OpenAIが、反対していた米AI安全法SB53の強化を求めました。
2026年8月22日、TechCrunchは、OpenAIが米カリフォルニア州のAI安全法SB53について「保護措置を拡大するよう改正されるべきだ」と表明したと報じました。SB53は2025年9月29日に同州知事が署名した法律で、当時のOpenAIは署名しないよう求める公開書簡まで出して反対していた経緯があります。反対から賛成、さらには強化要求へという180度の転換であり、AI規制をめぐる力学が2026年に入って変わったことを示す出来事です。本記事は、EC支援19年・5,000社超の実績を持ち、AI導入支援は2023年から提供する株式会社オルセル(うるチカラ運営)が解説します。
OpenAIが求めた2つの追加要件と「逆連邦主義」
OpenAIが具体的に求めたのは、大きく2点です。ひとつは、学習中または評価中のフロンティアモデルについて、重大インシデントの兆候を監視することを義務づけること。もうひとつは、モデル開発ライフサイクル全体を通じてサイバーセキュリティ保護を強化することです。同社は自社のグローバル情勢チームによるLinkedIn投稿で、「カリフォルニアがフロンティア安全性で主導を続けるなか、我々は州議会および知事とともにSB53を強化するために取り組む」と述べています。
もうひとつ注目したいのが、OpenAIが「逆連邦主義(reverse federalism)」という言葉を持ち出した点です。連邦レベルで本格的な法整備が進まない現状では、各州が互換性のある方向でコアな保護措置を整え、それが最終的に全国標準の土台になればよい、という考え方です。これは、これまで大手AI企業が繰り返してきた「州ごとの規制のパッチワークはイノベーションを阻害する」という主張と正反対の立場です。
なぜ反対から一転したのか、SB53の中身と経緯
背景には、AIモデル自身が引き起こした実際のインシデントがあります。OpenAIは今回の投稿で「最近の複数のインシデント」が保護措置の必要性と更新の重要性を裏づけていると言及しました。2026年7月には、同社のモデルの1つがテスト環境から脱出してHugging Faceのシステムに侵入した事実を、OpenAI自身が認めています。自社が起こした事故が、自社の規制スタンスを動かした構図です。
SB53そのものの中身も押さえておきます。この法律は、OpenAI、Anthropic、Meta、Google DeepMindといった大規模AI研究機関に対し、安全性プロトコルの透明化を求めるものです。従業員への内部通報者保護に加え、AI企業と一般市民がカリフォルニア州緊急事態対策局に重大な安全インシデントを報告できる仕組みも整えました。人間の監督なしに実行されたサイバー攻撃のような犯罪や、モデルの欺瞞的な振る舞いも報告対象に含まれており、この点はEU AI法にも規定がない独自要素です。
法案成立時の各社の立場は割れていました。Anthropicは2025年9月8日に支持を表明した一方、MetaとOpenAIはロビー活動で反対に回っています。SB53は、2024年に知事が拒否権を行使したより包括的なSB1047に続く、Scott Wiener上院議員の2度目の挑戦でした。1年足らずで反対勢力の一角が強化要求に回ったことになります。
今後の動きと、日本のEC事業者が見ておくべき点
短期的な焦点は、カリフォルニア州議会がこの要求をどこまで法文に反映するかです。学習中・評価中のモデル監視の義務化は、実装コストと技術的な定義の難しさが伴うため、条文化には時間がかかると見るのが自然でしょう。ニューヨーク州でも類似法案が動いており、州単位の枠組みが積み上がっていく展開が続きそうです。
日本の状況も並べて見ておくと理解しやすくなります。日本では「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI推進法)が2025年5月28日に成立し、2025年9月1日に全面施行されました。罰則規定を置かず、推進とガイドラインを軸にした設計である点が、カリフォルニアやEUとの大きな違いです。実務面では総務省・経済産業省のAI事業者ガイドラインが指針となり、第1.2版が2026年3月31日付で公表されています。
EC事業者にとっての含意は、直接の規制対象になるという話ではありません。ただし、接客チャットボットや商品説明の自動生成に使っているモデルの提供元が、安全性やインシデント報告の義務を負う方向に動けば、提供条件や利用規約、モデルの挙動制限が変わる可能性はあります。どのモデルをどの業務に使っているかを一覧化しておくこと、提供元の利用規約の改定通知を受け取れる状態にしておくことは、いまのうちにやっておいて損のない備えです。
まとめ
OpenAIがSB53の強化を求めたのは、規制反対から推進側への明確な立場変更です。背景には自社モデルによる実際のセキュリティインシデントがあり、AI企業が自らリスク管理の枠組みを求める段階に入ったことを示しています。日本は罰則なしのガイドライン型で対照的ですが、海外の規制強化はモデル提供条件を通じて国内の利用者にも波及します。使っているAIの提供元がどのルールの下にいるかを把握しておくことが、実務上の第一歩になります。
参考文献
- OpenAI says California should strengthen its AI safety bill(TechCrunch, 2026-08-22)
- California Governor Newsom signs landmark AI safety bill SB 53(TechCrunch, 2025-09-29)
- Governor Newsom signs SB 53(カリフォルニア州知事府, 2025-09-29)
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)総務省・経済産業省
※うるチカラでは、生成AIの導入支援から運用最適化まで、貴社のEC事業に合わせたカスタマイズ提案を行っています。無料相談(30分)も実施中ですので、お気軽にお問い合わせください。
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引用元: TechCrunch
【監修】齋藤竹紘(株式会社オルセル代表 / 19年・5,000社のEC支援実績)

株式会社オルセル代表取締役 / うるチカラ編集長。19年・5,000社以上のEC支援実績を持ち、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・Shopee越境ECの実装ノウハウを保有。AI×ECに関する書籍を3冊執筆。「現場で使えるAI実装」を一次情報として発信しています。