Perplexity「Comet」が完全無料化!日本のEC事業者が知るべきAIブラウザ時代の対応策

投稿日: カテゴリー Perplexity

2025年10月2日、AI検索スタートアップPerplexityが、AIを搭載したウェブブラウザ「Comet」を世界中のすべてのユーザーに対して完全無料で公開しました。これまで月額200ドルのMaxプラン限定だったCometが無料化されたことで、数百万人規模のウェイトリスト登録者がアクセスできるようになりました。

Cometは従来のブラウザとは異なり、サイドカー型のAIアシスタントが常駐し、ウェブページの内容を要約したり、質問に答えたりする機能を持ちます。また有料プランユーザー向けには、複数のタスクをバックグラウンドで処理する「Background Assistant」も発表されています。

この変化は日本のEC事業者にとって何を意味するのでしょうか。楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング、自社ECサイトで販売する事業者は、AIがウェブを閲覧する時代に対応した準備を始める必要があります。本記事では、Cometの機能を分析し、EC事業者が検討すべき対応策を解説します。

Perplexity Cometとは:従来のブラウザとの違い

Cometは、ChromiumベースのウェブブラウザでChrome拡張機能との互換性を持ち、ブックマークや設定の移行が簡単にできます。従来のブラウザと異なるのは、Perplexityの検索エンジンがデフォルトで搭載されている点です。

Perplexityの検索を使うと、従来のリンク一覧ではなく、複数の情報源から統合された回答が引用付きで表示されます。この検索方式はPerplexityのウェブサイトでも利用できますが、Cometではブラウザに統合されています。

主要な機能が「Comet Assistant」です。これはブラウザのサイドバーに表示され、閲覧中のウェブページの内容を要約したり、質問に答えたりします。TechCrunchの報道によれば、Comet Assistantはウェブページのコンテンツ管理やナビゲーション支援も行います。

2025年10月に発表された「Background Assistant」は、月額200ドルのMaxプランユーザー向けの機能です。Perplexityの広報担当者によれば、この機能は「複数のアシスタントがチームとして働く」ように設計されており、メール送信、チケット購入、フライト検索などの複数タスクをバックグラウンドで処理します。ユーザーはダッシュボードで進捗を確認でき、必要に応じて介入できます。

現在、無料ユーザーはサイドカーアシスタント機能のみ利用可能です。

Cometの無料化が示すAIブラウザ市場の動向

Perplexityが7月に月額200ドルの有料会員限定で開始したCometを、わずか3ヶ月後に完全無料化した背景には、AIブラウザ市場での競争激化があります。

TechCrunchの報道によれば、Cometは「Google Chromeや、The Browser CompanyのAI搭載ブラウザDiaなどの新興ブラウザと競争するため」無料化を決断しました。また、CNBCの記事では「OpenAIが待望するAI搭載ブラウザのローンチを前に」無料化したと報じています。

実際、2025年にはAIブラウザをめぐる動きが活発化しています。Googleは9月にChrome上でGemini AIを統合し、Anthropicは8月にブラウザベースのAIエージェントを発表しました。OpenAIは1月に「Operator」というブラウザ操作AIエージェントを発表しています。

CNBCによれば、Perplexityは8月にGoogleのChromeブラウザに対して345億ドルの買収提案を行ったと報じられていますが、これは実現していません。

Cometのウェイトリストには「数百万人」が登録していたとPerplexityは発表しています。無料化により、Perplexityは一気にユーザーベースを拡大し、ブラウザ市場でのシェア獲得を目指しています。

これらの動きから、主要なテック企業がAI搭載ブラウザの開発に注力していることが分かります。

EC事業者への影響:AIブラウザ時代に向けた準備

CometのようなAIブラウザの普及により、ECサイトの閲覧方法が変化する可能性があります。従来は人間がブラウザを操作していましたが、今後はAIアシスタントが情報収集や比較検討を行うケースが増えるかもしれません。

この変化がEC事業者に与える影響として、以下の3点が考えられます。

第一に、サイトの閲覧パターンの変化です。AIアシスタントが商品情報を抽出する場合、人間のように複数ページを閲覧するのではなく、必要な情報だけを効率的に取得する可能性があります。これは従来の広告表示機会やユーザー行動分析に影響を与える可能性があります。

第二に、情報の構造化の重要性です。AIは視覚的なデザインよりも、データの構造や正確性を重視する傾向があります。商品名、価格、在庫状況、配送オプション、スペック情報が機械可読な形式で提供されているかどうかが、今後重要になる可能性があります。

第三に、購買プロセスの短縮化です。ユーザーがAIアシスタントに「予算内で最適な商品を探して」と依頼すると、AIが複数サイトを比較し、推奨する商品を提示する可能性があります。この場合、従来のような段階的なカスタマージャーニーが短縮され、ブランド体験を提供する機会が減少するかもしれません。

ただし、これらはあくまで想定される変化であり、実際の影響は今後の技術発展とユーザーの利用状況によって決まります。

今後の見通し

AIブラウザ市場は今後も発展が続くと予想されます。Perplexityは8月に「Comet Plus」という月額5ドルのサブスクリプションサービスも発表しており、出版社との収益分配モデルを構築しています。

OpenAIやAnthropicも独自のブラウザ機能を開発しており、複数のAIプラットフォームが並存する状況になる可能性があります。EC事業者としては、特定のプラットフォームに依存せず、業界標準(Schema.orgなど)に準拠した実装を心がけることが重要です。

ただし、AIブラウザの普及速度や実際の影響は、今後の技術発展とユーザーの利用動向によって決まります。過度に焦る必要はありませんが、トレンドを注視しながら段階的に準備を進めることをお勧めします。

まとめ

Perplexity Cometの無料公開は、AIブラウザが一般ユーザーにも身近になったことを示しています。EC事業者にとって、AIがウェブを閲覧する時代への準備は、今後の競争力に影響する可能性があります。

重要なのは、完璧を目指すのではなく、できることから始めることです。まずはCometをダウンロードして、自社のECサイトがどう見えるかテストしてみてください。次に、主力商品の情報を見直し、具体的なスペックを追加します。そして、構造化データの実装を検討してください。

これらの施策は、AIブラウザだけでなく、従来の検索エンジン最適化にも有効です。段階的に取り組むことで、リスクを最小限に抑えながら、新しい時代に備えることができます。

引用:perplexity


投稿者: 齋藤竹紘

齋藤 竹紘(さいとう・たけひろ) 株式会社オルセル 代表取締役 / 「うるチカラ」編集長

   
Experience|実務経験
2007年の株式会社オルセル創業から 17 年間で、EC・Web 領域の課題解決を 4,500 社以上 に提供。立ち上げから日本トップクラスのEC事業の売上向上に携わり、 “売る力” を磨いてきた現場型コンサルタント。
Expertise|専門性
技術評論社刊『今すぐ使えるかんたん Shopify ネットショップ作成入門』(共著、2022 年)ほか、 AI × EC の実践知を解説する書籍・講演多数。gihyo.jp
Authoritativeness|権威性
自社運営メディア 「うるチカラ」で AI 活用や EC 成長戦略を発信し、業界の最前線をリード。 運営会社は EC 総合ソリューション企業株式会社オルセル
Trustworthiness|信頼性
東京都千代田区飯田橋本社。公式サイト alsel.co.jp および uruchikara.jp にて 実績・事例を公開。お問い合わせは info@alsel.co.jp まで。

お問い合わせ