Googleの「Gems」がWorkspaceアプリで直接利用可能に：EC事業者の業務効率化を加速

日本のEC業界にとって、業務効率化とパーソナライゼーションの両立は永遠の課題です。商品管理、顧客対応、マーケティング施策など、多岐にわたる業務をこなしながら、競合他社との差別化を図る必要があります。

そんな中、2025年7月3日にGoogleが発表した新機能は、EC事業者の働き方を大きく変える可能性を秘めています。本記事では、AI活用の新たな扉を開く「Gems」のWorkspace統合について、その詳細と活用方法をご紹介します。

Gemsとは？カスタマイズ可能なAIアシスタント

Gemsは、特定のタスクに特化したGemini AIアシスタントのカスタマイズ版です。これまでGeminiアプリでしか使えなかったこの機能が、ついにGoogle Docs、Sheets、Gmail、Slides、Driveのサイドパネルから直接アクセスできるようになりました。

Gemsの特徴は、あなたの業務やニーズに合わせてAIを「専門家」として育てられることです。例えば：

Googleは「Gemsを使うことで、反復的なプロンプト入力を最小限に抑え、ニーズに合わせてGeminiの力をより効率的に活用できる」と説明しています。

ターゲットオーディエンスの情報を事前に読み込ませたコピーライティングGemを使えば、SNS投稿やブログ記事、商品説明文を効率的に作成できます。ブランドトーンを維持しながら、一貫性のあるコンテンツを量産することが可能です。

特定の企業、見込み客、業界の情報を基にしたGemを作成することで、より説得力のある営業資料やピッチ資料を作成できます。過去の成功事例や業界特有の課題を学習させることで、的確な提案が可能になります。

自分の職務に合わせた「アシスタントGem」を作成し、会議の要約や社内向けコンテンツの作成を効率化できます。定期的なレポート作成や、複雑な情報の整理にも活用できるでしょう。

CEOや経営陣の視点でコンテンツをレビューするGemを作成し、より説得力のあるメッセージを作成できます。異なる立場からのフィードバックを即座に得られるため、多角的な検証が可能です。

Workspace アプリのサイドパネルから、以下の方法でGemsにアクセスできます：

既存のGemsを使用：Googleが提供する事前作成されたGems（テキスト編集、コード作成、セールスピッチアイデア生成など）から選択
カスタムGemsを作成：gemini.google.com/gems/create にアクセスするか、サイドパネルの「Create a new Gem」をクリック

重要なのは、@メンションやファイル・フォルダへのアクセスなど、Workspaceの機能がGemsでも完全にサポートされている点です。ただし、カスタムGemsの作成自体はWorkspaceアプリ内では行えず、専用のWebサイトで行う必要があります。

この機能は、WorkspaceアプリのサイドパネルでGeminiにアクセスできるすべてのGoogle Workspaceユーザーが利用可能です。2025年7月2日から展開が開始されていますが、すべてのユーザーに行き渡るまでには15日以上かかる可能性があるとのことです。

この新機能を日本のEC事業者がどのように活用すべきか、具体的な戦略をご提案します。

まずは日々の繰り返し業務である商品登録から始めましょう。商品カテゴリーごとにGemを作成し、SEOを意識した商品タイトルや説明文を自動生成できるようにします。これにより、新商品の市場投入スピードを大幅に向上させることができます。

よくある問い合わせパターンと模範回答を学習させたGemを作成し、Gmailでの顧客対応を効率化します。配送状況の確認、返品・交換の手続き、商品の使い方など、EC特有の問い合わせに対して、迅速かつ一貫性のある対応が可能になります。

Sheetsに蓄積された売上データ、在庫データ、顧客データから、経営判断に必要な洞察を自動的に抽出するGemを作成します。月次レポートの作成時間を削減し、より戦略的な業務に時間を割けるようになります。

楽天、Amazon、Yahoo!ショッピング、自社ECなど、各プラットフォームに最適化されたコンテンツを作成するGemを用意します。プラットフォームごとの特性を学習させることで、それぞれに適した商品説明やキャンペーン告知を効率的に作成できます。

作成したGemsをチーム全体で共有し、ベストプラクティスを組織の資産として蓄積します。新人教育の効率化や、属人化の解消にも大きく貢献するでしょう。

EC事業の成功には、効率化と顧客体験の向上の両立が不可欠です。Gemsは、この難しい課題に対する強力なソリューションとなる可能性を秘めています。まずは一つ、最も時間がかかっている業務から始めてみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、大きな変革への第一歩となるはずです。