日本のEC市場は年々拡大を続け、2023年には物販系分野だけで13.8兆円を超える規模に成長しています。しかし、その成長の裏で、EC事業者は日々の業務効率化という大きな課題に直面しています。商品の価格調査、競合分析、在庫管理、顧客対応など、繰り返し行う定型業務に多くの時間を費やしているのが現状です。そんな中、AI技術を搭載した新しいブラウザが、EC事業者の働き方を根本から変える可能性を秘めています。
Perplexityの新AIブラウザ「Comet」がEC業務にもたらす変革
最近、AI検索エンジンとして知られるPerplexityが、完全にAI機能を統合した新しいブラウザ「Comet」をリリースしました。このブラウザは、従来のGoogle ChromeやFirefoxのような一般的なブラウザとは一線を画し、AIアシスタント機能を中核に据えた設計となっています。Chrome基盤で開発されているため、既存のChrome環境からの移行も容易で、ブックマークなどの設定もそのまま引き継ぐことができます。
最大の特徴は、単なる検索結果の表示にとどまらず、ユーザーの代わりに実際の作業を実行できるAIアシスタント機能です。例えば、「500gのLavazzaコーヒー豆を最安値で探してカートに入れて」という指示を出すだけで、AIが自動的に複数のECサイトを巡回し、価格比較を行い、最安値の商品をカートに追加してくれます。さらに重要なのは、購入の最終確認は必ず人間が行う設計になっており、誤購入のリスクを防ぐ安全性も確保されています。
EC事業者にとって特に価値があるのは、この技術を自社の業務に応用できる点です。競合他社の価格調査は、EC運営において欠かせない業務の一つですが、複数のサイトを手動で巡回し、価格を記録し、比較表を作成する作業は膨大な時間を要します。Cometのようなツールを活用すれば、「競合5社の主要商品100点の価格を調査して一覧表にまとめて」といった指示だけで、AIが自動的にデータ収集と整理を行ってくれます。
また、商品の仕入れ業務においても大きな効率化が期待できます。複数の卸売サイトやB2Bプラットフォームでの価格比較、在庫確認、発注書の作成といった一連の作業を、AIアシスタントに委ねることが可能になります。実際の記事では、レストランの予約という例が紹介されていますが、この仕組みは複数の条件(価格、納期、最小発注数量など)を満たす仕入れ先を自動的に探し出し、発注準備まで行うEC業務にそのまま応用できます。
日本のEC事業者が今すぐ取り組むべきAI活用の準備
このようなAI搭載ブラウザの登場は、EC業界における競争力の源泉が大きく変わることを意味しています。従来は人海戦術で対応していた作業を、AIに任せることで、より戦略的な業務に人的リソースを集中できるようになります。特に中小規模のEC事業者にとっては、少人数でも大企業と同等の情報収集・分析能力を持てる可能性があります。
ただし、日本のEC市場特有の課題もあります。日本語での検索精度、楽天市場やYahoo!ショッピングなど日本独自のプラットフォームへの対応、銀行振込や代引きといった日本特有の決済方法への対応など、ローカライズが必要な部分も多く存在します。しかし、記事で紹介されているように、GoogleもOpenAIも同様のAIブラウザ開発に取り組んでおり、これらの課題も近い将来解決される可能性が高いでしょう。
EC事業者は今から、自社の業務プロセスを見直し、どの部分をAIに任せられるかを検討しておく必要があります。価格調査、在庫管理、顧客問い合わせ対応、商品説明文の作成など、定型化できる業務を洗い出し、AIツールを活用する準備を進めることが、今後の競争力維持には不可欠です。AIブラウザの時代は、もはや「来るかもしれない未来」ではなく、「すでに始まっている現実」なのです。
引用: tomsguide.
