広告利益24%増・既存店0.2%増|Kroger決算に学ぶEC3論点

Kroger の2026年第2四半期決算は広告事業の利益が24%増、EC売上が20%増。既存店売上0.2%増の裏で利益を作る構造を、日本のEC事業者向けに広告費設計とデータ活用の3論点で解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

Kroger の広告事業の利益が、2026年第2四半期に24%増えました。

本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。米国の大手食品小売 Kroger が2026年9月11日に発表した第2四半期決算では、既存店売上(燃料除く)が前年同期比0.2%増にとどまる一方、EC売上が20%増、広告事業の利益が24%増という対照的な数字が並びました。売上が思うように伸びない環境で利益をどこから作るのか。その答えが、リテールメディアとECの2つに集約されつつあることを示す決算です。日本のEC事業者にとっても、広告費の払い方と自社データの扱い方を見直す材料になります。

既存店0.2%増の裏で、広告とECが粗利を支えた

結論として、Kroger の第2四半期は本業の店舗売上がほぼ横ばいでありながら、広告とECが利益を押し上げる構図になっていました。Modern Retailによると、広告事業である Kroger Precision Marketing(以下 KPM)の利益は前年同期比24%増で、これは2021年以来で最大の伸びです。CEO の Greg Foran は9月11日朝の投資家向け説明会で、メディアの収益化が過去1年で88ベーシスポイント(0.88ポイント)伸びたと述べています。なお88ベーシスポイントがどの指標に対する比率なのかは説明会で明示されていないため、この点は要確認とします。

Kroger が同日に公表した第2四半期決算資料(SEC提出の Form 8-K 添付資料)を読むと、数字の対比はより鮮明です。全社売上は346億2,100万ドルで前年同期の339億4,000万ドルから増えたものの、燃料を除く既存店売上は0.2%増にとどまり、前年同期の3.4%増から大きく減速しました。営業利益は9億7,100万ドル、希薄化後1株利益は1.05ドルで、調整後1株利益は1.09ドルと5%増です。粗利率は22.4%で前年の22.5%からわずかに低下していますが、賃借料・減価償却・燃料を除いたFIFO粗利率は13ベーシスポイント改善しており、資料はその主因としてECの収益性改善とメディアを挙げています。調整後EC売上は20%増で、Kroger は2四半期連続で黒字のEC成長だったとしています。通期の既存店売上見通しは1.0〜2.0%増から0.2〜0.8%増へ引き下げられた一方、FIFO営業利益と1株利益の見通しは据え置かれました。

Foran は説明会の冒頭数文でECとリテールメディアに触れ、従来の商品部門の話よりも先に持ち出しました。小売企業の決算会話の中心に広告利益が来るという事実そのものが、この領域の位置づけの変化を示しています。Foran は広告在庫が増えた理由について「商品部門とメディア部門の連携が強まったことで広告在庫が広がり、最適化によってブランドパートナー向けの視認性とコンバージョンが改善しました」と説明しています。

日本のEC事業者が押さえるべき3つの論点

論点の第一は、モール側には広告在庫を増やす構造的な動機があるという前提で広告費を設計する必要がある、ということです。Kroger は商品部門とメディア部門を連携させて在庫を拡張したと明言しています。楽天市場のRPP広告やAmazonのスポンサープロダクト広告でも、掲載面と入札競争は増える方向に動きやすく、同じ順位を維持するだけで単価が上がっていきます。売上比で広告費予算を決めている店舗は、粗利額に対する広告費の比率で上限を持ち直すほうが、単価上昇局面では耐えやすくなります。この構造についてはリテールメディア11社の差別化競争でも整理しています。

第二は、AIアシスタント経由の購買にも広告枠が載り始めたことです。Kroger はこの夏、傘下のほとんどの食品スーパーのサイトとアプリのAIアシスタントに広告機能を組み込みました。買い物客は献立の計画やレシピ探し、予算や食事制限に合わせたカート作成にアシスタントを使えます。Walmart や OpenAI のアシスタントは公開時点で広告を入れていませんでしたが、その後それぞれ実装を進めています。詳細はKroger のAIアシスタントが初日から広告を載せた件で扱いました。日本の楽天市場やAmazonでAIアシスタント内の広告枠がいつ実装されるかは公表されていないため要確認ですが、AI経由の流入が広告在庫になるという方向自体は共通です。

Kroger Precision MarketingがTikTokのセルフサービス広告との連携を発表した告知画像

第三は、購買データを社外の広告プラットフォームで使わせる動きです。KPM は2026年3月に Google と連携し、購買データをもとに YouTube や YouTube TV 向けのキャンペーンを Display & Video 360 上で組めるようにしました。さらに2026年6月19日にはTikTokとの連携を発表し、広告主が TikTok のセルフサービス広告画面から Kroger の買い物客に到達できるようにしています。KPM の分析では、ソーシャルコンテンツへの接触があると回答した Kroger 利用世帯の店頭バスケット金額は平均の2倍でした。自社ECを持つ事業者にとっては、購買データを外部の広告面で使えるかたちに整理できれば、メーカーからの協賛費や共同広告費という第3の収益源が視野に入ります。

初動として何をするか

まず、広告費の管理指標を売上比から粗利額比に切り替えることを検討してください。Kroger のように既存店売上が0.2%増の環境では、売上比の予算枠は実質的に縮みます。粗利額に対する上限を決め、商品単位のROASと粗利率を掛け合わせて赤字出稿を止めるほうが現実的です。

次に、AI経由の流入を計測できる状態を作ることです。AIアシスタント経由の訪問はリファラから判別しづらく、既存の流入分析では既存チャネルに混ざって見えます。自社ECであれば、UTMパラメータの設計と直接流入の内訳確認から始められます。

三つめは、自社の購買データの棚卸しです。会員IDに紐づく購買履歴のうち、メーカーや卸に開示できる粒度(カテゴリ別の新規購入者数、リピート率、併売など)を先に決めておくと、協賛の提案が具体的になります。リテールメディアの市場規模と構造も判断材料になります。

四つめは、小売がメディアを持つ流れを踏まえ、自社サイト内の掲載枠を「広告在庫」として棚卸しすることです。トップのバナー、カテゴリページの推奨枠、メールの差し込み枠は、在庫として数えれば売れる枠になります。ただし楽天市場の店舗ページや楽天R-Mailから楽天市場外へ誘導する設計は規約に反するため、モール内で完結する枠に限定して考える必要があります。

まとめ

Kroger の第2四半期は、既存店売上0.2%増という厳しい数字の裏で、広告利益24%増とEC売上20%増が粗利を支えた四半期でした。日本のEC事業者が取るべきスタンスは2つです。出稿側としては広告単価の上昇を前提に粗利ベースで上限を引き直すこと、そして自社ECの購買データを他社に価値として提示できる形に整えることです。10月20日に予定されている Kroger の投資家向け説明会で、この構造がさらに具体化するかを見ておく価値があります。

参考文献

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https://uruchikara.jp/contact/

引用元: Modern Retail


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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