二重価格表示で米大手2社が集団提訴|楽天出店者が今すぐ見直す3点

ナイキとルルレモンが二重価格表示で提訴されました。争点は参考価格の実売実績です。景表法の8週間ルールと楽天の実績要件を整理し、楽天出店者が今すぐ見直すべき3点を解説します。

投稿日: カテゴリー AIニュース

ナイキとルルレモンが2026年7月、実態のない参考価格による見せかけの割引を理由に米国で提訴されました。

二重価格表示をめぐる集団訴訟が、7月に入って米国で立て続けに2件起きました。狙われたのは取り消し線の価格、つまり「元値」の実売実績です。日本でも景品表示法が同じ論点を規制しており、楽天市場やAmazonに出店している事業者にとって他人事ではありません。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が、二重価格表示の争点と国内ルールの違いを整理して解説します。

7月に2件、争点はいずれも参考価格の実売実績

今回の2件は、いずれもカリフォルニア州の消費者保護法を根拠にした集団訴訟です。争点は「取り消し線で示した元値が、本当にその価格で売られていたか」の一点に集約されます。

ルルレモンについては、Courthouse Newsが2026年7月20日に報じています。原告のアネット・コーディは、同社が架空の通常価格と、それに対応する見せかけの割引を使っていると主張し、ロサンゼルス郡上位裁判所に提訴しました。原告が4月に購入したのは「Wunder Train high-rise」のタイツで、表示価格59ドルに対して98ドルの取り消し線が付き、39ドル引きに見える状態だったといいます。訴状では、この商品は2025年10月8日以降98ドルでは売られていなかったと指摘されています。原告は米連邦取引委員会が示す参考価格のガイダンスを引用し、差止命令、返金、損害賠償、懲罰的賠償を求めています。ルルレモンの広報担当者はコメント要請に応じていないと報じられています。

ナイキについては、ClassAction.orgが7月24日に報じました。Pearson v. Nike, Inc.(事件番号 3:26-cv-04167)は7月21日に提起された29ページの虚偽広告訴訟で、ナイキが自社サイトとアプリ上で、捏造された取り消し線価格とセール価格、そして割引率の表示を組み合わせていると主張しています。原告側代理人はインターネット・アーカイブのWayback Machineを使って過去のページを検証し、黒のAir Max 2017が2025年9月8日から2026年3月14日までの約6か月間、参考価格190ドルのまま継続してセール表示されていたと指摘しました。訴状では、この商品が最長14か月にわたりセール状態だった可能性にも触れています。

法的な線引きは明快です。「カリフォルニア州で『セール中』の商品は、広告された『旧価格』でセール開始の90日以内に、公然かつ実際に販売されていなければならない」と訴状は述べています(ClassAction.org)。対象となるのは2022年7月21日以降にナイキのサイトやアプリで割引購入したカリフォルニア州の消費者です。

この種の訴訟は珍しくありません。Courthouse Newsによれば、過去10年でTJ Maxx、Marshalls、Macy’s、Bloomingdale’s、J.Crewが同種の提訴を受けており、2025年にはクロックスも連邦集団訴訟に直面しました。ルルレモン訴訟の原告代理人は、そのクロックス訴訟と同じ法律事務所です。長期セールの常態化が、そのまま訴訟リスクになる構図が定着しつつあります。

日本では「8週間ルール」と楽天独自の実売実績要件が重なる

結論から言えば、日本でも同じやり方は景品表示法の有利誤認表示にあたる可能性があります。判断基準は米国と似ていますが、日数の刻み方が違うため、そのまま横流用はできません。

消費者庁の不当な価格表示についての景品表示法上の考え方では、過去の販売価格を比較対照価格として使う場合、それが「最近相当期間にわたって販売されていた価格」である必要があるとされています。目安は、セール開始時点からさかのぼる8週間のうち過半の期間で実際に販売していたこと。加えて、その価格での販売が通算2週間未満だった場合や、最後にその価格で販売した日から2週間以上経過している場合は、比較対照価格として使えないと整理されています。米国側の争点が90日であるのに対し、日本側は8週間、すなわち56日という物差しになる点が実務上の違いです。

楽天市場に出店している場合は、さらに一段厳しい条件が乗ります。楽天市場の「当店通常価格」を比較対照価格として表示するには、直近2週間以内にその価格での販売実績があり、かつ過去8週間のうち通算4週間以上その価格で販売していたこと(販売期間が8週間に満たない場合は、その期間の過半かつ通算2週間以上)が求められます。しかもこの販売実績は楽天市場内での実績で判定され、自社サイトや実店舗での販売は算入されないとされています(詳細な運用は楽天のガイドライン原文で要確認)。メーカー希望小売価格を使う場合は、商品ページ内に画像やPDFで客観的な根拠を提示する運用が必要です。セール設計そのものの考え方は、楽天スーパーSALEを投資として判断する視点も合わせてご覧ください。

違反した場合の金銭的なリスクも小さくありません。景品表示法では、不当表示に該当すると措置命令の対象になり、加えて課徴金の対象となった場合はその額が対象商品・役務の売上額の3パーセントとされています。年商1億円の主力商品で長期セールを打ち続けていれば、それだけで無視できない金額になります。

今すぐ見直したい3点

第一に、セールの連続日数を実際に数えてください。ナイキ訴訟の争点は6か月から最長14か月という異常な連続セールでした。日本の基準に照らすなら、比較対照価格を維持するには通常価格に戻す期間を計画的に挟む必要があります。カレンダー上で「割引表示が続いている日数」を可視化し、8週間のうち過半を通常価格で販売できているかを月次で点検する運用に切り替えるのが現実的です。

第二に、比較対照価格の根拠を証跡として残してください。今回のナイキ訴訟では、原告側が第三者のアーカイブサービスから過去の表示価格を復元しています。自社が「売っていた」と主張するだけでは足りず、RMSの価格改定履歴、商品ページのスクリーンショット、メーカー希望小売価格の証明書類などを日付付きで保管しておく必要があります。外部から検証できてしまう時代である以上、証跡の有無が防御力を決めます。

第三に、割引率の自動計算やタイムセールのバナー表示など、システムが自動生成している表示を洗い出してください。人が意図していなくても、参考価格を固定したまま割引率だけ更新し続ける設定になっていると、結果として実態のない二重価格表示が量産されます。価格と粗利の設計から見直す場合は、EC向けの価格・粗利シミュレーターのような仕組みで、値引き幅の妥当性を数値で押さえておくと判断がぶれません。生成AIに商品ページのHTMLと直近の価格改定履歴を読ませて、比較対照価格の要件を満たしていない商品を抽出させる使い方も有効です。

まとめ

ナイキとルルレモンの2件は、長期セールの常態化が法的リスクに直結することを示しました。日本でも、過去販売価格を使った二重価格表示には8週間のうち過半という目安があり、楽天市場ではモール内の実績で判定されるという追加条件が乗ります。まずは自社の「割引中」表示が何日続いているかを数え、根拠となる価格の証跡を揃えるところから始めてください。

参考文献

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引用元: Courthouse News Service


【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)


投稿者: 齋藤竹紘

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。

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