、56%がインフルエンサーへのアプローチにAIを使っています。スキンケアブランドのBeekman 1802はAI分析企業Bezelと組み、CRMとShopifyのデータを大規模言語モデルに読み込ませて顧客ペルソナを抽出し、キャンペーン戦略や商品メッセージの指針にしています。またインフルエンサー代理店のLaterは、キャンペーン概要と過去のエンゲージメントデータを突き合わせて起用すべきクリエイターをAIで発掘しています。
日本のEC事業者にとっての論点:「表に出るAI」と「裏で働くAI」を分ける
この調査から日本のEC事業者が読み取るべきは、AI活用の成否が「消費者の目に触れるかどうか」で分かれているという構造です。データ分析・クリエイター選定・DM仕分けのような裏方業務ではAIが積極的に使われ、成果も出ています。クリエイター向けアプリのPOP.STOREは、SNSアカウントに接続してDMを自動仕分けし、ブランド案件の規模や報酬条件を判定するエージェント型の仕組みを提供し始めました。クリエイターの「DMの80%が未返信」という課題への対応です。
対照的に、消費者が直接目にするインフルエンサー本人やテレビ画面のクリエイティブは、AI化への抵抗が最も強い領域です。米国ではAmazonがPrime Video向けにAIクリエイティブ制作ツールを提供し、RokuがAds Manager経由で中小DTCブランドのCM制作をAIで支援するなど供給側の整備は進んでいますが、Roku側も「粗悪なAIコンテンツをCTVには持ち込ませていない」と品質管理を強調しています。
日本でも、InstagramやTikTokでのインフルエンサー起用はEC集客の主要チャネルになっています。今回の調査が示す使い分けをそのまま適用するなら、起用候補の洗い出し、過去投稿のエンゲージメント分析、ギフティング先の管理、投稿レポートの集計といった裏方業務はChatGPTやClaudeで自動化し、投稿クリエイティブと本人の語りには人の手を残す、という線引きが現実的です。
今後の展望・初動アクション
第一に、インフルエンサー選定のデータ分析から着手することです。フォロワー数だけでなく、過去90日のエンゲージメント率や視聴者属性をスプレッドシートにまとめてAIに読み込ませれば、自社商品との相性評価は今日から自動化できます。
第二に、DM・メールでの案件連絡やギフティング管理など、返信が滞りがちな事務連絡のドラフト作成をAIに任せることです。米国のクリエイターの80%がすでにワークフローのどこかでAIを使っているというWondercraftの調査もあり、事業者側だけが手作業を続ける理由は薄れています。
第三に、AI生成の人物やアバターを前面に出す施策は慎重に判断することです。96%という数字が示す通り、信頼を毀損したときの損失は獲得効率の改善を上回ります。景品表示法上のPR表記やステルスマーケティング規制への配慮も含め、表に出る部分の品質管理は人が握るべき局面が続きます。
まとめ
AI活用はSNS・リテールメディアの裏方業務で先行し、インフルエンサー本人やCTVクリエイティブなど消費者の目に触れる領域では25%・18%と慎重さが残りました。日本のEC事業者は、分析・選定・事務をAIで固め、信頼に関わる表現は人が守るという二層構えで臨むのが妥当です。
参考文献
- Modern Retail「Modern Retail+ Research: Marketers hesitate to adopt AI for influencer and CTV marketing」
- World Federation of Advertisers「Major brands wary of using AI influencers」
- Digiday「Marketers embrace AI for social and retail media, but show skepticism in AI ad buying」
- Wondercraft「AI Content Creation Report 2025」
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
https://uruchikara.jp/contact/
引用元: Modern Retail
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。