Googleが2026年6月、検索関連サービスのプライバシー設定を静かに変更し、ユーザーがアップロードした画像・ファイル・音声・動画までAIモデルの学習に使えるようにしました。しかもこの設定は既定でオンになっており、多くの人が気づかないまま「オプトイン」させられています。対象にはGoogleショッピングや翻訳、レンズが含まれ、日本のEC事業者の日常業務にも直結する話です。何が変わり、どう設定を見直すべきかを整理します。
何が変わったのか:メディアまで学習対象に
今回の変更を最初に報じたTechCrunchによると、Googleは6月に顧客向けメールで検索サービスのプライバシー設定を更新し、「画像、ファイル、音声・動画の録音」を含むメディアを保存してAIモデルの改善に使う仕組みを導入しました。表向きは保存履歴やおすすめの管理をユーザーに委ねるという体裁ですが、実際には拡張されたAI学習に既定で組み込む内容になっています。
新たに追加されたのは「Search Services History(検索サービス履歴)」と「Personalized Recommendations(パーソナライズされたおすすめ)」という2つの設定です。適用範囲は検索本体にとどまらず、レンズ、マップ、ショッピング、フライト、ホテル、翻訳、ニュースといった検索関連サービス全般に及びます。たとえばGoogleレンズで写真を撮って視覚的に検索すると、その画像が学習用に保存され得ます。音声入力の「Search Live」や音声検索、翻訳の発話練習で吹き込んだ音声も同様です。
Googleは顧客向けメールで、保存したメディアについて「AIモデルや安全対策を含むGoogleのサービスと技術の開発・改善に使われる」と明言しています。従来ウェブ上から収集していたデータに加え、ユーザーが自ら作成・アップロードするデータまで取り込む動きは、MetaがAIグラスの記録や画像を学習に使う流れと軌を一にしており、AI各社に共通する潮流だとTechCrunchは指摘しています。
日本のEC事業者にとっての論点
この変更は、単なる消費者向けプライバシーの話にとどまりません。対象に名指しされたショッピング、レンズ、翻訳は、いずれもEC事業者が現場で日常的に使うツールだからです。
第一に、商品リサーチや競合調査の痕跡が学習対象になり得ます。仕入れ候補の商品をレンズで撮影して調べたり、競合の商品画像を検索したりする作業は珍しくありません。その画像が既定で保存・学習に回る前提に変わったことは、押さえておく必要があります。
第二に、越境ECで翻訳を使う事業者への影響です。海外の取引先とのやり取りや商品説明の下訳、発話練習などで翻訳の音声機能を使う場面では、その音声が保存され得ます。取引情報や未公開の商品情報が絡む場合、社内でどこまで許容するかの線引きが要ります。
第三に、個人アカウントと業務利用の混在リスクです。従業員が個人のGoogleアカウントのまま業務の検索や画像アップロードを行うと、そのデータの扱いは業務用のGoogle Workspaceとは別のルールになります。Workspaceの有料プランでは顧客データを対象外とする方針が示されていますが(正確な適用範囲は契約内容により異なるため要確認)、個人アカウント経由の業務利用はこの保護の外側です。
初動アクション:設定を確認する
まず、自分と社内のアカウントで新設定の状態を確認します。TechCrunchによると、「Search Services History」のページで「Save Media(メディアを保存)」のチェックを、履歴本体とは別に外すことができます。両方外すことも可能です。あわせて、保存データを自動削除する期間を3か月・18か月・36か月から選べます。
次に、保持期間を最短の3か月に寄せることを検討します。既定のまま放置すると長期間保存される設計のため、業務で機密性の高い検索をする事業者ほど短縮の意味は大きくなります。
三つ目に、社内ルールとして業務利用はWorkspaceの業務アカウントに統一し、個人アカウントでの商品画像アップロードや音声検索を避ける運用を明文化します。従来「ウェブとアプリのアクティビティ」で履歴を管理していた事業者は、今回の更新で検索サービスのデータが別設定に切り出され、既定でオンになっている点に注意が必要です。従来の設定を絞っていても、新しい検索データ設定は別枠で有効になっている可能性があります。自分のアカウント全体の状態はGoogleのマイアクティビティから確認できます。
まとめ
Googleの今回の変更は、EC事業者が使うショッピング・レンズ・翻訳のメディアまで既定でAI学習に回す内容です。便利さと引き換えに何が共有されるのかを理解し、まずは設定の確認、保持期間の短縮、業務アカウントへの統一という3点から手をつけるのが現実的です。データガバナンスを競争力の一部と捉える姿勢が、これからのEC運営に効いてきます。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。